歯科経営者に聴く - 医療法人社団廣陽会 パステル歯科医院 権藤暁曠 理事長(後編)

歯科経営者に聴く(後編)

~第一線で活躍する理事長から学ぶ~

医療法人社団廣陽会 パステル歯科医院 外観

 千葉県船橋市西船は1958年に開業した西船橋駅の通称が町名となったところである。西船橋駅はJR総武線、武蔵野線、京葉線に加え、東京メトロ東西線、東葉高速鉄道東葉高速線が通るなど、交通の要衝である。また近隣には京成電鉄本線の京成西船駅もある。

 パステル歯科医院はJR西船橋駅北口から徒歩3分の場所にある。保険診療のみならず、自費診療にも力を入れ、「患者さんにとって本当の『幸せ』」を追求する歯科医院である。

 今月は先月に引き続き、パステル歯科医院の権藤暁曠理事長にお話を伺った。

権藤 暁曠 理事長

医療法人社団廣陽会 パステル歯科医院 権藤 暁曠 理事長

【プロフィール】

  • 1964年岐阜県 生まれ
  • 1992年昭和大学 卒業
  • 1992年千葉県内の大型医療法人 勤務
  • 2002年パステル歯科医院 開業
  • 2006年医療法人社団廣陽会 設立
  • 2012年パステル歯科医院 リニューアル

理念・治療スタイル

経営理念を教えてください。

「歯科医院らしくない歯科医院を作り上げる」ことです。そして、「患者さんともスタッフともコミュニケーションを大切にする」ということでしょうか。私はコミュニケーション能力があるスタッフしか採用していません。仕事の間もプライベートな話をするといった時間を意識しています。スタッフを大切にして、スタッフを幸せにするのが今の目標です。スタッフが楽しんで仕事に取り組み、お金のためだけではなく、意義や仕事観を感じてもらえるように、私もスタッフを大切にし、幸せにしていきたいです。

診療方針

診療方針を教えてください。

患者さんご自身がどうされたいか?ご希望を伺った上で診療をしていくことですね。削らなくていいところを削るといったことなどは嫌いですし、絶対にしたくありません。患者さんに無理強いはせず、患者さんの意思を尊重しつつ、詳しい説明をしっかりするようにしています。

ほかの歯科医院との差別化について、お聞かせください。

スタッフの能力、ホスピタリティ、内装、治療技術です。スタッフのホスピタリティは重視しています。医療機関的なかしこまったものではなく、私はもちろんスタッフ全員が患者さんとの距離感が近い対応を心がけています。

開業後にピンチはありましたか。

ありました。歯科医院では勤務医やチーフクラスのスタッフの影響力が大きいのです。過去を振り返ると私どもの勤務医の中にどうしたと思えるほど、人格が変わってしまった人や、非常に仕事のできるチーフクラスのスタッフが、プライベートに問題が起こった途端、仕事に影響を及ぼし、それがやはりほかのスタッフにも伝染して、影響を受けてしまいました。あっという間に組織が崩れたということもありました。結局退職したのですが、採用はもちろん、その後のマネージメントはやはり大事ですね。そのときは私や妻が早く介入して組織を守ろうと動きましたが、嫌な思いをしたことは何度かありました。しかし、たくさんの学びも得ました。

患者さんからはどのような問い合わせが多いですか。

「歯科恐怖症です」という苦手意識やトラウマを持った患者さんからの相談などがよくありますし、笑気麻酔を使ってもらえるかという問い合わせなどもあります。私どもでは最初は笑気麻酔で少しずつ治療にも慣れていただき、メンテナンスを繰り返しています。そうすることで、「笑気麻酔はいらない」というぐらい克服してくれる方も増えてきました。また、関西へ引っ越してしまうある患者さんからは「関西から通いたい」と言っていただくなど、信頼していただいていました。

増患対策について、お聞かせください。

インターネット対策ですね。私どもでは検索順位が上位に来るように対策したり、ホームページで他院との差別化を図っています。また、ホームページに嘘は書きたくありません。例えばホームページには「笑顔で患者さんに接します」みたいなこと書いているのに、実際に行ってみたらスタッフ皆がドヨーンと暗い歯科医院だったら、患者さんは二度と来ないですよね(笑)。私どもでは患者さんが望む歯科医院はどういう歯科医院なのかを考えたことをホームページに上げて、それを実現しています。スタッフには「うちのホームページに嘘はないですよ」ということを実践するのだといつも言い聞かせています。

スタッフ採用・教育

スタッフの育成や教育について、お聞かせください。

いかに私どもの理念に共感してくれるスタッフを育てていくのか、一見すると難しいことですが、気長に考えてスタッフの成長を待ちながら育てていっています。大きなテーマはスタッフの成長です。他業界から歯科助手に転職する人は医療に関しての知識はないので、最初は何も分からないし、指導もなかなか大変ですが、「うちの方針に共感して、真面目に仕事をもらえる方なら、私たちは成長できるまで待ちます」ということを本人にも伝えます。分かってくれるスタッフはきちんと成長します。マニュアルもありますが、マニュアルに沿った指導は私どもの方法とは少し違うなと思うことがあります。私どもにはベテランスタッフが大勢いるので、新人教育もそのスタッフたちが指導してくれていて、私は道を示すだけという感じです。性別の違いなのか、私と女性スタッフの考え方が違うときもあったりしますが、そういうときは妻が女性スタッフの相談に乗ってくれていて、解決できるようにしています。

スタッフが働きやすい環境づくりのために注意されていることはありますか。

とにかく風通しの良い組織であることを心がけています。私どもは歯科医院の売上や保険料や初診の数など、全て「見える化」して廊下に貼り出していますし、税金がどれだけかかるかなども、妻がスタッフに話してくれているので、スタッフ全員が確認、把握できるようになっています。「利益が上がれば、きちんと分配するから。ボーナスも上げられるから」ということをスタッフに伝えています。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

最新の医療機器を、特にモニターで見られるタイプのマイクロスコープを取り入れたいと思っています。私どもは審美歯科やインプラントに強いと自負しているので、自費診療をさらに伸ばしていきたいですね。一方で、これから勉強していかないといけないなと痛感しているのが摂食嚥下です。厚生労働省も2025年からは訪問型に切り替えていくべきだと言っていますし、高齢者への対応を学ぶため、学会などに入ることを考えています。

開業に向けてのアドバイス

転職や開業を考えておられる先生方へアドバイスをお願いします。

今の歯科業界は競争が大変厳しく、とても難しい状況です。金属の相場が上がってしまって、利益が得られにくく、保険診療だけでは厳しいため、自費診療も必要になります。これからの歯科医師は自費診療を勉強して、テクニックを上げていくことが重要なのではないかと思います。開業するのであれば、経営についての勉強も大事ですね。マーケティングやマネジメントといった概念を持たずに開業して成功するのは厳しいでしょう。

プライベート

趣味や余暇の過ごし方をお聞かせください。

コロナ禍なので、今はずっとステイホームです。以前はジェットスキーが趣味で、妻や仲間とよく海に遊びに行っていました。読書や映画も好きです。村上春樹などの純文学だけでなく、漫画も読みます。ネットフリックスで映画を観たり、プレステでゲームをするのも好きです。ファッションも好きなのですが、今はこんな状況なので、買い物に行くことができないですね。以前はギターを弾いていたこともあって、洋楽もとても好きで、R&Bやロック、ジャズを歯科医院内のBGMで流したりしています。初診の患者さんは驚かれますよ(笑)。芸術やアートも好きで、自分でも多趣味だと思いますし、プライベートも充実しています。

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