歯科経営者に聴く~第一線で活躍する理事長から学ぶ~
河原町歯科医院 江口 公人 理事長 (後編)
河原町歯科医院
河原町歯科医院 江口 公人 理事長
【プロフィール】
江口 公人 理事長
1962年 高知県 生まれ
1988年 徳島大学 卒業
1988年 早瀬歯科医院 勤務
1990年 医療法人奨和会 勤務
2003年 江口矯正歯科クリニック 開設
2007年 河原町歯科医院 開設
経営理念
経営理念を教えてください。
「美の喜びと食の喜びを提供する」です。全てがここに集約されています。歯科治療自体が食事をするためのものであり、食べるための噛み合わせなのです。歯並びはきっちり噛めて、食べることができるようにと決まっています。それが人間の身体の理想形だということです。言い換えれば「機能美」です。機能が正常であれば、「美」です。だから「食事をする機能」と「美」は一対だと私は思っています。矯正治療や審美治療は「美」、インプラント治療は咬合と食事がきちんとできるようにするためのものです。食事も喜びだし、美しくなるのも喜びですから、歯科医院は結局、「喜び」を提供する事業なのです。
自院のこだわりや、特徴、他院との差別化について、教えてください。
ロケーションが一番のポイントです。目の前に街が広がっているので、楽しいロケーションです(笑)。
また、プライバシーが確保された個室診療にこだわっています。個室でどれだけ患者さんと近くで話ができるかということが大切なところです。
患者さんは回りに知らない人が何人もいて、プライベートなことも聞かれていると思うと、本音も話せないし、治療説明にゆっくり耳を傾けることも考えることもできないでしょう。自費診療の説明をしっかりするためにも個室という空間は重要ですね。
現在の私どもでは保険診療が2割から3割、自費診療が7割から8割です。一般治療からインプラント、矯正治療まで全てを網羅していることが私どもの一番の特徴だと思います。
求人
歯科医師の求人をされていますが、歯科医師にとって、河原町歯科医院で働くことのメリットを教えてください。
矯正、インプラント、咬合の全てを学ぶことができますので、一人の患者を全て管理したい人には私どもでの勤務が向いていると思います。
一般診療はもちろん、ワイヤー矯正の基本を学びながら、今後ますます広がっていくインビザラインも学びたいという方であれば、勉強会などにも参加できます。
将来、開業しても食べていけるスキルをしっかりつけられるはずです。
また私どもには経営コンサルタントも入っているので、開業のための経営の勉強もしていただけます。
私どもは少し特殊な経営方法を取り入れています。そうしなければ、こんな街なかの激戦区で生き残っていくことはできません。いかにして人に知ってもらうか、来てもらった患者さんにどうやってとどまってもらうかといったノウハウも学んでもらえることと思います。
医療と言えども、やはり客商売の面はありますから、算術ができていないと健全な経営はやっていけないです。
院内の雰囲気を教えてください。
現在、歯科衛生士が3人、助手受付のスタッフが7人在籍していますが、皆が長く勤めてくれています。基本的に落ち着いた雰囲気の人ばかりで、キャピキャピしたような子はいません(笑)。
皆が患者さんにとって良いこと、悪いことをわきまえて、阿吽の呼吸で仕事をしているので、基本的なことを注意するようなこともありません。
私どもは受付も立ったままです。以前、自費専門だった頃は受付カウンターで着席して患者さんに説明するスタイルを取っていたのですが、今は受付も立った状態で仕事をしています。その方が患者さんに挨拶したり、話をしたりするときにも良いですし、何よりも立っていた方が動きやすく、機敏になります。
確かに忙しくてばたばたしているのですが、強烈なイケイケではなく、雰囲気はまったりしています(笑)。それも私どものスタッフの良いところでしょうね。スタッフがばたばたしていたら、患者さんは落ち着かないですから、どんなに忙しくても、余裕を感じさせる動き方をしています。
スタッフに求める人物像としては明るくて、責任感があって、簡単に諦めないような人が良いですね。
私どもは歯科医師も優しいですし、人間関係の問題は全くないです。スタッフはもちろん、女性の歯科医師にも働きやすい歯科医院だと思います。
歯科医師の求人に関して、求められる歯科医師像を教えてください。
昔の私は「3、4年で保険診療を完璧に身につけて、その後に自費診療を習得するとなると7、8年はかかるな」と予測していました。その予測は外れていませんでしたね。したがって、腰を据えて、皆で一緒に勉強しようという姿勢をお持ちの方に来てもらいたいです。
私自身も人よりも長い時間働けば、それだけ豊富な勉強ができると考えていたので、勤務いただく方にも貪欲に勉強しよう、諦めずにやろうという姿勢を求めています。
勤務医の中には将来は開業をしたいと希望されている方が多いですが、今は患者さんの方が色々な知識がありますから、開業するにあたっては患者さんの多岐にわたる要求に応えられるだけの知識や技術が不可欠です。
軽い気持ちで開業して、開業後に自分の知識の浅さに気づいて、これではいけない、勉強しないといけないと思っても、開業すると経営もしないといけませんので、そんな状態で勉強もとなるとかなり難しいです。
高額な自費診療をするのは経営的には良いのですが、同時にそれだけの保障も必要です。それはリスクを抱えるということです。そこを避けたくて、自費診療をせずに、保険診療だけをやっていくとなると、経営的にはかなり厳しくなります。
だから、勤務医の時代に保険診療はもちろん、自費診療も勉強してから開業するべきです。したいことも決まっていないのに、とりあえず開業と思っている人は危険です。
保険診療だけで食べていける時代は終わりました。もし保険診療だけでやっていこうと思うならば、集客などをそれなりに考えないと、この過当競争時代に生き残っていけません。
ロケットスタートを切った人はがんと伸びていきますが、立ち上がりから苦労する人は開業後もずっと苦労します。