歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~
医療法人社団 ブライトデンタルケア 川口リボンシティ歯科・矯正歯科 金子 正明 理事長
医療法人社団 ブライトデンタルケア 金子 正明理事長は、オールラウンドの歯科医師を目指し研鑽を積んだ。そして、自分が思い描いている歯科医院を現実のものとし、今は10月に7医院目をオープンするための準備を行っている。「私たちの法人の基本理念は“満足+α”です」ときっぱり言い切る理事長の強い信念は、綿密に組み立てられた教育システムによって、各スタッフ自身の理念にもなっているようだ。応対にでた秘書の名刺には「秘書+α」と書かれていた。育成に力を注ぐことで患者・スタッフ・法人が満足+αを得られることができる。金子理事長の穏やかな中にパワー溢れるお話を伺いました。
医療法人社団 ブライトデンタルケア 川口リボンシティ歯科・矯正歯科 金子 正明 理事長
プロフィール
- 1971年 埼玉県生まれ
- 1995年 日本大学歯学部 卒業
- 2002年 神奈川歯科大学大学院 修了 歯学博士 取得
- 2002年 ブライトデンタルケア青山 開設
- 2006年 医療法人社団ブライトデンタルケア 設立
- 2007年 川口リボンシティ歯科・矯正歯科 開設
- 2008年 羽生リボン歯科・矯正歯科 開設
- 2009年 王子リボンシティ歯科・矯正歯科 開設
- 2010年 つくばリボン歯科・矯正歯科 開設
- 2010年 三鷹リボン歯科・矯正歯科 開設
【開業に至るまで】
■歯科医師を目指されたきっかけはどのようなことでしたか?
実家は医療系ではなく建設業だったので、歯科医師を目指していたということはありません。自分自身も建築に携わりたいと思っていました。しかし、大学受験の時に、日本大学の付属校であったため推薦で歯学部に入学できることになり、いいかなと思い歯科の道に入りました。ですので、強い思い入れがあったわけでなく、たまたま歯科医師になったというのが本当のところです。
しかし、歯科医療をしているうちに、非常に面白く探求すべき多くのものがあることに気づき、今では楽しんで仕事をしています。
■大学・大学院時代の生活や、現在に役立っている事などお聞かせください。
大学の時は、部活のバスケットボールに夢中になっていて、他のことをあまり考えていなかったように思います。大学卒業後は、先輩に紹介していただいた著名な先生について歯科医療を学ばせていただきました。この頃は、セミナーオタクと言っていいほど勉強していました。この時に仕事の仕方を覚えたような気がします。
その後、診療で大きな壁にぶつかり、模索していたところ、神奈川歯科大学の佐藤貞雄教授に出会い、学ばせていただきたいとお願いして大学院に入りました。そこでは、歯科矯正学だけではなく、咬合学・補綴学・歯周病学など様々なことを学ばせていただきました。私の今の診療の基礎をつくっていくことができたと思います。
大学院生の時には、10医院ほどの歯科医院で矯正歯科医として非常勤で働きました。私が教授のセミナーの講師を大学院の時にしていた際に、受講されている先生方からの直接の依頼で多くの歯科医院で矯正を担当させていただきました。矯正治療は自由診療なので、院長先生と多くの話をさせていただき、様々な医院の経営スタイルや、診療方針を学びました。その中から、自分に合ったスタイルを考え、アレンジして今の経営スタイル・診療方針があります。
■勤務先を選ばれる際に先生が求めたものはなんでしょうか?
学生時代から包括的な診療に興味があり、オールラウンドな歯科医師になりたいと思っていました。その時に、部活の先輩から包括的な診療をしている先生を紹介していただいて、勤務に至りました。そこでは、初めから多くの患者様を担当させてくださり、ユニット1台と歯科衛生士を一人担当でつけていただきました。院長に「自分の医院を一つ持った気持で診療しなさい。」と言われたことが非常に心に残っています。この院長に教えていただいた実行力と責任の重さを特に学びました。
■いつ頃から開業を意識されましたか?
大学院の卒業の時に、大学に残って研究を続けるか、開業するかの2つの選択肢がありました。勤務医という考えはありませんでした。というのは、自分が思い描いている診療方針や経営スタイルが勤務をする時に見えなかったからです。最終的には、開業に踏み切ったわけですが、ただ単に開業は自分を試したかったからだと思います。その時も今もですが、いつも自分を新たな次のステージに上げるために分院展開をしています。
■開業にあたってのコンセプトやこだわりなどをお聞かせください。
開業にあたって、まっ先に考えたのは、自分の技術と考えをしっかりと提供でき、自分を試せることのみを考えました。最初に場所選びですが、試すなら真中でやりたいと思い港区の青山を選びました。コンセプトは、開業当初から一貫して“満足+α”としています。
患者様に“満足+α”を提供するということが重要ですが、その前にそこで働くスタッフや自分が“満足+α”を感じることが重要です。ですので、居心地の良い空間をつくることを設計段階から組み込んでいきました。自分が一日に10時間以上もいる場所に強いこだわりをもって内装からインテリア、器材からシステムまで一貫性とコンセプトを重視してつくっていきました。全ての医院でも同様にしています。
【経営理念】
私たちの法人の基本理念は、“満足+α”です。
これは、患者様はもちろん、そこに関わるすべての人が満足以上に喜びを感じられることを目指しています。また、スタッフに対しては、“with genius, brightness & making synergy”(一人ひとりが天才的に輝いて、共に未来を創りだす)をコンセプトにしています。
基本理念を具体的に挙げると、ホームページにも謳っていますように、「理想的な歯科医院」「理想的な診療」を目指し日々努力し続けています。それは、ブライトデンタルケアのスタッフ全員が“「+α」の精神”を意識する事からはじまります。私たち自身が、患者様以上に患者様の立場になりきること。歯科・矯正歯科として、どうすれば、患者様に満足いただけるか。具体的にどう行動すべきか。これらをスタッフ全員で常に考え、話し合いを重ね“患者様に満足以上の喜びを提供すること”を追及しています。
■土日祝日も午後8時までという地域に密着した診療時間にも理念が伺えますね。
そうです。患者様にできる限り、安心していつでも来られるということが必要だと考えています。また、すべての歯科医療をできるだけ、ワンストップで行えるように専門医を多数置いていつでも対応できるようにしていることも重要なポイントになっています。
【診療方針】
診療方針としては、一生涯に渡って通っていただける歯科医院を目指しています。もちろんその人の生活環境は、さまざまな変化をしていきます。しかしその時々に応じて行う治療が、スタート時から一貫性を持って行っていれば、無駄な時間や出費をしないようにすることができます。そのためには、診査・診断の徹底と治療計画の一貫性を重視して行うことが、患者様に長期にわたる“満足+α”を提供できると考えています。この診査・診断も病因論(病気の根本的な原因を探る)に基づいて行います。この病因論を理解し、実践するために院内教育や外部でのセミナーも行っています。
■一般、審美、矯正の比率や主流の治療法などお願いします。
自由診療の割合は、すべての医院で60%以上です。私たちの法人では、インプラント、矯正治療、マイクロスコープを用いた歯内療法、歯周治療、審美治療、顎関節症など歯科医院でできる診療はほとんど行っています。インプラントは、年間200症例を超える数を行っています。矯正治療はすでに3,000人以上の患者様を手掛けています。多くの芸能関係の方も来院していただき審美治療をさせていただいています。矯正はオーストリア咬合学(シークエンシャル咬合)を基礎とした非抜歯矯正を行っています。もちろん、舌側矯正やインプラント矯正など矯正分野の治療はすべて行っています。
【増患対策】
■増患対策はどのように行っていますか。
広告については、駅看板・ホームページなどを行っています。私たちの医院が、患者様に今までにないような歯科医院があるのだということをお伝えすることが重要だと思っています。また、来ていただいた方にいかに紹介していただけるかを念頭に置いて治療を行っています。その結果、口コミでも患者様から患者様のご家族様、また知人の方へと輪は広がっていきました。患者様に支持していただけているという実感を感じていますので、効果はでていると思います。
【スタッフ教育】
法人の発展は、個々のスタッフの能力の向上に関わってきます。そのためのスタッフ教育は非常に重要で、スタッフは多くのことを学んでいきます。部署ごとに教育プログラムがあり、その人のレベルに合わせて教えていきます。入社すると始めに法人のシステムとマニュアルを学んで、各個人にトレーナーがつき、OJTをしながら進んでいきます。さらに、法人内の部署ごとにセミナーを行い、人としてまた仕事に必要なことを勉強します。この繰り返しを行うことで向上します。
歯科医師は、年次に関係なく指導医がつき、一から再教育を行います。形成からエンド、ペリオさらにはインプラントや矯正、コンサルテーションまで各個人の技術や知識の習得レベルに合わせたセミナーと指導を行います。また院内のDr.だけでなく院外のDr.も交えて症例検討会を行いさまざまな角度から勉強します。
私自身が矯正のみではなくインプラントや審美、顎関節症など多岐にわたるオールラウンドの歯科医師を目指していますので、各Dr.にも同様に目指してもらっています。一人ひとりが自分の得意分野を見つけて、スペシャリストになってほしいという願いをこめた教育システムになっています。学び向上するというのは大変ですが、大変ななかにも、直接聞ける雰囲気やスタッフ間でのコミュニケーションが円滑にいくように、その環境作りにも気をつかっています。症例検討会では、飲みながら食べながら楽しくやっています。
【今後の展開】
私たちの法人では、今後も分院展開をし、拡大していく方針です。
今の医療界、歯科医療界は大きな転機を迎えていると考えています。この大事な時期に、歯科医療従事者が安心して働ける環境作りをする為に、院内のシステム化やマニュアル化はもとより、開院していく医院も同じ基本理念を持ち続けていくことが重要と考えています。
直近では、東京都板橋区常盤台に「ときわ台リボン歯科・矯正歯科」を10月に開院予定です。
【開業に向けてのアドバイス】
開業に向けてのアドバイスをお願いします。
ドクターは最後には開業と言うステップを踏むことが多いと思います。この開業はスタート時大きな苦労と痛みを伴います。今は開院すれば患者様が来るということはありません。そのための一貫性のある自分のコンセプトに基づいた準備を周到にしてください。そうすれば必ず実を結びます。
【プライベート】
時間があれば主に読書をしています。学術図書から経営、歴史小説、特に戦国時代ものが好きです。あとは、いろんな方と食事や飲みに行くことが多いです。もちろんできる限り家族との時間はとるようにしています。 私は、昔からOnとOffを明確するようにしています。例えば、仕事では怒っても、その後はさっぱりとしていて何もなかったかの様にしています。実際に忘れっぽい性格です。なので、あまりストレスを感じることはありません。開業当初と今では、仕事の内容は大きく変わってきましたが、リズム自体は変わっていません。ただ、年をとってきたせいか、朝起きるのが早くなってきましたね(笑)。