歯科経営者に聴く(後編)
~第一線で活躍する理事長から学ぶ~
千葉県流山市は「都心から一番近い森のまち」と謳うように、つくばエクスプレスの開業により、都心まで20分のアクセスとなった住宅都市である。
マーブルファミリー歯科クリニックは東武アーバンパークライン運河駅から徒歩8分の商業施設の一角に2016年に開業した歯科医院で、カウンセリングを重視した歯科医療を行っている。
今月は先月に引き続き、マーブルファミリー歯科クリニックの笹本祐馬院長にお話を伺った。
マーブルファミリー歯科クリニック 笹本 祐馬 院長
【プロフィール】
- 1984年千葉県 生まれ
- 2009年日本大学松戸歯学部 卒業
- 2009年医療法人東京勤労者医療会 東葛病院 勤務
- 2009年社会福祉法人わかくさ会 かやの木保育園嘱託医 兼任
- 2016年マーブルファミリー歯科クリニック 開院
- 2019年日本大学大学院松戸歯学研究科 入学
【学会】
- 日本口腔インプラント学会認定専修医
- 日本外傷歯学会認定医・評議員
- 日本歯内療法学会会員
経営理念
経営理念をお聞かせください。
「患者さんからいつも愛され、頼られる歯科医院でありたい」ということです。痛みを取って歯や病気を治すのは当然ですが、私どもでの歯科医療が患者さんの人生を好転させるきっかけになればと願っています。インプラントを入れると、患者さんの表情はガラッと変わります。お肉を食べられるようになったり、入れ歯では恥ずかしいからと諦めていた旅行に行けたり、自分に自信が持てるようになって結婚した方もいらっしゃいます。歯科医療にはそんな力があり、そういう瞬間に触れることができるのは歯科医師としての喜びですし、お安くもないお金を払っていただいたうえに「ありがとうございます」と言われるのもすごいことだと思います。
診療方針
診療方針をお聞かせください。
重視しているのはカウンセリング、保存治療、治療よりも予防です。私のインプラントと副院長の保存治療が二枚看板です。しかし、私自身はインプラント専門医ではありますが、歯科医師としては予防に力を入れるべきだと考えています。そのため、歯科衛生士も6人、勤務しています。病気にならないよう予防して、それから保存治療をして、それで駄目ならインプラントで希望を与えるという流れですね。
患者さんの層はいかがですか。
全ての世代の方に来院いただいています。午前中は高齢者の方、お子さんが幼稚園や学校に行ったあとのお母さん、午後の早い時間からは幼稚園児、それから夕方にかけては保育園児、小学生、夕方から夜にかけては中学生、高校生、夜間になるとお勤め帰りの方々というように、時間帯で年齢層が違います。
自費と保険の割合について、お聞かせください。
自費診療が3、保険診療が7の割合です。自費診療にはそこまでこだわりがないので、私としては納得している割合です。
増患対策
どのような増患対策を行っていらっしゃいますか。
ホームページぐらいで、ほかは何も宣伝していません。スーパーには1日4000人ほどの来客数があるそうですから、スーパーのあるショッピングモールで開業していること自体が宣伝だと思っています。院内で何かイベントをするときはスーパーの掲示板で告知させていただいています。ショッピングモールは駐車場が無料なのも有り難いですね。患者さんだけでなく、スタッフも車で通勤しやすいと喜んでいます。
スタッフ教育
スタッフ教育について、お聞かせください。
歯科医師としての技術があることは当たり前ですが、最高の材料や技術を使って提供した診療が満足されないこともあります。私がインプラント専門医だからと言って、いきなり患者さんに「インプラントにしますよね」と決めつけるのは失礼です。そうした自己満足の治療は良くないので、一人でも多くの患者さんを幸せにするようにと言っています。お蔭様で多くの患者さんに来ていただいているので、かなり忙しいのですが、きちんと情報をお出しし、その中から患者さんに選んでいただくことが大切です。そのためには5分であっても十分なコミュニケーションを取ることを指導しています。
歯科衛生士、歯科助手への教育はいかがですか。
私どもでは予防歯科に力を入れているので、歯科衛生士教育は必要です。20歳そこそこの歯科衛生士が高齢の患者さんとうまく話せないのは分かりますが、予防歯科の患者さんは勤務医よりも歯科衛生士を求めていますし、歯科医師は最後に確認に行く人に過ぎませんから、歯科衛生士にも歯科医師同様、ケアすることに加え、きちんとコミュニケーションを取ろうと言っています。趣味やご家族など、どんな患者さんなのかを言えないといけません。記憶力も大事ですが、患者さんに関心を持つことです。最近は「流行る歯医者さんの条件」というテーマで、歯科衛生士に30分の講演をさせました。こうした経験を通して、ブラッシュアップしてほしいです。また、私が所属していたアメフト部では食事会後の「ご馳走さまでした」などの挨拶が徹底されていたので、私どもでも同じように整列方式での挨拶をしたりしています(笑)。
今後の展開
今後の展開について、お聞かせください。
2019年6月から訪問診療を始めました。これからは訪問歯科にも傾注していきます。高齢になると舌の動きが悪化し、それが飲み込みに直結するというオーラルフレイルが起きてきます。そこで、舌の訓練や飲み込み時の筋力向上などのオーラルリハビリを行うことで、全身のフレイルを予防できるのです。こうした話を2019年10月に行われた国際抗老化再生医療学会で講演させていただいたのですが、今後はクリーニングのみならず、どういうリハビリが必要なのかを理解できる歯科医師が生き残ると考えています。
開業に向けてのアドバイス
開業に向けてのアドバイスをお願いします。
歯科業界は過当競争で厳しい状況にあると言われています。私どもの開業後にも近くに2軒の歯科医院が開業しました。しかし、きちんと患者さんと付き合って、ニーズに沿っていれば悲観することはありません。患者さんは歯科医師の技量を見分けることはなかなかできないので、開業にあたって重要視すべきは立地と演出力です。演出力とは共感力でもあります。人は幸せになれる場所に行きたいのです。患者さんには必ず笑顔で接し、ユーモア精神を持って、最後に楽しい話をして帰っていただくようにしましょう。
プライベート
プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。
自動車を買い替えたいと思っているので、最近の趣味は自動車屋さんで試乗することです。一流の自動車に乗って、一流の空間に身をおいていると、スイッチが入ります(笑)。
タイムスケジュール