歯科経営者に聴く(前編)
~第一線で活躍する院長から学ぶ~
東京都世田谷区三軒茶屋は「さんちゃ」と親しまれ、10を超える商店街がある商業地でもあり、都心へのアクセスも良好な人気のある住宅街でもある。
三茶歯科は東急田園都市線、東急世田谷線の三軒茶屋駅から徒歩2分の場所にあり、何か一つでも他院との違いを生み出す取り組みをしようと「プラスワン」を理念に掲げて、一般歯科から歯科口腔外科まで、幅広い歯科診療を行っている。
今月と来月の2回にわたり、三茶歯科の佐野徳太郎院長にお話を伺った。
三茶歯科 佐野 徳太郎 院長
【プロフィール】
- 2006年 鶴見大学歯学部 卒業
- 2007年 愛知学院大学歯学部付属病院 研修修了
- 2011年 医療法人社団歯科タナカ(現まる歯)青山通り歯科タナカ 院長
- 2013年 同法人 渋谷宮益坂歯科 院長
- 2018年 三茶歯科 開院
【開業に至るまで】
歯科医師を目指されたきっかけについて、教えてください。
父も祖父も歯科医師だったので、子どもの頃から当然のように、私も歯科医師になるのだろうと思っていました。
子供の頃に地元の知らない大人と話す時に、実家の歯科医院の名前を言うと多くの人が「あー、あそこの歯医者の子か」と認知されていることが誇らしく感じていたことを覚えています。
父は院内で自ら技工作業もよくしており、石膏を混ぜたり研磨している姿を「かっこいいな〜」と見ていました。
仕事を終えた父の独特の匂い(歯科医院の匂い)も好きでした(笑)。
受付スタッフのお姉さんからも優しくしてもらい嬉しかったことを覚えています。
私の子供達にもそういう風に感じてくれたら良いなと思います。
院長が卒業後の勤務先を選ばれたポイントを教えてください。
大学卒業後は地元の愛知県に戻りたくなり、愛知学院大学歯学部病院での研修を選びました。1年間でしたが素晴らしい同期が多くいて非常に楽しかったです。仲の良かった先生が現在では売れっ子講師として雑誌やネットなどでよく見る機会も多く、会わずとも刺激になっています。
研修修了後すぐは何も考えず、通常は4月から働くものですが、私はゴールデンウィークが終わるぐらいまで遊んでいました(笑)。それで、当時住んでいた場所の近くにある、マンツーマンで教えてくれそうな個人でされている歯科医院に決めました。その先生は「なんで何もできない自分を一切怒ったりすることなくあれ程気長に良くしてくれたのか?」と不思議に思うほど広い心で面倒を見て頂いて本当に感謝しています。自分も勤務医に対してそういう広い心で接するように気を付けようと思うようになりました。
開業しようと決断した時期、いきさつはどんなことでしょうか。
マンツーマンで基本的なことを教わった後、また違った視点で学びたいと思い、今度は逆に大型法人に勤務しました。
そこでも良き師と呼べる先生との出会いがあり、法人の理事まで任せてもらい、経営のノウハウやスタッフ教育、勉強や学術面についてもしっかりと教えていただきました。
勤務医として出来る一通り以上のことを経験させて頂き、自信もつきましたし、6年ほど経った頃に一度理事長に開業の件を相談したのですが、「今じゃない」と言われたのです(笑)。それから3年ほど分院長の後継者の育成をしながら準備期間を経て、開業に至りました。
開業の場所をどのように決められたのですか。
1年くらいかけて歯科材料ディーラーや不動産業者の方に協力してもらい各地のテナントを見て回りましたが、当時、三軒茶屋に住んでいて妻の実家も近くにあり、この先もこの近隣で生活していくだろうと決意したのと、土地勘があって一番分かりやすい環境でもあり、そんな中で妻が賃貸物件サイトで見つけたテナントが人通りも多く窓も大きくて気に入りまして、当時の勤務先の理事長先生にも現地でチェックしてもらい今の場所に決めました。
設計やデザインのこだわりをお聞かせください。
設計やデザインはお洒落な雰囲気にしたかったので、カフェやアパレルのお店を見て回り、設計の段階で設計者さんに伝えていきました。
勤務医時代にも分院の立ち上げ、設計に携わせて頂いていたのでその経験を活かせたので感謝です。床材や電灯の種類を選ぶのが楽しくて色々な所を見て回りました。これらの経験は後に自宅を建てる時にも役立ちましたね(笑)。
開業にあたって、苦労されたことはどのようなことですか。
やはりスタッフの確保、定着に一番苦労しました。
開業のタイミングで3人採用したのですが、2ヶ月後にはその3人とも退職していました。その後は原因と対策を考えて今はちょうど良い人数が定着してくれていますが、人が増えれば様々な問題も増えてその対応に追われます。
私は大きな法人に長くいたのでマンパワーが豊富な環境にいたおかげで色々なことができていましたが、マンパワーが少ないと院長が色々なことをしないといけないという環境ですから、今もまだ辛いですし、それを払拭するためにe-dentistさんに求人を出しました(笑)。