フリーランス歯科衛生士インタビュー
丸橋理沙さん 第2回 「フリーランスになった!」
プロフィール
- 1984年に大阪市で生まれる。
- 2006年に新大阪歯科衛生士専門学校を卒業後、伊藤歯科医院に入職する。
- 2010年にアメリカで研修後、フリーランスの歯科衛生士となる。
フリーランスとは
「フリーランス」と「パート」の違いを教えてください。
歯科医院から勤務時間や給与などの条件を提示されて、それに合わせて働くのが「パート」です。
一方、「フリーランス」はこちらから給与や待遇の提示をします。
私の場合は勤務可能な日数と時間帯、自分の患者さんだけを診ること、雑用はしないことを伝え、給与の提示をして、「これでOKなら、雇ってください」というスタンスです。
フリーランスとしてのデビュー
フリーランスとしての仕事先をどう探したんですか。
自分で「フリーランスです」と名乗れば、明日からでも「フリーランス歯科衛生士」になれます。
でも、フリーランスとして、自分のやりたいことを受け入れてくれる歯科医院をどうやって探し、仕事をどう増やすのかは苦労しますね。
私がまず考えたのは最低限の収入を得るために、一つの歯科医院でメンテナンスの契約を取ることでした。
たとえ、ほかの仕事が入ってこなくても、月に何回か、その歯科医院に行けば収入を確保できますからね。
私はいわゆるリクルート活動をしたことがなく、このときも業者さんの紹介で、箕面市の歯科医院に行ったんです。
そこは歯科衛生士の採用がうまくいっておらず、「何日でもいいから、とりあえず来て」という状況でしたので、とてもラッキーでした。
そこに2年いる間に、ほかの仕事を増やしていったんです。
ほかの仕事って、どんな仕事ですか。
インプラント手術のアシスタントやスタッフ教育、企業からの依頼での講演などです。
そういう仕事をいただくようになるまではパンフレットを作り、歯科医師が集まるスタディグループに置かせてもらったり、大きな会に参加して、自分の活動を説明したり、地道な宣伝活動をしてきました。
最初に勤務した伊藤歯科医院の伊藤院長が有名な方ですので、そういった繋がりを持てたことも良かったです。
フリーランスの苦労
フリーランスになって苦労したことはどんなことですか。
フリーランスになった当初は、知り合いの院長先生たちから「何でも助けてあげるよ」と言われていましたが、実際に助けてくれる人は多くはいなかったです(笑)。
初めは手伝ってくださった方でも、私が有名になっていくにつれて、「あいつは生意気だ」と言われたり…。
フリーランスは基本的には自分の患者さんだけを診て、雑用をしないので、良い所どりと思われることもあります。
20代のときは肩肘張っていましたし、生意気とか、偉そうとか言われたのも仕方ないのかもしれませんが、へこんで、落ち込んだこともありますよ。
私の場合は若いうちにフリーランスになりましたから、知識で武装しようと思っていました。
他人に「どうしてできないの」と平気で言っていましたしね。今は本当に穏やかですよ(笑)。
苦労をどう乗り越えたのですか。
ある有名な先生から「出る杭は打たれると言うけど、出過ぎた杭は打たれないから、出過ぎるまで頑張れ」、「誰かに色々言われたら、有名料だと思え」と言われたんです。
有名になれば、色々な人にあることないこと言われるけど、有名でなかったら噂にもならないから、有り難いことだと。
こういった言葉があったから、ここまでやってこられました。
フリーランスの遣り甲斐
フリーランスとしての遣り甲斐はどこにありますか。
多くの歯科医院からお呼びがかかり、歯科医院の問題解決ができるようになってきたので、大きな喜びを感じています。ある程度、食べていけているのも大きいですね。
今は次のステップに進んでいます。それは企業との連携です。
以前、学会で株式会社モリタの社長とお会いすることがあり、「いつか一緒に仕事ができたらいいね」と言われていたのですが、私から社長に連絡を取り、「話をさせていただきたい」と伝えたところ、社長からも「そろそろ一緒に仕事をしたいと思っていました」と嬉しい言葉をいただきました。
これがきっかけで、セミナーやデンタルショーでの講演など、多くの仕事をいただいています。
フリーランスになって6年ですが、最初は自分の生活だけで精一杯でしたし、企業と仕事をすると言っても何をどうすればいいのか分かりませんでしたが、「石の上にも三年」。
3年で生活も落ち着き、企業との仕事についても考えられるようになってきました。
フリーランスで年収3倍!
フリーランスとして働くにあたってのメリットはどんなことですか。
「この日は休みにします」と言えば休めますし、ずっと働くこともできますので、人生のマネージメントができることです。
給与も上がります。初任給が他所より低かったので今は3倍ぐらいです(笑)。
勤務時代の給与が低いのは勉強させてもらうからだと思います。
でも、今の私には休日がありません。先週末は新横浜、今週末は大阪、来週末は福岡、さらに次の週末はまた大阪といった具合にセミナーのスケジュールがぎっしりなんです。
今は京都の歯科医院で火曜日と金曜日に勤務していますが、1カ月前に出勤日の調整をしています。
たまに空白の日を残しておくのですが、そこも予定が入ったりするので、結局、休日がなくなります。
フリーランスとして働くにあたってのデメリットはどういうことでしょう。
収入の安定がないことでしょうか。
すごく忙しい月に予定が集中するといった波があるのもデメリットですが、それ以外のデメリットはないですね。
年収はどう変わりましたか。
勤務時代と比べて3倍ぐらいになりました。
私がスタッフ教育などで出向いた場合、1回4時間で○○円、交通費は別という金額です。
事前の打ち合わせに関しての費用は発生しませんが、ある程度、信用していただけているからか、会って打ち合わせをするということはほとんどなく、メールで打ち合わせをします。
企業でのセミナーと同じ内容で行う場合は、企業がセミナー内容をネットにアップしているので、それを見たりして、準備します。
ホームページを見て、「スタッフ教育に来てください」といった要望をいただくのですが、たまに不安になりますね。
先日も面識のない山口県の歯科医院に行ったのですが、新山口駅までは自腹で行くので、「誰もいなかったら、どうしよう」と思いました(笑)。
事前に歯科医院の写真や情報などを送っていただいているのですが、一抹の不安はあります。
確定申告などは大変ですか。
税理士さんに全てお任せです。経費が認められるので、確定申告のメリットは大きいです。
ただ、マイナンバー制度が始まったので、全部の取引先にマイナンバーを出すのは大変でした。
企業と仕事をすると、そういうところでの煩雑さはありますね。