歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~
医療法人社団青葉会 かさはら歯科医院 笠原 一規 理事長
「仙台に元気の良い先生がいる!」というのを頼りに、かさはら歯科医院の情報を集めたところ、眩しいばかりのパワーが伝わってきました。
「仙台最大級の歯科医院」というフレーズは規模を表すのではなく、開業にあたって痛い思いも経験された笠原一規理事長の患者様に対する、また歯科医院経営に対する懐の大きさであると感じました。
「定期管理型歯科医院」を実践する熱い思い、患者様への繊細な思いやりなどについて、お話しいただきました。
医療法人社団青葉会 かさはら歯科医院 笠原 一規 理事長
プロフィール
- 1970年 埼玉県生まれ
- 1994年 北海道医療大学歯学部卒業
- 1994年 平井歯科クリニック勤務
- 1997年 かさはら歯科医院を塩釜市で開業
- 1999年 仙台市新田に移転
- 2002年 医療法人社団 青葉会設立
開業に至るまで
先生は弁護士志望だったとのことですが?
高校の頃はそうでしたね。よく話す性格ですし、自分には話す仕事が向いているのではと思ったのが最初でした。特に弱い人を助けたいというような気持ちからではなく、単に話す仕事=弁護士と思っただけでした(笑)。その後、姉が歯科衛生士学校に入学したこともあり、歯科医師の仕事は話すだけなく、人を治すことに格好良さを覚えて、歯科医師になりたいと思ったのがきっかけだったのではないでしょうか。当然、姉を除く家族や親族に歯科関係者はいませんでしたので、どんな世界かは全く知らず、ただ単に憧れだけでこの世界に入りました(笑)。とてもミーハーな人間なんです。
大学時代に熱中されたラグビーから得たものはございますか?
1、2年生のときは練習が厳しくて、いつ辞めようかと考えていましたが、辞める勇気がなくて残っていた感じでした(笑)。その後、学年が上がるごとに、先輩としての自覚や部の運営に関わることによって、上下関係の大切さ、同学年の親友の絆の深さや部の大切さなどが分かってくるようになってきました。今でもラグビー部の同級生、先輩、後輩はとても大切な存在です。
開業しようと決心されたきっかけやご苦労などをお聞かせ下さい。
開業のきっかけは、私の同級生の紹介からでした。その同級生は実家のそばにある宮城県石巻市の医院で勤務医として働いていました。そこに出入りをしていたメーカーの方から、「居抜きの物件が出たのだけれども、先生の友達で誰か開業をしたい先生はいませんか」という話があり、私に白羽の矢が立ったのです。
私としても、当時、勤めていた歯科医院での勤務も3年になるところでしたので、新しい一歩を踏み出したいと思っていた時期ではありました。そこで、妻と相談して、いつかは実家のある埼玉で開業をするための予行演習のつもりで塩釜での開業を決めました。ですから、特に開業に関して、勉強をしたり、何か準備することもなく、単なる予行演習のつもりでいました。何も勉強もせず、ましてや何の根拠もなく、自信だけで開業に踏み切っていますので、開業の場所がどんな場所で、どんな地域であるかさえも分からないわけですから、患者様は当然、全くいらっしゃいませんでした。
塩釜での開業は地元での開業のための予行演習ですから、勉強をもっとしたいと思っていたんです。にもかかわらず、患者様がいらっしゃらないので、暇な時間はたくさんあるのに全く何もしていない自分に気づいたのです。それ以来、いろいろな勉強会やセミナーに参加をして、研鑽に励みました。その後、今もお世話になっているディーラーの社長に現在の場所を紹介してもらい、仙台に移転しました。移転後は最初の開業の失敗を糧に一生懸命努力をして、現在に至りました。
今思うと、あのとき、何も気付かずにいたら、現在の私はいなかったでしょうね。
「自信だけで開業」から学ばれた教訓が現在に生かされているのですね!
そうです。塩釜時代はとにかく予行演習だと思っていたので、今となっては怖いことですが、本当に何も考えていませんでした。ただ何の根拠もない自信だけでしたね。
仙台開業は2回目の開業でしたので、失敗は許されないという思いが強く、とにかく多くの患者様にいらしてほしい、お子様からお年寄りまでを丁寧に、そしてコミュニケーションを積極的に取るようにしようと思っていました。
1Fが歯科医院、2Fが技工室という造りだったのですが、多くの患者様が来院されるようになり、医院がかなり手狭になったため、近くに移転を決めました。
20代から50代までの女性がこの医院を訪れたときに「とても落ち着く医院。とても感じの良い医院」をテーマに、外装から内装までを経営コンサルタントと一緒に考え、設計をしました。
そして、私の考えである「定期管理型歯科医院」が実践できるように、治療と予防の入り口を分け、健康な方が自らの健康を維持、増進するために通いやすい医院作りをしました。
経営理念
ご経験から生まれた経営理念をお聞かせ下さい。
「日本一の感動を与える歯科医院-Our guests want to return-」を合い言葉に、患者様が自らまた通いたいと思ってもらえるような歯科医院作りにスタッフ皆で力を合わせて日々努力をするということです。私はどんな些細なことや、どんな場面でも患者様に感動を与えることはできると思っています。多くの患者様に感動を与えることにより、私たちがこの仕事をして良かったと思える瞬間を増やしていきたいですね。
多くの感動を与えるために、どのような診療方針を立てていますか?
ずばり、定期管理型歯科医院です。「怖い」、「痛い」、「行きたくない」歯科医院ではなく、「怖くない」、「痛くない」、「また行きたい」と思ってもらえるような歯科医院作りを基本に考え、患者様の健康観を少しでも向上できるようなお手伝いをしていきたいと思っています。
増患対策
増患対策の秘訣を教えていただけますか?
多くの取り組みをしています。まず立地です。以前の塩釜での開業は目の前が海という、とんでもない立地だったこともあり、立地の重要性は痛感していました。ですので、仙台市に移転する際には立地を重要視しました。
また、新田の医院から現在の場所に移転する際は、ローソンの跡地という最高の立地に移転することができました。技術も重要要素なのですが、やはり、現在は医院の立地は非常に重要であり、患者様にお越しいただくためには欠かせない要素だと思っています。
次にホームページも非常に重要で、新患の20%程度はホームページ経由で来院という結果が出ています。中身を充実させ、検索順位でも上位になるように、また、インターネット上の広告にも力を入れています。パソコン用のホームページだけでなく、携帯サイトも早い時期から取り組むことで成果を出すことができました。
後は内装です。当院は予防歯科に非常に力を入れています。
DH専用の予防ルームを4部屋も用意して、万全の対応をしています。
患者様には「説明不足」、「自分の話を聞いてくれない」、「聞きたいんだけど、先生は忙しそうにしてるから、聞きづらい」という思いがあるようです。もっと「分かりやすく」、「聞きやすく」、「言いやすい」環境を作るためにカウンセリングルームを作りました。
患者様のお話をしっかりと伺うことによって、患者様の考えをこちらが理解し、そして患者様ご自身がご自分のお口の中の状況、そして歯の大切さ、予防の大切さを理解していただけるようになったと手応えを感じています。
さらに、家族単位で治療を受けていただくために配慮しています。「兄弟、親子で一緒に横に並んで隣同士で治療ができたら、きっと、二人で励まし合いながら治療を受けることができるのではないか」という発想でファミリールームを作りました。安心感があるのでしょうか、好評をいただいています。
託児専用の部屋を医院の2Fに借りて、専任の保育士さんに常駐していただいています。
また、お母様が診療を受けているときも託児室のお子様の様子を見られるようなWEBカメラを設置し、安心して
治療を受けていただける万全の態勢を整えました。
さらに、お子様が虫歯にならないための虫歯予防クラブ「キッズクラブ」があります。3カ月に1回、「キッズクラブ新聞」を発行し、定期的に院内でわくわく楽しいイベントを開催しています。歯医者嫌いの子どもを少なくし、将来的に虫歯・歯周病の少ない社会を作り出したいのです。
そして、優しいスタッフが患者様に笑顔で対応することの大切さです。多くの患者様はスタッフの対応も気にされています。
いくら治療が上手でも、スタッフの対応が悪いと満足度が下がってしまいます。そのようなことにならないためにも、
当院のスタッフは患者様と笑顔で優しく接するようにお願いしています。 スタッフが頑張ってくれるお蔭で、当院の診療室は明るい笑顔と笑い声であふれています。
大人数のスタッフを統括する方法をお聞かせ下さい。
院内、院外セミナーを通じて、共通の理念を共有することにより、お互いがお互いを支援し合う環境作りをしています。そのことにより、自ら率先して診療時間外でも練習をしたり、休日にセミナーに参加したり、成長をし続けています。
私はとくに統括するわけではなく、スタッフ皆で考え、行動する集団になっていると思います。
また、かさはら歯科医院の特徴の一つである「トリートメントコーディネーター」の役目は患者様と歯科医師、スタッフとの橋渡しです。患者様との仲介者を置くことにより、患者様が話しやすい環境作りをしています。今後このような役割の重要性はもっと増してくるのではないかと思っています。
今後もまだまだ意欲的に展開をされるのでしょうか?
患者様自身が自らの健康の維持・増進のために通う歯科医院作りをもっと多くの方に実践してもらえるように、医院内だけではなく、院外にももっと啓蒙活動を広げていきたいと思っています。
現在、数カ所の保育所の無料検診を医療法人で行っていますが、今後ももっと多くの保育所の検診事業に取り組み、子どもの頃から、歯の大切さが分かってもらえるようになってもらいたいと思っています。そして子どもから大人まで歯科医院が楽しい場所、気持ちいい場所と思ってもらえるような世界にしていきたいです。
そのためにも多くの仲間を作っていきたいですね。
プライベート
私は仕事や休暇を含めて年に20回近く、海外に行くことがあり、異国の地にいると、とても心がリフレッシュします。また日本ではとても考えられない海外での出来事に毎回、驚かせられることも私の好奇心をくすぐります。
将来的には、歯科医療を通じて、海外にも貢献していきたいと思っています。
若い先生方も夏休みや冬休みなど家に閉じこもっていないで、知らない世界に足を踏み入れてみて下さい。きっと新しい扉が開けると思います。ただし自己責任でお願いしますね(笑)