歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~
医療法人雅桜会 根津歯科医院 根津 雅彦 理事長
日光街道2番目の宿場町として誕生した「草加宿」は、松尾芭蕉の「おくのほそ道」にも登場し、商工業の発達とともに町民文化が形成された街として知られています。
現在もその頃の人情味が深く受け継がれる一方で、再開発による整備で大手専門店やスーパーが立ち並び、乗降数も年々増加の傾向にあるとのことです。駅から徒歩3分の商店街の中ほどに、子どもの頃から過ごされた草加で地域に密着した治療をされている、根津雅彦先生の歯科医院を訪問いたしました。昨今、「患者さんに挨拶もできない先生がいるんだよ」とのお嘆きを耳にすることが多くなったことから、今回は、「心・技・体」の精神で日々の診療に取り組んでいるお話を伺わせて頂きました。
医療法人雅桜会 根津歯科医院 根津 雅彦 理事長
プロフィール
- 1972年 埼玉県草加市生まれ
- 1988年 明治大学付属中野中学 卒業
- 1991年 明治大学附属中野高校 卒業
- 1997年 北海道医療大学歯学部 卒業 同年 日本歯科大学歯周病学教室 入局
- 1999年 日本医科大学千葉北総病院 歯科嘱託医 同年 足立区吉田歯科医院 副院長
- 2001年 草加市にて根津歯科医院 開院
- 2004年 医療法人雅桜会 設立
開業に至るまで
先生が歯科医になられたきっかけを教えていただけますか?
私の頭の中には医師や歯科医師などになるという選択肢が高校3年生まではありませんでした。それまでは6歳から始めた柔道に没頭しており、中学1年から高校3年まで毎日寝る前に欠かさず腕立て300回を自分に課していました。ゆっくりやると30分以上かかります。そういう毎日を過ごしていたんです。
中学時代は東京都大会の個人戦第3位という好成績を残せたのですが、高校時代は減量にも苦しみ、思うような結果は得られず、柔道への限界を感じ始めていた頃、日本歯科大学教授の鴨井久一先生との運命の出会いがありました。この出会いにより、歯科大学へという選択肢が生まれ、北海道医療大学歯学部に推薦入試で飛び込むことになりました。
北海道での学生生活はいかがでしたか?
初めての北海道、初めての一人暮らしが始まり、辺り一面の銀世界に飛び込みました。寂しい毎日でしたが、2年生くらいから楽しくなり、程々の勉強と、柔道と、遊びに一生懸命でした(笑)。
卒業後から開業までのお話を聞かせてくだい。
卒業後は、鴨井先生のもとで4年間勉強させていただき、その後自信も芽生え、独立を決心しました。「さぁ!まずは場所選び!」と近所の不動産屋さんに相談に行きましたら、「駐車場になっている所があるから、そこでやってみる?」と言われ、立地条件は申し分ないところでしたので国民金融公庫から全額借り入れ、「根津歯科医院」をスタートさせました。28歳の春でした。
クリニックの経営
経営理念、治療の方針などお聞かせいただけますか?
患者さんに正直に接することです。患者さんの要望を受け入れ、満足のいくよう全力を尽くします。矯正治療やインプラントも多数症例を経験しました。人が人を治療するという基本を忘れず、今後も更なる治療、技術を取り入れ患者さんへアウトプットしていこうと考えています。
増患対策は、どのように行っていますか?
開業当初は、母と妹が医療事務の資格をとり、スタッフ3名からスタートしましたが、今では16名の大家族になりました。そのスタッフ一人一人のサービスが、増患に繋がっていると思います。また、常に最先端医療に取り組んでいます。
開業当初からホームページはありましたが、患者さんがそれを見て来ているとはあまり実感がありませんでした。でも、最近ホームページを見て、来院したという患者さんが結構いることに驚いています。あまり更新はしていませんが、もう少し情報を発信しようかなと思っています。
近日中には歯科用CTを導入する予定です。
スタッフの教育に関しては、どのようなことに留意されていますか?
やはり同じ職場で働くチームが仲良く、良い雰囲気でなければいけません。
特に挨拶と服装にはうるさく言っています。人の印象、医院の印象は第一印象で決まると思っています。「はい」という素直な心、「有難う」という感謝の心、「すみません」という反省の心、「私がします」という奉仕の心、「おかげさま」という謙虚な心、を教えています。また、北海道、山梨、箱根などの社員旅行をはじめ、食事会、格闘技観戦、マリンスポーツなどに全員参加し、交流、団結力を高めています。
希望者だけですがスタッフも、道場の練習に参加し、礼儀を学び、体操や受身などして、子どもたちとの触れ合いを楽しんでいます(笑)。
今後はどのような展開を考えていますか?
に最先端医療に取り組んで、患者様のニーズにあった治療をご提供していけるよう努力して行きたいと思います。特にインプラント・歯周病・床矯正に力を入れていきたいですね。
経営者はどうあるべきかお考えをお聞かせ下さい。
自分の言葉、言動、治療に責任を持つことですね。一つ一つの積み重ねで医院が活性化できれば良いと思います。院長は魅力ある人間でなければならず、自分に厳しくすることを心がけています。今後とも日々努力し、精進していこうと思います。 貴乃花親方は中学の同級生で、ずっと親しくしているのですが、第65代横綱に推挙されたときに「不惜身命」と言っていました。私はこの言葉こそ経営者にとって大切なことだと信じています。
柔道家として
先生が主宰されている柔道場について、教えていただけますか?
現在、練習生は幼稚園の子を含め24名います。子どもたちには柔道を通して様々な体験をさせてあげたいですね。一から教えた子どもたちが試合という舞台に立ち、勝敗に関わらず相手に立ち向かう勇姿には感動を覚えます。その感動は柔道場を開いて良かったと思う瞬間でもあり、胸が熱くなります。「スクールウォーズ」並みですよ。
子どもたちの明るく大きな挨拶の声に元気をもらった気がしました。
はい。道場に来て、大きな声で挨拶し、仲間同士で投げたり、投げられたりと切磋琢磨し、痛みや喜びを感じ、精神的にも肉体的にも強くなっていく姿はとても頼もしく思います。将来誰もが、両親、家族など、大切な人を守るために頑張らなくてはなりません。一対一で戦う武道を通して、礼節を重んじ、強く成長して、頑張る意味を身体に染み込ませて欲しいです。
貴乃花親方もよくいらっしゃるそうですね。
先日も稽古を覗いてくださり、現役時代の体験を交えて貴重なお話をしてくださいました。子どもたちにはとてもいい刺激になったのではないかと思います。
そういう私も柔道を通して、先輩の格闘家小川直也さん、吉田秀彦さん、菊田早苗さんなどの有名な方々と接する機会に恵まれて、たくさんの刺激を受けることができました。子どもたちにも様々な出会いから、大きな夢を持ってもらいたいと思います。