歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~
エルアージュ歯科クリニックの加藤俊夫理事長
「開業医はオールラウンドプレイヤー」とおっしゃる笑顔が、大変さわやかな加藤先生の「エルーアジュ歯科」に本日はお伺いいたしました。東京都の中央に位置する文京区の都営地下鉄春日駅から徒歩3分に位置し、歯科医院の乱立が話題に上る昨今、着実に新患を増やしている医院です。その秘密は冒頭の加藤先生のお考えが、「エルアージュ歯科」全体や、スタッフ一同にまで浸透されています。
本日はそんな歯科経営に関する加藤先生のお考えをお聞きしました。
医療法人社団わかばの会 エルアージュ歯科クリニック 加藤俊夫 理事長
はじめに、そもそも歯科医を目指した理由は?
実家は台東区の薬局で、父が薬剤師でした。幼いころから薬の効能とか処方を聞いて興味を持ちました。また当時のアメリカのTVドラマ「外科医ギャノン」にも感動して小学校のころから医学関係に興味を持ち始めようになりました。学校の得意科目はもちろん理系でした。
また、中学、高校時代は囲碁部で活躍しました。これも父の影響で始めました。夕食の後はいつも父と囲碁を打っていました。都立江北高校では囲碁の高校全国大会で団体3位になりました。このときの布石の仕方や、大局の見方が後の歯科医院経営に影響しているのではないでしょうか。
大学受験において医学部ではなく、歯学部を目指した理由としては、当時、医師はインターン制の影響が強く、すぐにお金を稼げないという印象がありました。それに比べ歯科医は大学卒業と同時にバリバリ稼げると聞いて、実家の家計を考えて、迷わず歯科を選びました。
昭和大学に入学してからは、ゴルフに打ち込みましたが、開業してからは、忙しくて年に一度くらいですね。大学を卒業してから、まずは自立して稼ぎたいと考え、給与が一番高い医院の勤務医を選びました。当時、腕には自身があって、いきなり担当を与えられて、がんばりました。
開業時のご苦労などありましたら?
平成13年開業しましたが、当初は、資金繰りがやはり大変でした。薬局を経営していた兄には世話になりました。しかし、スタッフに関する苦労は全くありませんでした。勤務時代のスタッフが応援してくれて、特に募集もせず開業できました。ジェネラルマネージャーの兼目(けんもく)とは15年の付き合いです。したがって、私の治療方針、考え方、すべて理解してくれて、また、実践もしてくれて、助かっています。大変ありがたい存在です。
開業するにあたって、どのような医院を目指しましたか?
4件程の医院での勤務医経験のあと、現在の「エルアージュ歯科」を開業しました。
勤務医経験から、開業するにあたっての哲学として、「開業医はオールラウンドプレーヤー」を目指しました。もちろん専門を極めることも大切ですが、専門分野しか出来ないというのを開業医ではありません。なぜなら開業医の医院にはいろいろな患者様がいらっしゃるからです。もちろん大病院や大学病院では専門医は必要ですけど。
また、診療時には「個々の患者の満足度を最優先。」そのことを中心に考えてきました。
「自分自身の哲学としての診療方針を持たない。」ことをポリシーとしてきました。
もちろん診療方針がないというのではなく、「患者様、各々の個性に合わせた診療方針を提供していく。」ことが大切だと考えています。
具体的には、まず新しい患者様とは話をします。患者様のタイプには、「こわがり」、「いたがり」、「せっかちな人」、「説明を必要とする人」、「必要としない人」「世間話が好きな人」「嫌いな人」……………初診の段階で、それぞれの患者さまの特徴をつかんで、その患者様が求めているもの把握して治療を開始していきます。企業の「顧客満足度」の追及に通じるところもありますね。どちらかというと、治療の内容より患者様がどうしたら満足してくれるかばかり考えていました。
ハード面として、医院に関するお考えはございましたか?
医院の内装は医療施設らしくない歯科医院を目指しました。
具体的には、美容院を理想としました。一見、女性をターゲットとしているみたいですが、男性にも好評でした。また、スリッパを廃止しました。医院内を清潔に保つ為のスリッパですが、近年は欧米並みに、他人のはいたスリッパ自体が不潔という考えが広まり、患者様には好評を得ています。
これらのソフト面、ハード面の先生のお考えが新患の訪問につながってる訳ですね。
そうですね。その結果が新しい患者様に訪問につながっています。
うちは、駅構内や、電信柱に医院の広告看板も行ってなく、ホームページ以外の広告費は一切かけてません。したがって、患者様が集まる理由は口コミらしいですね。
将来的にどのような医院を目指しますか?
欧米みたいに健診主体の診療を行いたいですね。個々の患者と信頼関係を保つホームドクターになりたいと考えています。また、日本人の歯の質を欧米並みに上げたいです。予防を充実させることが患者様の為になると考えております。
そのためには、患者様、それぞれの個性に合わせた診療方針を提供していくことをスタッフ一人一人が大切に考えて、患者様と接していくことが重要です。
そこで衛生士に求める能力も重要になるわけですね。
単なる歯科のスキルではなく、患者様とお話が出来て、お話が聞けて、その方その方の個性や要望を見極める能力をもった方を探しています。つまり、心のケアができる人です。
歯科医に直接言いに難いことを、抵抗なく話せるパイプ役みたいなスタッフを募集します。
技術は練習すればすぐ上達します。しかし患者様への対応は、思いやりの心や、患者様満足度第一主義の考えがないと出来ません。
それには面接重視で採用をします。私のお話の中で、私が何を言いたいのか、何を伝えたいのかが見極められる方を求めています。幸いにも今のスタッフは私の考えを理解して実行してくれていますので、この中で仕事をしていけば、新卒の方でもきっと身についてくるでしょう。
「エルアージュ歯科」は加藤先生の「個々の患者の満足度が最優先」という考えがスタッフ一同に伝わっている医院で、増々新患が増えていく歯科医院のひとつだと取材スタッフは感じました。