歯科経営者に聴く - 歯科オーラルクリニックエクラ 小出 理事長(前編)

歯科経営者に聴く(前編)

~第一線で活躍する院長・理事長から学ぶ~

歯科オーラルクリニックエクラ 外観

 愛知県日進市岩崎町に位置する歯科オーラルクリニック エクラは、落ち着いた環境の中にある歯科医院である。自然を感じられる庭のような空間を設け、歯科医院らしさを感じさせない、安心して通える雰囲気づくりを大切にしている。
診療では予防歯科に力を入れ、歯科医師や歯科衛生士、管理栄養士などが連携しながら、口腔内の健康を支えている。
 今回は、今月と来月の2回にわたり、歯科オーラルクリニック エクラの診療に込めた想いや医院づくりの背景、スタッフとのチーム医療への考え方、そしてこれから見据える歯科医療の未来について、理事長・小出先生にお話を伺った。

小出 貴照 理事長

医療法人エクラ会 歯科オーラルクリニックエクラ 小出 貴照 理事長

【プロフィール】

  • 1978年 愛知県 生まれ
  • 2003年 明海大学歯学部 卒業
  • 卒業後 大手医療法人スワン会 入局
  • 大手医療法人スワン会 院長就任 その後顧問就任
  • 2016年 エクラ会開業

【開業に至るまで】

歯科医師を目指されたきっかけについて教えてください。

もともと図工やものづくりといった、細かい作業が好きだったというのがあります。ただ、最初から歯科に進みたいと決めていたわけではなく、親から勧められたこともきっかけの一つです。専門職として社会に役立てる仕事として、歯科医療を勧めてもらい、高校3年生のときに医療の道へ進むことを決めました。

理事長が卒業後の勤務先を選ばれたポイントを教えてください。また、そこでどんなことを学ばれましたか。

もともとは大学で口腔外科を志望していて、口腔外科の道に進もうと思っていました。ただ、それだけではいけないなとも感じていました。そんなとき、当時、スワン会がインプラント治療を広めていたこともあり、愛知県に戻るにあたって親が調べてくれていたんです。「大手法人でしっかり研鑽を積むのがいいのではないか」とアドバイスをもらったことがきっかけで、スワン会に入社しました。

本当にいろいろなことを学ぶことができました。特にインプラント治療について学べたことに加え、入社から2年半ほどで、最年少で院長を任せていただきました。インプラント治療の研鑽を積ませてもらったほか、厚生労働省の歯科医師臨床研修指導医の資格取得や若手の教育にも携わり、経営にも参加しました。さまざまな経験をさせてもらい、多くのことを学んだ上で開業に至ったという形です。

開業しようと決断した時期、いきさつはどんなことでしょうか。

一番のきっかけは、2014年に母親が62歳で亡くなったことです。

母を亡くしてショックを受けていた父を安心させたい、何か親孝行をしたいという思いがあり、一緒に仕事ができる環境をつくっていきたいと考えました。

そこで、2014年に院長を退き、顧問に就任させてもらいました。その後、2年間かけて後輩への引き継ぎを行い、2016年に38歳で開業しました。父には事務長として手伝ってもらっています。

開業場所を決めるにあたり、どのようなポイントを重視しましたか。

自分が生まれ育った地元であることが大きな理由です。

医院名の「エクラ」には、葉っぱのモチーフを取り入れています。もともとこの場所には大きなクスノキがあり、木々が茂る森が広がっていました。道路の半分くらいまで森が広がっていて、行政からも早く木を切るように言われていた場所なんです。

2016年に開業するにあたり、実家にも近いこの場所で、自分がこれまで経験してきたことを生かし、日進市に貢献していきたいという思いがありました。そこで、庭園風に整備し、「歯医者っぽくない、安心して通える空間」を目指してつくりました。

【理念・治療スタイル】

経営理念や診療方針を教えて下さい。

私は「歯医者は破壊者」だと思っていて……。歯を削ったり、治療を繰り返したりすればするほど、お口の中は崩壊に向かっていくじゃないですか。

大学時代には、「なぜこれほど多くの人が歯の悩みを抱えているのか」ということをテーマに研究していました。その中で興味を持ったのが「予防」だったんです。

虫歯や歯周病をどうすれば防げるのか。また、治療をせずに放置すると、口腔内の問題が全身にも関係してくることが分かってきています。

お口の健康は全身の健康にも影響するので、我々歯科医師が窓口となり、口腔内の崩壊を防いでいきたいと考えています。

0歳から、そしてこれから生まれてくる子どもたちにも、同じような運命をたどってほしくありません。そのため、歯科医師や歯科衛生士、管理栄養士がチームとなり、当院でも病気にならないための情報発信をしながら、予防教育に取り組んでいます。

歯周病は生活習慣とも関係するため、問診では食生活や生活習慣を確認しています。病気にならないための予防はもちろん、病気になった後のフォローもしっかり行い、健康寿命を延ばしていくことが大切だと考えています。

厚生労働省も示しているように、口腔内の状態が安定すれば、医療費の削減や病気の減少にもつながります。

口腔内の健康を預かる立場として、治療だけでなく、予防教育も行う医療施設をつくりたいと考えています。その一環として、今年の10月31日には、隣に「口腔機能栄養棟(予防教育棟)」を増設し、より手厚く管理できる設備を整える予定です。

他の医院との差別化するために工夫している点をお聞かせください。

差別化というと少し違うかもしれませんが、予防歯科を基本の診療として取り組んでいます。ただ、予防歯科は、他院との差別化を本来の目的とするものではなく、歯科医療全体で大切にしていきたい取り組みだと考えています。その重要性がさらに広く認識され、一つでも多くの歯科医院で予防歯科が根付いていけば嬉しく思います。

当院では、予防教育自体は保険適用外の付加価値として提供しています。利益を目的とするのではなく、単に治療して終わりにするのではなく、プラスアルファとして予防教育を受けてもらい、患者さん自身が自宅で正しくケアできるように指導しています。

また、検診の際には、きちんとケアできている部分を褒めることで、モチベーションを高めてもらい、自分のお口の健康を自分で守るということを大切にしています。なるべく通院しなくても済むように、状態が悪いところがあれば、正しい情報を伝えるようにしています。自分でしっかりケアすれば改善できることを伝え、次に来院されたときに良くなっていれば、そのことを褒める。そうしたことを繰り返していきます。歯科疾患は、自分自身で予防できる部分が大きいものです。歯医者さんが治療してくれるから大丈夫、ということではなく、自分たちで取り組めば自分たちのお口の健康を守れる。あくまでも我々はそのサポート役だという気持ちで取り組んでいます。

今後、医院として力を入れていきたい分野はありますか。

歯科における予防医療に力を入れていきたいと考えています。

当院は歯科医師や歯科衛生士だけでなく、管理栄養士、保育士、看護師など、さまざまな専門職がいます。口腔内の健康を預かる立場として、それぞれの専門性を生かしながら、しっかりと教育に取り組んでいきたいです。

治療が必要な患者さんに対しては、全力で治療を行います。また、虫歯や歯周病に加え、歯ぎしりや食いしばり、顎関節症なども、噛む力に関係する問題です。そのため、虫歯・歯周病・力のコントロールをあわせて考え、対応しています。

マウスピース療法だけでなく、筋膜リリースやTCHへの対応などにも取り組んでいます。歯科衛生士にも関連する知識や技術を教育し、筋肉を緩める施術や、ボトックス注射による筋肉の調整も行っています。

また、来年3月から4月にかけては、2階に美容ゾーンをオープンする予定です。ホワイトニングサロンやリップアートなどを展開し、併設する美容外科とも連携しながら、口元の美しさをサポートしていきたいと考えています。

そして、0歳から100歳まで、自分の歯で食べられることが理想です。一方で、通院が困難になった方のもとへ訪問し、口腔ケアや誤嚥性肺炎の予防を行う訪問歯科の体制も強化しています。

続きは、12/1公開の後編で!