歯科経営者に聴く(後編)
~第一線で活躍する院長から学ぶ~
兵庫県神戸市東灘区は阪神大震災以後、マンションが増加し、JR神戸線、阪急電鉄神戸線、阪神電鉄本線による三宮や梅田へのアクセスの良さから子育て世代の流入が顕著な地区となっている。
ママとこどものはいしゃさん神戸甲南山手院はJR神戸線の甲南山手駅から徒歩3分の場所に位置し、「患者さん」ではなく、「ゲスト」として迎えた方々の美と健康を高め、いつまでも維持し続けることを目指した歯科診療を行っている。
今月は先月に引き続き、ママとこどものはいしゃさん神戸甲南山手院の柴崎義貞院長にお話を伺った。
ママとこどものはいしゃさん 神戸甲南山手院 柴崎 義貞 院長
【プロフィール】
- 1981年兵庫県加東市 生まれ
- 2007年九州歯科大学 卒業
- 2007年大阪大学歯学部附属病院総合診療部 入局
- 2008年大阪インプラントセンター医療法人岡田歯科 勤務
- 2011年医療法人真心会ふくおか歯科 勤務
- 2014年ママとこどものはいしゃさん柴崎歯科 開設
- 2019年医療法人麗人会 ママとこどものはいしゃさん神戸甲南山手院 開設
【理念・治療スタイル】
経営理念を教えてください。
患者さんには自分の家族に対してと同じように、良いと思われる治療を提供することを意識しています。特に当院はお子様が多い歯科医院ですので、将来を見据え、お子様の歯並びに関しては特にしっかりとした治療をしていくことを心がけています。また、ともに働くスタッフも自分の仕事に自信を持ち、やりがいを感じてほしいと考えています。「グループの4つの理念」は「安心・安全・誠実な治療のご提供」「医療人として誇りを持ち、常に最先端医療を追求」「未来を担う子どもたちの健康な笑顔を創造」「仕事を通じ人間的に成長し、豊かな人生を歩む」です。
ほかの歯科医院との差別化についてお聞かせください。
「ママとこどものはいしゃさん」が歯科医院名に入っていることで対象が分かりやすいことが近隣の歯科医院との差別化の一つになっているようです。また「患者さんの居場所がある」歯科医院の雰囲気づくりを心がけています。「ここに来れば先生もスタッフも自分のことを知ってくれている、何でも聞いてくれる、話していいんだな」と思ってもらえるよう、スタッフ同士でも情報共有をしっかり行い、固くなりすぎないようにしています。歯科医院らしくないアットホームな雰囲気づくりを大事にすることで、患者さんも気兼ねなく質問などをしていただける環境になっています。
開業してから苦労されたのはどのようなことですか。
最初の歯科医院を開業したときに業者の方に協力していただいたり、内覧会や広告を打って宣伝したのですが、歯科医院飽和地域に開業したということもあり、立ち上がりは予想したよりもあまり良くありませんでした。しかしながら、めげずに続けていくことで、徐々に地域に浸透していきました。
4年前のコロナ禍の際に1カ月から2カ月ほど、患者さんを抑えながら診療を続け、売上が大きく減るということを体験したときは先が見えない不安がありましたね。それでも、その間も患者さんからの問い合わせが想像以上にあり、感染対策をしっかりしたうえで受け入れることで、患者さんもほとんど戻り、ひと安心しました。
私だけが不安に思っていたのだと気づき、すぐに立ち直れましたし、お蔭様で開業10年を迎えることができました。
患者さんからはどのような問い合わせが多いですか。
歯科医院名の通り、お母様世代からのお子様に関しての問い合わせがほとんどですが、その中でもお子様の歯並びに関しての問い合わせが一番多いです。そのほか、歯科恐怖症の方に対して、笑気鎮静法、動脈内鎮静法といった診療もしているため、「ほかの歯科医院では怖くてできなかった」「初めての治療で不安」などの問い合わせもよくあります。
どのような増患対策を取られていますか。
日々の電話対応に気をつけています。患者さんから電話をくださった折角のチャンスを逃さないよう、スタッフ皆で意識しています。また患者さんが見られるホームページのデザインなどもスタッフ皆で意見を出し合いながら、より良いものになるよう、こだわっています。
【スタッフ採用・教育】
スタッフの育成や教育はどのように行っていますか。
歯科医師は毎月のテキスト実習や模型実習など、年間を通してのカリキュラムを作っていますので、それに沿って、私がメインで指導しています。
私は1歯科医院だけを見ているのではなく、1日交代で各分院を見て周り、目の届くようにしているので、若手の歯科医師がどの分院へ配属されても同じ診療ができるように指導できています。
私がかつて勤務していた大阪インプラントセンターで指導をしてくださっていた先生が現在はフリーランスなのですが、当院の教育担当として、月に数回来ていただき、新人指導にあたってもらっています。昔の縁が今も繋がっているのはとても有り難いですし、心強いです。
歯科衛生士はフリーランスの方に月2回来てもらい、指導してもらっています。歯科衛生士の人数が多いので、新人スタッフ1人に対し、先輩スタッフ2人ほどで新人指導をしています。
スタッフが働きやすい環境づくりのために注意されていることはありますか。
過ごしやすい環境を整えようと、つい最近スタッフルームを改装しました。スタッフにはこれまで以上にゆっくりと休憩してもらえたらなと思っています。
また月1回、全歯科医院のスタッフが揃った全体ミーティングをして、聞いた聞いていないなどのいつの間に変更になったのだというような行き違いが起こらないようにしています。
また私自身の考えやそれぞれの意見をきちんと話し合うことで、スタッフの不安を取り除いていますし、お互いが理解し、協力し合うことで、チームワークをより強めることができています。
【今後の展開】
今後の経営の展開について伺わせてください。
幸いなことに、多くの患者さんに来ていただいていますので、歯科医師数を増やしたいと考えています。
チェアを増やせるスペースは確保しましたので、新しい歯科医師が来たら、新しいチェアを導入します。
やはり人員が増えれば売上も上がりますし、業績が上がればスタッフの待遇も良くできますので、頑張りたいところです。
分院展開は検討していません。
転職・開業を考えておられる先生方へアドバイスをお願いします。
「開業すれば、誰でも成功する」という時代は終わりました。それゆえ、自分の人生をこうしていきたいという人生設計をするときに開業する方が合っているのか、勤務医の方が合っているのかをよく考え、行動した方がいいですね。
開業にあたっては、私もそうしたのですが、自分の売りはこれだという得意なことを見つけて開業することをお勧めします。
多くの歯科医院がある中で、一般的なことがある程度できるというぐらいで開業すると、得意分野がある歯科医院に患者さんを取られかねず、どっちつかずや鳴かず飛ばずになってしまう可能性があります。
自信のあるものが一つあるだけでも、自分の人生やプライベートの満足度が変わります。
以前、当院に勤務していた歯科医師の中にはもともと一般歯科がメインだったのですが、当院でインビザラインや矯正歯科に携わるうちに矯正歯科を深掘りしたくなり、矯正歯科専門の歯科医院に転職した人もいます。
転職後もインビザライン症例を一緒に診たり、協力し合っています。私も色々と悩み、試行錯誤した結果、今は自分の人生を楽しく過ごせているので、今後どうすればいいのかとお悩みの方は私に相談していただければ、一緒に考えたいです。
是非アドバイスさせてください。
趣味や余暇の過ごし方をお聞かせください。
月1回か2回ほど、知り合いの歯科医師の先生方と一緒にゴルフをしています。
また体育学部出身で体力があり余っているスタッフとランニングや山登りといったアクティブな休日を過ごすこともありますね。
終業後にスタッフの皆と飲みに行ったりすることも楽しみの一つです。