チーム医療!患者さんが信頼を寄せるクリニックづくり ~やさしい心理学から学ぶコミュニケーション術~【第2回】 こんな時どうする?!患者さんの対応を考えよう!――恐怖心の強い患者さんへの対応
水木さとみ (Mizuki Satomi)
- オフィシャルホームページ
- http://www.mizuki-satomi.jp/
【こんな患者さんはいませんか?】
歯科治療を受ける患者さんの心理は複雑です。中でも歯科が苦手な患者さんにとっては想像以上に辛い時間を過ごすことになります。
ユニットに座った瞬間、緊張を隠せない患者さん、大柄で男らしい患者さんが、なぜか額に汗をかきはじめました。歯科医が「では麻酔をして歯を削りましょう!」との合図に、患者さんは「はっ・・・はい」と身体がコチコチ状態です。みると手はこぶしに握られ、肩に力が入っているようで上に上がっています。目はぎゅっと閉じ、表情もこわばっています。歯科医が次の(治療の)動作に移る度に、ビクッと身体も反応して動きます。
このような患者さんに、少しでもリラックスして治療を受けて頂きたいものです。
今回は、その効果的な対応法をご紹介することにしましょう。
歯科治療を受ける患者さんの心理は複雑です。中でも歯科が苦手な患者さんにとっては想像以上に辛い時間を過ごすことになります。
ユニットに座った瞬間、緊張を隠せない患者さん、大柄で男らしい患者さんが、なぜか額に汗をかきはじめました。歯科医が「では麻酔をして歯を削りましょう!」との合図に、患者さんは「はっ・・・はい」と身体がコチコチ状態です。みると手はこぶしに握られ、肩に力が入っているようで上に上がっています。目はぎゅっと閉じ、表情もこわばっています。歯科医が次の(治療の)動作に移る度に、ビクッと身体も反応して動きます。
このような患者さんに、少しでもリラックスして治療を受けて頂きたいものです。
今回は、その効果的な対応法をご紹介することにしましょう。
◆患者さんの恐怖はどこからくるの?
そもそも患者さんの「恐怖」はどこからくるのでしょうか。その多くは「過去の体験」に基づいてつくられています。例えば、過去に埋伏智歯(埋伏した親知らずの歯)の抜歯の経験をした患者さんがいたとします。抜歯をしなくてはならない智歯は、なかなか抜けず必要以上に時間がかかりました。途中、麻酔が切れ始め、少し痛みを感じてきました。歯科医もアシスタントも真剣です。少し苛立っているようにも感じられます。
そんな中、患者さんは「どうなっているんだろう? なかなか抜けないみたい…大丈夫だろうか? 血が止まらなくなったらどうなるんだ? そういえばニュースで医療事故を報道していた、怖い、どうしよう、どうしよう…」頭の中でよからぬ考えが次々膨らみます。心臓はドキドキし、呼吸は早く息苦しくなり、恐怖が襲いかかってきました。
やっとの思いで終わった外科的処置、患者さんはヘロヘロの状態でクリニックを出ていきます。「もう嫌だ、こんな思いはコリゴリだ」患者さんはそう思いながら、家にたどり着きました。
◆五感から再現する過去の記憶
それから時が経ち、なにやら奥の歯がズキズキしてきました。嫌な予感…おそるおそる歯科医院へ受診すると、予感は的中、虫歯が発見され、治療することとなりました。ユニットに座らされた患者さんは、もう逃げられません、覚悟は決めたもののどことなく落ち着かない様子です。
そんな中、ユニットに座った患者さん視界に入ってくるのは、透明容器に入った数多くの鋭利なタービンのバー(ドリル)。「痛そう…いや、大丈夫、落ち着かなくては…」患者さんは気分を落ち着かせようと懸命です。
ちょっと深呼吸、すると!…歯科独特の薬液の匂いが鼻の中いっぱいに広がります。
「こっ…これは!あの時(抜歯した時)と同じ匂いだ…」緊張は益々高まります。「ダメだ、落ち着かなくては!」と一生懸命自分に言い聞かせている患者さん。
そこに追い打ちをかけるように、隣のユニットから、歯を削るタービンの音がしてくではありませんか!「もう無理…たすけて!無理、無理…」
治療を前にした患者さんの額には汗がダクダクです。そこへ歯科医がドスンと座り「お待たせしました、では口を開けて下さ~い」とミラーと単針をもち、患者さんが口を開けるのを早くとばかり待っています。
心の準備も出来ていない患者さん(いえいえ、私ならぜんぜん待たされていませんから…この先、いくらでも待つことはできますので、どうぞお気づかいなく…)そんな患者さんの思いとは裏腹に、先生の言う通りに口を開いてしまうのでした。
何とも気の毒な光景です。恐怖心の強い患者さんにとってはユニットに座った直前、いえ、クリニックの扉を開けた瞬間から緊張が走り不安が襲います。その多くは過去の体験から蘇っているのです。
歯科医院での消毒の匂い、タービンや金属器具の音、ユニットに寝かされたあの感覚…、五感を通して記憶が再現していきます。
◆痛みへの対応
緊張や不安の強い患者さんは、痛みに対して過敏になるため、他の患者さんと同じ治療をしても、痛みを強く感じます。◆アシスタント力!
患者さんにいかにリラックスして治療を受けて頂くか。ここはアシスタントの腕の見せ所です。*環境づくり
先程、恐怖は、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を通して(過去の記憶を)再現することをお伝えしました。患者さんの緊張を緩和するために、治療中の金属が触れ合う音を避けるために、トレ―の上に消毒済みの布を敷くなどした工夫や、アロマの香りをつけたエプロンを使用することで、歯科の薬液の匂いから解放させてあげるのも効果的です。
*患者さんへの対応
ユニットに座った患者さんの状態をチェックしてみましょう。次のようなことはありませんか?些細な身体的変化や患者さんの様子が有力な情報となります。
このような様子が見られたら「大丈夫ですよ」「では、肩の力を抜いてみましょうか」と、患者さんの肩に軽く手を当て、全身の力を抜くよう促します。
患者さん本人は無自覚的に肩に力を入れてしまっていますので、そこに気づかせた上で、緊張緩和へと誘導します。
<誘導方法>
「一度、鼻から大きく息を吸って下さい、そして、お口からゆっくり吐き出しまてみましょう」と、息を吐き出す時には吸う息の2倍くらいの長さで行うと効果的です。治療の合間に何度か繰り返すことで、少しずつ落ち着いていきます。
何よりも患者さんの不安を軽減させる特効薬があるとすれば、それはスタッフの力です。ゆったりとした落ち着いた心構えと患者さんに不安を与えないやさしい配慮こそが患者さんの心理的不安を和らげる近道となるでしょう。益々のご活躍を切に祈っています。