チーム医療!患者さんが信頼を寄せるクリニックづくり ~やさしい心理学から学ぶコミュニケーション術~【第11回】 こんな時どうする?!患者さんの対応を考えよう!―子供の歯ブラシに協力してくれないお母さん
水木さとみ (Mizuki Satomi)
- オフィシャルホームページ
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4歳くらいの小さな患者さん、来院目的は「虫歯にならないように」と、お母さんが定期的に連れてきたいと言います。
子供の口の中をみると・・・まあ大変!プラークが石灰化している部位がところどころみられるではありませんか!・・・きちんと磨かれている様子はありません。
早速、お母さんに協力を得ようと、仕上げ磨きの方法を伝えました。
ところが・・・!
お母さんは不機嫌そうな表情で「私がそこまでしなくてはならないのですか?!この子の下にも2歳の子もいて、毎日大変なんです。こちらで何とかして頂けないものでしょうか」と返されました。
さて、こんな時、あなたならお母さんへの対応、モチベーションをどのようにしていきますか?
そもそもケースのお母さんは「子供の虫歯予防」を主訴に来院しています。
つまり、子供の歯の健康に関しては、決して無関心ではなく、むしろ虫歯にならないように願っているお母さんです。
歯科衛生士としても、その要望に応えるためには、お母さんに協力を得たい思いは非常に理解できます。しかし、お母さんの立場になると、日々忙しい中での自宅での口腔ケアは難しいと困惑している様子ですので、おそらくコンプライアンスの低下が考えられます。
このような状態のなかでは、単にこちらが一方的に「自宅でのケアの大切さ」や「的確な歯ブラシ指導」を解説しても意味がありません。
なぜなら、それらは、お母さんにとって義務でしかなく、苦痛を伴い、かえってお母さんのストレスになってしまうからです。
その苛立ちは、やがて子供にも伝わり「歯ブラシは苦痛なもの」というイメージになっていきます。
これからずっと長く続く歯ブラシ行動、子供にとっても楽しく快適なイメージとして習慣づけたいものです。
ここは先ずお母さんの日常生活の大変さを理解してあげることから始めると効果的です。お母さんの思いを共感し、理解してあげることで、お母さんもまた、こちらの話に耳を傾けてくれるようになります。
「共感的理解」は、自分のことを理解してくれているという感覚を得られ、安心感が生まれます。安心感は信頼感に繋がり、共に前向きに進もうとする意欲に繋がります。
お母さんの気持ちが落ち着き、心理的安心と信頼が得られたと判断したら、次のステップに移ります。
◇ステップ1
お母さんがDHに何を期待しているのかを理解し、こちらが「出来ること」「出来ないこと」を明確に伝えます
母親の過大な期待は、後々のトラブルを招きます。
ここではクリニックでできることへの限界を示し、共に考え、お母さんができることから段階的なプランを立てます。
◇ステップ2
ステップ1で立てたプランを自宅で試してもらい、次回の来院時、フィードバックを行います。
前回のプランを実際にやってみて、難しい点はなかったか?困った点はなかったか?お母さんへのインタビューを通して振り返ります。
◇ステップ3
ステップ2で問題点があがったら、解決策を見出します。
修正を加えたプランを、再度、試してもらい、再び次回の来院時にフィードバックします。ステップ2のプランが達成できたら、次の課題に挑戦し、無理なく段階的に進んでいきます。
この方法は、患者さんに参加して頂き、共に考え、進めていく「参加型医療」を意味します。
お母さんをサポートしながら達成感を味わってもらうことで、虫歯予防への意識とモチベーションが強化させる方法です。
小さな可愛い患者さんへの虫歯予防には、まず、お母さんとの信頼関係を築き、お母さんの立場に立って理解し、その上でプロとして何ができるのか・・・サポーティブなアプローチを是非、試されて下さい。