歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~
医療法人福和会 別府歯科医院 別府 謙次 先生
今月紹介する別府歯科医院は福岡県福岡市東区に位置し、最寄り駅はJR鹿児島本線千早駅である。千早は福岡市の21世紀モデル都市にふさわしく、新しい学校、新しい病院、新しい鉄道の構想都市でありながら、歴史的には邪馬台国ゆかりの地域であるという面も持つ。
別府歯科医院の診療室は「患者様の癒し」を目的に、院長がカラーコーディネートまでにこだわり、色彩バランス、明るさに至るまで都会的センスと心配りを感じさせている。
医療法人福和会 別府歯科医院 別府謙次 先生
プロフィール
- 1966年に北九州市で生まれ、1990年に福岡県立九州歯科大学を卒業する。京都の医療法人奨和会に4年間勤務し、その間スウェーデンのイエテボリ大学歯周病科でぺリオ研修、ミシガン大学歯科でインプラント研修、チューリッヒ大学でデンチャー研修を行う。
- 1995年7月、福岡市東区香椎で別府歯科医院を開業する。1998年に医療法人福和会を設立し、その後1999年に丸の内歯科医院(往診部)、2000年に行橋グリーン歯科医院、2002年に二島デンタルクリニック、2003年に丸の内歯科医院(外来部)、2004年に和泉歯科を開院する。
- 2007年5月には本医院を千早駅前に移転し、同年別府歯科 宮前診療所を開院する。
- 現在、医療法人福和会 別府歯科医院では、常勤歯科医師、非常勤歯科医師を募集しています。
歯科医院の沿革
別府院長に歯科医師になったきっかけを伺ったところ、幼少期に小児喘息を患ったこともあり、その頃から医療に携わる仕事に就きたいという思いからだという。転機は大学受験だった。東京理科大学の経営工学部と九州歯科大学に受かり、経営にも関心が高かったので進路決定には悩んだが、ご両親が歯科医が向いているというアドバイスをされたことと幼少の頃からの思いもあり、歯科医の道に進む。
開業の動機は医療法人で勤務医を経験したことで一般診療に自信が持てたからだそうだ。経営感覚には以前から長けていたこともあり、30歳までには開業するという計画のもと帰郷した。偶然にも香椎という地域で居抜きの医院をみつけることができ、ここから社会全体の人々との「統合」という経営理念をかかげ、わずか10年で6軒の歯科医院を開設した。
経営ビジョン
開業当時はどのような状況でしたか?
当時は私と常勤の衛生士1名と非常勤3名、実質3名体制でのスタートで、開業資金は事業計画書と熱意で銀行から、3500万円融資して頂き、自己資金はゼロでした(笑)。居抜きということもあり、初日から患者様が30名という有利さもありましたが、当時まだどこの歯科医院もやっていなかった夜9時までの診療と休日診療を行い、また昼休みには訪問診療も続けました。若かったので、体力もあったのですね。
診療所は35坪のビル診で、建物のレイアウトのこだわりとしては院長室を取り壊し、当時まだ普及していなかった完全個室を一部屋作ったことでしょうか。ユニットは5台にしました。内装は天井から壁、レントゲン室に至るまで色調を重視し、カラーコーディネーターにも入ってもらい、癒しをテーマに明るく、温かみを演出しました。
来院数を伸ばすために一番重視したことは口コミを大切にしたことです。昼食は弁当ではなく必ず近所の食堂に顔を出し、地域にアピールしました。その結果数ヶ月後には60名を越えるようになりました。
病院の特徴(コアコンピタンス)
治療方針が変わられたと、お聞きしましたが?
予防歯科:私は京都でSJCDに参加していたため、開業当初から医師主導による補綴主体の診療を行っていました。ある日一人の衛生士さんから、この地域の口腔内環境が悪いと指摘を受け、初めてメンテナンスの大切さを感じたのです。そこで奥羽大学の岡本先生のセミナーに参加し、ここから歯周病治療など、予防歯科を取り入れていきました。
スポーツ歯科
東区を中心に、ジュニアの育成として中学生の水球チームのサポートを行っています。マウスピースで外傷予防、資金援助を含め運営費としてジュニアの育成を目的としています。 また医科では重症な無呼吸症候群の治療にはシーパックで対応しますが、比較的軽い症状のいびきや無呼吸症候群の治療にはマウスピースを使用します。今では福岡睡眠呼吸センターと診診連携を行っています。
口腔外科
インプラントと外傷治療に関しては四国から友人の専門医を迎え、治療にあたってもらっています。ただ重い外傷の場合は近くの基幹病院と病診連携を行っています。矯正治療に関しては、妻が和泉歯科で担当し、今は全ての歯科治療に対応できる体制ができあがっています。
経営方針
開業から2年を経た1998年に医療法人を設立し、そこから医療法人としての組織作りを開始し、経営理念、経営目的、人事理念を作成しました。
~理念~「統合」
医療業界の変革が問われている今、医院と言う枠を越えた情報提供や啓蒙活動を通して医師・患者という分離の思考ではなく、グループの理念目的に共感していただける方々の輪を広げ、社会全体の人々との統合を目指します。
~目的~「福和会に関わるすべての人々と喜び・感動を共有する
生涯にわたり関わって頂ける、安心と信頼関係を築ける医院を目指し、最大限の能力を発揮して治療(キュア)及び予防(ケア)に取り組んでいきたい。
~人事理念~「主体的医療人の育成により医療業界の変革を実現する。
- 理念・目的を共有できる人材
- 知恵
- 素直
- 情熱
- 挑戦
- 謙虚
以上が福和会の経営方針です。
今後の展開
現段階での課題はございますか?またその克服策をお聞かせください。
課題は2点あります。第1点は歯科医師の研修および教育、育成ですね。九州歯科大学の卒後研修機関になっていますので、歯科医師の技術レベルと診断力の統一です。今はベテランの歯科医師を中心に研修プログラムを作成して頂いています。そして巡回しながら、チェック、評価し、できなければフォローを行いながら個々のレベルアップを図ります。衛生士に関しても、統括マネジャーに塾を作らせて、寺子屋方式(マン・ツー・マン指導)で歯科医師同様レベルアップを目指します。
第2点は現在のところ教育・人材育成期間になっていますので、人件費がかさみ過ぎていることです。しかしこれは将来を見据えての投資であり、医療法人としては当然のことだと考えています。福和会では現場で若い歯科医師、衛生士が中心になり、ベテランは教育、指導を担当する終身雇用制度を目指しています。
将来の歯科医院に対しての提言
これから開業しようとしている先生へアドバイスをお願いします。
患者様のニーズは多種多様です。その地域に合ったニーズをいかに的確にとらえきれるか、また自分の強みをどういう形でアピール出来るかを考えてみてください。そして人との出会いを大切にすることで、広い人脈も築けるでしょう。
将来への展望
医療法人福和会は、今発展中であり、勢いを感じさせる。別府院長は主体性を重視し、将来を見据える目を持つ。さらに溢れんばかりの包容力とバイタリティの持ち主でもある。今後は益々の発展が期待できるだろう。
プライベート
先生のご趣味:水泳・フルマラソン・トライアスロン
プライベートタイム:妻と美味しいもの食べること