歯科経営者に聴く - スマイルライン歯科クリニック 吉田毅理事

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック 吉田 毅 理事長

今月紹介する医療法人社団 鏡会 スマイルライン歯科クリニックはグループが熊本県内4ケ所展開するクリニックの1つで吉田毅理事長自ら、実験施設と呼び、多種にわたる診療経営を追求されている。
当院は、熊本県菊池郡の大型商業施設ショッピングモールゆめタウン光の森店内1Fにあり、最寄駅はJR九州光の森駅で熊本市内から車で10分程度の位置にある。院内はプロのデザイナーによる美容院・エステ風な女性志向の豪華な作りが印象深い。当グループ鏡会の経営目的も、患者様及び、パートナーから「あなたに会えて良かった」と言ってもらえる歯科医院作りであり、スタッフ全員が一丸となって取組んでいる姿勢、活気に満ち溢れた雰囲気が漂うクリニックである。

医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック 吉田毅 理事長

医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック 吉田 毅 理事長

プロフィール

  • 1961年福岡県北九州市生まれ。
  • 1988年福岡県立九州歯科大学卒業、沖縄県の山川歯科医院に勤務、1991年熊本市のホワイト歯科医院勤務後、1995年1月熊本県八代市にて鏡歯科医院を開設する。
  • 1996年3月(医)鏡会 鏡歯科医院の法人開設、1998年6月(医)鏡会クレア歯科医院開設、 1999年7月(医) 鏡会 城歯科医院開設、2004年6月(医)鏡会スマイルライン歯科クリニック開設、現在に至る。

開業に至るまで

開業までのエピソードをお聞かせ下さい。

医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック「学生時代に漠然と無医村診療に興味を持ち、沖縄=無医村という軽い気持ちで沖縄を選択肢の一つと考え、歯科雑誌で『医道・仁愛』という言葉に惹かれ山川歯科医院に連絡を取り面接を依頼しました。山川理事長と面接を行なう中で、雑誌で見た言葉の意味を尋ね、『医の道は算術ではなく、人(患者様)を愛する気持ちで接することである』という事を知り、その言葉に憧れて入職を決めました。」

「当時の山川歯科医院は指導医が多数在籍する、県内でも知名度および技術力の高い歯科医院ということを入職した後で知り、突然、大学病院の医局に入った雰囲気があり、常に緊張の連続でした。私は、この医院が患者数1日120名前後と多いこともあり、自然と症例数が増え、質(総義歯からインプラント歯科技術)と量(多くの患者様を診る技術)を同時に学べた医院だったと思います。」

「移転先の医院は、偶然にも山川歯科医院で勤務経験があった先生が熊本市で開業された医院でした。ここで2年くらいたった頃に以前から持ち続けていた開業を決断し、沖縄勤務医時代から貯めた自己資金もとに資金調達を始めました。当時、銀行の審査が歯科医院に対して既に厳しくなっていましたが、詳細な事業計画に信用を戴き1億円の融資を受けることができたので、自己資金は一切使わずに開業に至りました。開業地区を熊本県八代市に決めた理由はアドバイスしてくれる知人も多く、競合歯科医院も少ないという点でした。建物もデザイナーに依頼し、外観から内装に至るまで癒しに空間の雰囲気をイメージして建てました。開業当初から1日30人と順調なスタートがきれ、3ヶ月後には60名を超える状況になりました。」

「スタッフ求人に関しては、求人雑誌にて都市部の給与基準で募集をかけ、多くの人材を集めることは出来たのですが・・・」

3年目の転機 ここまでは順調に来られたようにみえますが、3年目にどの様な事があったのですか?

医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック「3年間、人の意見には耳を貸さず自信過剰で突っ走る中で、熊本県では初めての僻地往診チームを編成し、依頼があればどこまでも行くという方針を貫きました。 また自由診療では価格破壊等も行い、売上は常に右肩上がりで、開業3年目にして、3軒の歯科医院を開設しました。当時は歯科医師として複数の医院を持つことが成功した証であり、ステータスだと錯覚していました。この錯覚が価値観の低さとは気付いてはいなかった。」

「しかし、医院は拡大していく一方で、スタッフとコミュニケーション不足から人間関係は崩れ、院内には疲れや無気力なムードが漂う状態。私が気付くと誰もついて来ておらず、孤立した存在だった。また、悪いことが重なり、体調を壊し6ヶ月間入院することになった。医院の運営は副院長に任せて治療に専念致しました。入院して3ヶ月後にグループ始まって以来、最高の売上(前年比130%)を記録致しました。この事実を知った時、自分がいなければ何も出来ないと思っていた、ワンマン経営者だった私は信じられない面持ちでした。副院長は人の話を良く聞き、コーチングを体得しており、私とは正反対の人間でした。副院長に運営を任せた期間、医師とスッタフ間のコミュニケーションが取れ、従業員一人一人が、患者様・スタッフに対し表面的ではなく、心の底から笑顔が出るなど、医院の雰囲気が激変しまた、院内に活気が溢れていることが、過去最高の売上と言う結果に繋がったと感じました。」

「私は退院後、人の話を聴かないことの弊害を痛感すると同時に、人の話を相手の立場に立って相手の気持ちになって聴くことがいかに大切かと学びました。 無事に体調が回復し、私が初めに取った行動は、スタッフとの信頼関係の構築を目的としました。医療技術の勉強だけではなく、考え方の勉強の必要性をスタッフに伝え一緒に勉強して欲しいと相談しました。そうしてこの年から経営人間学を学び始めました。経営人間学で学んだ大切なことに『相手の立場に立ち、相手の気持ちになり、相手の心になり素直な心で素直に聴くこと!』これを今でも座右の銘としております。」

経営理念

鏡会の経営理念をお伺いできますか?

「開設当時は、『歯科医療を通して社会貢献することでパートナーも患者様も物心ともに豊かになろう』という経営理念を基に始めたが、経済的には豊かになってもスタッフとの意思疎通がうまくいかず、心は全く豊かにはならなかった。そこで私は経営理念の変更に取り掛かった。現在、当グループでは時代の変化に伴い5年に1度経営理念の見直しを行い、医療業界の変化に対応できる医院を目指しています。

新経営理念
1.『 UNIVERSAL INTEGARATION  -  普遍的統合 』

あらゆる立場の異なる相互の出逢いを通し、新たな自己を創発し、真の共存と調和をもたらすことで新しい価値を創造する。
2.『社会に貢献できる人材育成』
を掲げ、新生 医療法人社団鏡会をスタートさせました。」

「現在、当グループではスタッフの成長・学習の場として、ワークアウトを取り入れている。ワークアウトとは、かつてGEのジャック・ウェルチ氏が1988年に提起した概念であり、できる限り現場に近いところへ問題解決と業務改善をエンパワーメント(権限委譲)し、迅速かつ集中的に意思決定するためのプロセスのことです。」

「ワークアウトを行なう日は診療を休診しチーム制で行なっています。10チームに分かれており、役職・年齢関係なくフラットでのディスカッションを行い、この中で院内の改善点に基づき各チームが目標を設定しアクションプランを作成後、プレゼンを行ないます。理事長の了承後実行し、そのプランが医院に対してどれだけの経済効果を生むのか、どれほど医療技術が進歩したのか、患者様の顧客満足度が上がったのかを競います。成功事例があれば全グループとして実行します。失敗しても、反省点を理解した上で次回の教訓に活かします。スタッフ一人一人が経営者の立場に立ち、医院を運営しているという自覚を持たせることがモチベーション向上の一因になっています。結果、スタッフのモチベーションが高く定着率が良く結婚・出産以外で退職するスタッフはほとんどいなくなりました。」

「ドクターも例外ではなく、ワークアウトによって歯科技術の向上はもちろんですが、
人としての価値観の向上がスタッフ・家族と良い関係を築いています。勤務医の奥様からも「主人が人の話を良く聞くようになり、家庭が円満になった」という声も聞いております。ワークアウトを始めた頃は、半分のスタッフしか参加していなかったが、現在では、自由参加にも関わらず全員参加にまで成長し、参加しなければ明日から医院で何をしてよいのか分からないという所までワークアウトが浸透しています。
まさに『継続は力なり』です。」

スタッフ・オリジナルアクション

医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック「ワークアウトを活用し、全スタッフ一丸となり、経営者の立場でさまざまなアイディアを出し、まず実行しています。患者様に好評だった企画の一つに、コアラキャンペーンと題し、医院のマスコットキャラクターの名前を公募し、名付け親になって頂くキャンペーンで決定した名前は当グループのホームページで発表するというもので、患者様とのコミュニケーションの一環となり、口コミによるホームページの検索数アップにつながりました。これは20歳の歯科衛生士の発案から始まったキャンペーンで誰でもアイディアを出せば、各チームで垣根なくディスカッションし、より良いアイディアとなれば実行します。」

「もう一つは、熊本県で毎日オンエアーされるラジオ番組です。番組は当グループのドクターが医療とは関係のない歴史というジャンルでパーソナリティーを努めています。
患者様に愛され、期待されているラジオ番組の継続を望むスタッフ個々の意思を尊重しています。」

「これらの事が患者様とのコミュニケーションの話題となり、患者様とスタッフの会話が生まれ、患者様と医院の垣根が低くなることで患者様の定着率増という形に現れ、その患者様から友人・知人へ口コミとなり、結果的に増患に繋がっております。
また、スタッフが勤務している医院を愛し信頼することで、自信を持って友人・知人に推薦できる医院に到達することが出来ました。」

将来の目標と展開

最後に将来の目標とこれからの展開をお聞かせ下さい。

医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック 全くの初診患者さん(新患)は、年間1500~1800人程来院していただいていますが、実のところ増患対「当グループは組織学習体の状態にあり、スタッフの成長に関しましてはワクワクしております。今私はコンサルティングに専念しており、依頼があれば他院の経営の再構築を行なっております。
現在自身のグループ以外に常に複数の歯科医院をコンサルティングしております。私は一生涯経営人間学を追求・伝達し、今後展開する独立支援(共同体推進)と当グループの発展に努めていきます。」

プライベート

理事長のプライベート:いまも仕事が一番の楽しみだとおっしゃる。(仕事とプライベートの公私混同)
家族構成:妻、子供3人
趣味:読書

タイムスケジュール

  • 医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック 吉田毅 理事長 タイムスケジュール
  • 医療法人社団鏡会 スマイルライン歯科クリニック平面図