歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~
高輪レジデンスデンタルクリニック 山口朝久 先生
独立開業時の平均年齢は何歳くらいなのか明確なデータはないようだが、20歳代でとなるとかなり大変であることは容易に推測される。
今回訪問した高輪レジデンスデンタルクリニックの山口朝久先生は、東京医科歯科大学のご出身で、20歳台の若さで東京都新宿区にある本院を開院され、本年3月分院として同クリニックを開院したばかりの、まだ30歳前半という若手の先生である。
高輪レジデンスデンタルクリニックは、東京都内では屈指の高級住宅街の1つである高輪の高級マンションの1階にあり、最寄駅の地下鉄白金台駅から徒歩5分という絶好のローケーションにある。
最近は、新宿区内の本院よりこちらの分院である高輪レジデンスデンタルクリニックにおられる日が多いということで、今般、同クリニックにてインタビューの機会を頂いた。
高輪レジデンスデンタルクリニック 山口朝久 先生
まず、歯科医を目指そうと思った動機は何でしょうか?
「身内に歯科関係者はいませんでした。大学が、『実家(東京都足立区)から近かった。』、『国立だった。』、のが一番大きな理由なのですが・・・(笑)。ただ、親戚に歯の丈夫な人がいて長生きをしましたので、歯の健康な人は体も健康なのだと思い、そんな歯の健康に関わりたいと思いました。実際、歯科医となって、体の健康に歯は充分影響していると思います。」
どのような学生時代をお過ごしになられましたか?
「大学に入って5月病というわけではないと思いますが、当初の通常の授業にはやや絶望し、アルバイトばかりしていた時期もありましたが・・・(笑)。
しかし、大学で教養課程が終了して学部に入って、しかも『解剖』に入った瞬間から目が覚めました。東京医科歯科大学は歯学部も人体解剖をしましたので、かなりのカルチャーショックを受け、それから勉学に勤しむようになりました。」
卒業後はどうなされましたか?
「大学院へ行こうかとも考えましたが、家庭の事情もあり、大学OBのベテラン開業医のところに半年間勤めました。ここでは臨床という世界の『洗礼』を受け、OBの先生より『診療姿勢と臨床の基本』を学びました。
その後、将来の開業を視野に、医科歯科大OBではない2つの開業医に計2年半ほどいましたが、いろんな意味で楽しく、また、いろいろと勉強をすることができました。」
開業されたときの様子はいかがでしたでしょうか?
「28歳の時、私の姉の知り合い経由で新宿の方で開業しないかとの話が出てきました。勤務医も面白かったので『もう少し待っても・・・』と話が来て3ヶ月ほど悩みましたが、資金面も都合がついたこともあり、『いずれは独立するのだから・・・』と開業を決断した次第です。スタッフは幸いなことに求人誌の広告で予想以上にいい人材を集めることができました。『新宿』という場所がよかったのでしょうね。その後、若干の紆余曲折はあったものの患者数もほぼ予想通りに増加していきました。」
こちらの分院、高輪レジデンスデンタルクリニックを開院されましたきっかけなどお聞かせ願えますか?
「新宿の医院の近くにあった懇意にしていました企業が移転してしまい、役員以下その企業の関係者が多数を占めていた患者数が激減しまった関係で、医院運営に影響が出てまいりました。ここは立地条件がいいと思っていましたが、『実のところ、あんまり良くなかったのでは・・・』とはたと気付いて、急遽移転先を探していましたところ、金融機関経由でここ高輪にたどり着きました。既存の歯科医院が周囲にかなりありましたし、他に手を挙げた歯科医院もあってかなりの競争になりましたが、熟考した結果開院を決断しました。ただ、当初新宿の本院そのものを移転するつもりでしたが、幸いなことに新宿の方も、移転した会社の跡に新しい会社が来て多少持ち直すことができました関係で、『分院』開院となった訳です。それでも、新宿の本院移転は絶えず考えておりますが・・・(笑)。
高輪の方の患者数は予想よりはやや少なめですが、それでも東京都区内の一般医院よりは患者数は多いはずですし、かなり裕福な層が居住しているせいでしょうか一患者あたりの売上げ単価は大変高く、今後は順調に運営できそうです。」
日々の診療方針について常々お考えになられていることはございますか?
「患者さんのニーズに全て応えられることを最低条件にして、患者さんの期待以上のことをしてみせることを心がけております。よく患者さんが言われることですが、歯科医から治療を無理に薦められて『やられた。』とか『やられてしまった。』とかそういうことを言われてしまうのを耳にしますね。私はお金を払ってもらった患者さんからは『やってよかった。』とか『やってもらった。』とか患者さんが納得した上で感謝の言葉をもらえるような治療を施すのが私の治療方針です。」
スタッフに日々指導していることはなにかございますか?
「当たり前なのですが、常に清潔にすることを命じており、とにかく患者さんに『埃を見つけられるな。』と指導しています。基本の基本なのですけど意外に難しいですね。当院は内装の関係で些細な埃も目立ちます。
それと、これも当たり前なのですが、患者さんの話を途中で遮ることなく一から十まで最後まで聞くことも言っております。忙しい時はなかなか『聞けない。』ものなのですが、それでも、『聞きなさい。』なのです。患者さんが言ったことをこちらが理解すれば、こちらが言うことも患者さんは理解します。こちらの言うことを聞かせるのではなく、聞いてあげる、即ち、聞き上手になることですね。」
最後に、今後の目標や人材募集についてお聞かせ願えますか?
「勿論条件次第ですが、いいところがあればまたどこかで開院したいですね。地域的には私が行けるところ、首都圏内でしたらと思っております。その際、私が求める水準で、若いドクターを募りたいですね。その水準とは少なくとも、『患者の話を聞ける方』『最低限の治療の知識を持っている方』ですね。」
にこやかにまた時折ユーモアも交えて終始なごやかな雰囲気のなかでインタビューをさせていただいた最後に、「うちに来るまでは笑えなくて口を隠していた患者さんが、『安心して笑えるようなった。』と感謝された時は『歯科医になって良かった。』と思いましたね。」との言葉に取材スタッフは強い感銘を受けインタビューを終了した。