歯科経営者に聴く - 医療法人 玉井会 上村裕希 理事長(後編)

歯科経営者に聴く(後編)

~第一線で活躍する理事長から学ぶ~

医療法人 玉井会 外観

神奈川県高座郡寒川町は相模国一之宮である寒川神社やパンプトラックさむかわで知られている。JR相模線の茅ヶ崎駅から寒川駅まで10分であり、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の寒川北、寒川南のインターチェンジにより、今後の発展が見込まれている町である。

玉井歯科は寒川駅から車で5分の場所である湘南寒川医療モール内に2003年に開業した。インフォームドコンセントを徹底し、予防歯科からインプラントまで幅広いニーズに応えている。

今月は先月に引き続き、玉井歯科の玉井進吾院長にお話を伺った。

玉井 進吾 理事長

医療法人 玉井会 玉井 進吾 理事長

【プロフィール】

  • 1973年 神奈川県 生まれ
  • 1997年 日本大学 卒業
  •               日本大学歯学部口腔外科第二講座 入局
  • 1998年 並行して一般開業医にて勤務
  • 2003年 医療法人 玉井会 玉井歯科 開業
  • 2006年 同所で湘南寒川医療モール 設立
  •               医療法人 玉井会 茅ヶ崎寒川インプラントセンター 設立

■新規分院(医院名未定) 2023年1月開院予定

【理念・治療スタイル】

経営理念を教えてください。

診察室の様子

スタッフ皆から「先生に一生ついていきたいです」と言ってもらえるような待遇をしていきたいです。もちろん性格の違いや合う、合わないはあるので、難しいこととは分かっていますが、今いるスタッフは皆、何か大きなことが起きないかぎり、私どもで長く働きたいと言ってくれています。以前の歯科には産休育休制度はあまりなかったのですが、私どもは早い段階から取り入れていました。女性スタッフにも優しい法人でいたいと考えています。

診療方針を教えてください。

基本的には患者さんにどう捉えてもらえるのかということが大事だと考えています。いくら自分たちが良い治療ができたと思っていても、患者さんが満足して、納得していなければ意味がありません。一番嬉しいのは患者さんからの感謝の言葉ですし、その方針を意識しています。

他院との差別化になっている点を教えてください。

診察室の様子

日曜日に診療していることと20時までの診療時間でしょうか。これは近隣地域の中では遅い方だと思います。それから本院は完全個室診療体制を取っています。かなりプライベートな空間なので、より密なコミュニケーションを取りやすいです。

開業してから苦労したことを教えてください。

やはり一番大変なのは人材ですね。個人で開業していたときは特に苦労しなかったのですが、法人化するときには歯科医師を増やし、最低人数を確保しなければいけませんでした。その後、それを維持することに苦労しています。

患者さんからはどのような問い合わせが多いですか。

本院の患者さんの年齢層は0歳から100歳とかなり幅広く、色々な問い合わせがありますね。お子さんの将来的な口腔内の管理のことや歯並びに関してなどが中心です。分院は成人の男性、女性といった就労層の方が多く、歯周病対策についての問い合わせが一番多いです。

【増患対策】

増患対策について、お聞かせください。

まずはホームページをリニューアルしようと動いていて、SNSの利用も検討しています。ただ、同じようにされている歯科医院は多いので、何か違うことをしていきたいと対策を練っているところです。

【スタッフ採用・教育】

スタッフの育成や教育をどのように行っていますか。

月に1回、全体ミーティングをしており、問題点や気になるところをチェックし合っています。歯科医師、歯科衛生士とそれぞれの職種別に必要があればミーティングを行うこともあります。本院も分院もベテランスタッフがいますので、そのスタッフを中心にチーム教育を実践しています。

スタッフが働きやすい環境づくりのために工夫されていることはありますか。

待合室の様子

人間関係が一番重要だと考えています。どんなに優秀でできる人だったとしても、スタッフ間のコミュニケーションができない人は長続きしません。以前は厳しく教育して、それに耐えられるのか、残れるのかというような時代でしたが、今は丁寧に細かく教えて、できるだけ長く働いてもらえるよう、お互いが気を遣い合う時代ですので、コミュニケーションが取れないと人間関係をうまく構築できないのではないかと感じています。
それから先ほどもお話ししましたように、女性スタッフが多いので、結婚や出産が安心してできる環境を作りたいと考えています。中には「結婚出産を機に退職するなら、あなたはもういらない」などと、退職までの期間を邪険に扱う経営者もいるみたいですが、私どもではそんなことは全くありません。結婚出産後に復帰すると決めてくれたら嬉しいですし、それを機に退職すると決めたとしても、おめでたいことには変わりませんので、素直に祝福し、それまでと対応は変えません。スタッフが自分の考えをはっきり言える環境であるためには日頃からのコミュニケーションが大事ですね。

【今後の展開】

今後の展開について、お聞かせください。

分院展開を広げていきます。今は2023年1月に新規開院予定の分院の準備を進めている状況で、採用活動にも力を入れています。当初は分院展開をする予定はなかったのですが、私に「ついていきたい」と言ってくれた歯科医師の皆さんを一介の勤務医として終わらせるのは申し訳ないですし、折角なら社会的地位なども考慮したいと考えるようになり、分院展開をしていこうと決めました。

【開業に向けてのアドバイス】

転職や開業を考えておられる先生方へアドバイスをお願いします。

診察室の様子

転職することは決して悪いことではありません。経営者として責任ある立場で治療をすることと、上の先生のもとで勤務医として治療するのとではかなり大きな違いがあります。技術の上達スピードも全然違いますので、転職するときは「何の目的で転職するのか」という明確な理由や自分の状況を理解された方が失敗も少ないのではないでしょうか。開業に関しては体力的にも若いうちがいいです。何をするのも若いときの方がいいですね。私は茅ヶ崎歯科医師会で学術委員を務めているのですが、新規開院して、歯科医師会に入会された先生方にお会いすると、やはり若い先生方はガッツがあるなと感じます(笑)。

【最後に】

趣味や余暇の過ごし方をお聞かせください。

ゴルフですね。友達と気楽にコースを周るというような感じではなく、実は競技ゴルフをしており、大会などを目指して本格的に練習しています。ゴルフを通じて、色々な方と知り合えたことで、私どもの事業にも大きな影響がありました。例えばオリンピック選手が使うマウスピースの事業をされている社長さんと知り合いになり、一緒にしないかと声をかけていただいたり、院内清掃に関しても専門業者の方と知り合えたことでお願いできるようになりました。ゴルフに本格的に取り組んでいる人たちは仕事にも本格的に取り組まれている方が多いので、深い交流から事業に発展していくことが多々あります。ゴルフは普通に1回飲みに行っただけの交流とは全く違った感じで、かなり深い交流ができるスポーツなのです。経営者の方やこれから経営しようと思っている方には重要な交流の場になりますので、お勧めです(笑)。

記事の前編はこちら