歯科経営者に聴く - 上り口歯科医院 上り口晃成 院長(後編)

歯科経営者に聴く(後編)

~第一線で活躍する院長から学ぶ~

上り口歯科医院 外観

 兵庫県伊丹市西台は阪急電鉄伊丹線の終点である伊丹駅や伊丹市交通局のバスターミナルがあることから、伊丹市内の中心となっている地区である。

 上り口歯科医院は阪急伊丹線伊丹駅から徒歩2分という立地で、日本のインプラント治療の黎明期からインプラント治療をはじめとする高度歯科医療に携わってきた歯科医院である。

 今月は先月に引き続き、上り口歯科医院の上り口晃成(あきのり)院長にお話を伺った。

上り口 晃成 院長

上り口歯科医院 上り口 晃成 院長

【プロフィール】

  • 1974年 兵庫県 生まれ
  • 1999年 大阪大学歯学部 卒業
  • 2003年 大阪歯科大学大学院 修了 歯学博士取得
  • 2003年 上り口歯科医院 勤務
  • 2004年 ドイツ臨床留学
  •              国立ベルリンフンボルト大学Charite病院顎顔面外科 客員歯科医師
  • 2006年 上り口歯科医院 副院長
  • 2011年 上り口歯科医院 院長

【学会、資格等】

  • (公社)日本補綴歯科学会 指導医
  • (公社)日本補綴歯科学会 専門医
  • (公社)日本歯科先端技術研究所 口腔インプラント認定医
  • (一社)日本口腔リハビリテーション学会 認定医
  • (一社)ICOI国際口腔インプラント学会 フェローシップ認定医
  • カムログインプラント公認インストラクター
  • 厚生労働省臨床研修指導医
  • NPO法人クラニオフェイシャルセンター 理事

  • 2010年~ 大阪歯科大学 欠損歯列補綴咬合学講座 非常勤講師
  • 2015年~ 鹿児島大学 歯学部口腔生理分野 非常勤講師
  • 2022年~ 近畿大学病院 歯科口腔外科 非常勤講師
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【理念・治療スタイル】

経営理念を教えてください。

「正しいことをきちんとする」ということでしょうか。はったりばかりを言い、色々なことを聞きかじりで言う人もいますが、それよりも正しいことをするということの方が大事だと思っています。

診療方針を教えてください。

治療方針を選択する際、「自分の身内が患者だとして、その治療方針を選べるのか」という考え方が大事です。手加減のない最善の選択肢から患者さんの希望に沿った選択肢まで、選択肢の幅を持たせることができますし、治療では医学的根拠に基づいたり、学問に基づきながら手技もできるという、その両方が大切ですね。

他の医院との差別化についてお聞かせください。

技工室の様子

設備面の話は既にしましたが、私どもは技工室の設備を整えており、歯科技工士が常勤で3人います。補綴をするうえでは歯科技工士との連携が大切ですので、そういった点も学ぶことができます。また私どもは補綴学会の研修施設になっています。開業医の施設は全国で30もないぐらいなのですが、そのうちの1つです。補綴学会における資格を取得したいと考えられる方は私どもで勉強してもらえば、あとは本人の頑張り次第で取得は可能です。このように言える歯科医院はほとんどないのではないかと自負しています。
インプラントに関しては、父が日本で最初に取り組み始めた歯科医師の一人であり、何とインプラント学会の会員番号も1番なのです。開会前からの設立メンバーの一人なので、番号は恐らくあいうえお順で決めたのでしょう(笑)。それゆえ、インプラントに関しては非常に長い伝統がありますので、科学と経験の蓄積は深いものがありますね。インプラントの宣伝は言葉にすると他院と一緒になってしまいますが、私どもは胸を張って言えるレベルです。私もカムログインプラントのセミナー講師を担当させていただいている影響で、インプラントの見学、勉強にいらっしゃる先生方は多いです。
現在、大阪歯科大学の欠損歯列補綴咬合学、近畿大学医学部の口腔外科講座、鹿児島大学歯学部の口腔生理学講座で非常勤講師も務めていますので、補綴に関する知識や経験があること、インプラントを含めた外科的なものと補綴を融合させた見方ができること、口腔生化学的な見方ができることといった3つの要素が私の強みですね。

継承以来、苦労話やピンチなどはありましたか。

苦労もピンチも色々とありましたよ。ピンチのときは自分が勉強させてもらっていると思うしかありません。私が尊敬している人は去年お亡くなりになりました稲盛和夫さん、その師匠にあたる中村天風さんです。もちろん、お二人のような存在には簡単に近づけませんが、一生懸命本気で正しいことをしていけば、うまくいかないはずはないですし、信念を持っていれば、苦労という言葉にするのは勿体ないことだと思っています。

患者さんからはどのような問い合わせが多いですか。

上り口晃成院長のお写真

私どもの患者さんの層は2パターンあります。高度治療を求めている方々と近隣の方々です。高度治療を求めている方々の中には他院で断られた方、他院での治療後にうまくいかず、困っている方もいらっしゃいますし、そういう方々が口コミでいらっしゃることもあります。近隣の方々は当院が住宅街にあるからか、老若男女問わず、いらっしゃいますね。そのため、私どもは高度先進医療から保険診療のコンポジットレジン充填まで、治療の幅が広く、症例も豊富です。いわゆる口コミビジネスをしている歯科医院もあるようですが、目の前の患者さんを満足させていないのに、宣伝にお金を使っても穴の開いたザルに水を溜めるようなものです。目の前の患者さん一人一人に真摯に取り組んで結果を出せば、次の患者さんに必ず繋がります。もちろん新規開院したばかりだと広告増患対策が必要ですが、バランスが取れている状態でおかしな口コミ宣伝などの増患対策をすると、治療のクオリティが下がってしまいますので、ドロップする患者さんをなるべく作らないことが大事です。

【スタッフ採用・教育】

スタッフの育成・教育はどのように行っていますか。

一番大切なことはスタッフのやる気を引き出すことです。一つのステップに応じて階段を昇っていってもらうということですね。先輩後輩、師匠と弟子のようなマンツーマン指導が、古典的であっても、結局は有効です。歯科医師にはもちろん、私が直接教えています。私どもには歯科技工士が在籍しており、歯科技工士と技工的なディスカッションもできるので、補綴をしていくうえでは勉強になる環境です。

スタッフが働きやすい環境づくりのために注力されていることはありますか。

月1回の土曜日に矯正歯科の診療の枠があるのですが、その日以外は今どきの歯科医院にはなかなかない土曜日、日曜日、祝日を休診日としています。そのため、そうした休診日には勉強会へ行ったり、家族や友人と有意義に過ごせるのではないかと思います。

【今後の展開】

今後の経営の展開について、お聞かせください。

歯科医療は常に変化しながら進歩していくものですし、流行などがあるため、時代に合った、最先端のより良い治療を患者さんに供給し続けられるようにアップデートしていきたいと思っています。現在、CADCAMの新しい加工機を入れて、デンチャーの削り出しをできる体制にしたいと考えています。また、歯科医師としても人間としても、より一人一人が成長できるような歯科医院にしていきたいと思っています。

転職・開業を考えておられる先生方へアドバイスをお願いします。

自分が流した汗の分だけしか、自分に身につくことはありません。折角プロとしてのライセンスをもらったからには常に勉強して、自分を磨くことがプロとしても、人間としても大事なことだと思います。

【プライベート】

院長の趣味、余暇の過ごし方をお聞かせください。

釣りや読書、健康管理のために水泳に行くこともあります。ただ平日は時間が足りず、できなかった仕事をすることの方が多いです。治療計画などは平日にはゆっくり考えることができないので、休みの日の方が捗りますね。こういうことを言ったら、求職している先生方には受けないのではと心配です(笑)。

【メッセージ】

上り口晃成院長のお写真

私は歯科を医療として捉えています。歯科をただのビジネスとしている歯科医院もあるようですが、私は単なる被せ物屋みたいなスタイルではありません。もちろん合う、合わないはあるでしょうが、飛び込んだら面白い世界ですよ。「目医者、歯医者が医者ならば、蝶々トンボも鳥のうち」という言葉のように、歯科医療というものが医療の中心から離れてしまっているところがあるのは勿体ないことです。私は医療の一つとして、歯科医療が存在するということを座標軸にして、仕事をしています。それゆえに、きちんとした歯科医療を求めて来られる患者さんがよくいらっしゃいますし、医師や弁護士などのプロフェッショナルな職業を持つ患者さんが多いです。医師と歯科医師の関係性でよく聞くのは「医師が上で、歯科医師が下」というものですが、私どもには専門分野の対等な関係で話ができる関係性があります。医師から歯科的な見解を求められる機会もありますので、医療人としてのスタイルは貴重です。そこで、私どもでは歯科医院内部も病院のようなイメージにしています。掃除をしなくても分からないような薄暗い、ホテルのロビーのようなデザインにする歯科医院も流行っているみたいですが、あまりに敷居を高くしすぎると患者さんも来にくいですし、バランスが大事です(笑)。私も先代から学んだこと、自分で考えて作ったものを次の世代に引き継ぎ、より良い歯科医療、歯科医師、医療人として繋いでいけるよう、単なる勤務医ではなく、弟子を育てていきたいと考えています。

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