歯科経営者に聴く(前編)~第一線で活躍する理事長から学ぶ~
医療法人 敬愛会 やまぐち歯科 山口 敬士 理事長 (前編)
大阪府貝塚市は貝塚御坊願泉寺の寺内町として発展してきた。現在も名所旧跡が多く、高おがみ神社としても知られる脇浜戎大社は今宮戎や西宮戎と並んで、十日えびすで賑わっている。
やまぐち歯科は脇浜戎大社の近くに2014年に開業した歯科医院であり、「長持ちする治療」、「患者さん本位の治療」をコンセプトに地域医療に貢献している。
今月と来月の2回にわたり、やまぐち歯科の山口敬士院長にお話を伺う。
医療法人 敬愛会 やまぐち歯科 山口 敬士 理事長
【プロフィール】
山口 敬士 理事長
1982年 大阪府 生まれ
2006年 鹿児島大学 卒業
2007年 赤野歯科(現 赤野歯科クリニック) 勤務
2008年 松田歯科クリニック 勤務
2014年 やまぐち歯科 開設
2016年 医療法人敬愛会 設立
歯科医になったきっかけ
歯科医師になられたきっかけを教えてください。
叔父が歯科医師で小学校の校医をしていたのですが、その叔父のところへ遊びに行っては技工室に入って、模型を触ったりしていたのがきっかけです。子どもの頃から手先が器用で、図工が好きだったこともあって、歯科医師を目指すようになりました。
勤務医時代
勤務医時代について、教えてください。
私は2つの歯科医院で勤務しました。赤野歯科では技術や知識を、松田歯科クリニックでは経営を含めた全てを教えてもらいました。
最初に勤務した赤野歯科はペリオやインプラントに秀でた高名な先生が多く在籍し、日本最高レベルの治療技術を提供しているような歯科医院でした。自分で言うのも変ですが、私は昔から勉強もスポーツも要領良くこなすタイプで、赤野歯科に勤務する前の臨床研修中にはなるべく書籍を読んで、目一杯の知識を頭に詰め込んでいました。今思えば、当時の私は自信に満ち溢れていたのでしょうね。しかし、実際に勤務してみたら、知識を頭に叩き込んできたはずなのに手先が全く動かないし、手先がついてこないのです。こういう経験は生まれて初めてでしたね。知識はもちろんですが、その知識をどれだけ臨床に生かせるか、この大切さを学ばせていただきました。
次に勤務したのが松田歯科クリニックです。ここは郊外型の歯科医院で、一般歯科以外に小児歯科、矯正歯科、口腔外科まで、多彩な治療に取り組まれていました。子どもから高齢者まで幅広い年齢層の患者さんが来院され、色々な意味で地域に貢献できるクリニックでした。まさに私が将来、開業したいスタイルの歯科医院でしたので、経営を含めて勉強させていただきました。
開業
開業を決意された理由をお聞かせください。
地元で開業したいと最初から決めていました。貝塚を含めて泉州地域は大阪の中でもデンタルIQが比較的低い地域と言われており、お口の状態が良くない人が多いのが現状です。そういう地元の人たちのお口の状態を良くしたいとの想いからです。地域が悪いから駄目だろうと言う人もいましたが、患者さんと一緒になってレベルアップしていきたいと思っていましたし、こういう場所だからこそ、伸びしろがあるとも感じていました。
場所はどのように選ばれたのですか。
地元で開業したいと最初から決めていました。貝塚はデンタルIQが比較的低い地域と言われており、お口の状態が良くない人が多いのが現状です。そういう地元の人たちのお口の状態を良くしたいとの想いからです。地域が悪いから駄目だろうと言う人もいましたが、患者さんと一緒になってレベルアップしていきたいと思っていましたし、こういう場所だからこそ、伸びしろがあるとも感じていました。
貝塚市の中での開業地をどのように探されたのですか。
開業する場所選びは「自分がやりたい治療ができる場所」、「自分が来てほしい患者層が来てくれる場所」にポイントを絞りました。細かく言えば、「駐車場が広く取れるところ」、「幹線道路沿い」に絞って探しました。
内装や設計などのこだわりをお聞かせください。
内装でこだわったのは半個室というところです。手術室などの完全個室もあるのですが、通常のチェア周りは半個室のような形で、天井部は繋がっています。空気の流れができた方がいいですからね。スタッフ・患者様の動線分離出来る設計にもこだわりました。またチェアの増設を行ってもキッズスペースやカウンセリングルームを確保できるように意識しています。
開業前後に苦労されたことはどんなことでしたか。
私は体育会系の男なので、女性の扱いに慣れておらず、患者さんはいらしていたのですが、スタッフとうまくいかない時期がありました。私に限らず、スタッフとの関係に悩まれる先生方は少なくないようですね。私も「こんなこと言わなくても分かるだろう」と思っていたり、院長としての自分ばかりに目が行っていたようです。あるときに「言わないと伝わらないのだ」ということに気がつきました。「院長はこうでないといけない」と私自身が勝手に作り上げていた思い込みを取り払ったら、スタッフとの距離感がぐっと近くなりました。
歯科業界
歯科業界は今後どのように変わると思われますか。
保険制度的にも今後は「かかりつけ医」が重要視されるようになるでしょうね。良い治療をして患者さんを長く診ていく、そういう歯科医院が残っていくと思います。自費治療ももちろん増えていくでしょう。今以上に患者さんの見る目も厳しくなってくるはずです。腕が良ければ患者さんはついてくるといった時代ではありませんから、インフォームドコンセントをはじめ、スタッフ対応なども重要になります。そのためにはスタッフには目的・方向性を共有した上でセミナー受講してもらうことでスキルアップを行い、残業代支給や有給取得をしっかり行った上で正当な評価を行い、スタッフの満足度を高めながら、歯科医院自体が成長する必要がありますね。努力したものは報われるはずです。
最近、歯科技工士はそのうち不要になると言われていますが、そんなことはないでしょう。ただやはりデジタル化が進みますから、今後はデジタルデンティストとして時代に対応していくことが求められます。
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