歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する理事長から学ぶ~
医療法人 大輝会 百間歯科医院 渡辺 大助 院長

熊本県水俣市は熊本県の最南部に位置し、不知火海に面して、天草の島々を望んでいる。恵まれた地形から海の幸や山の幸が豊富で、湯の児温泉や湯の鶴温泉といった温泉の街でもある。公害の歴史も知られているが、現在は環境都市づくりを推進している。
百閒歯科医院は熊本県八代市の渡辺歯科医院の分院として、1995年に水俣市に開業した。百閒歯科医院では保険診療をベースに、訪問歯科診療も行うなど、地域医療に打ち込んでいる。
今月は医療法人大輝会の渡辺大助理事長にお話を伺った。

医療法人 大輝会 百間歯科医院 渡辺 大助 院長
【プロフィール】
渡辺 大助 院長
1985年 鶴見大学 卒業
1985年 鶴見大学歯学部附属病院保存科及び大手町の歯科医院 勤務
1989年 渡辺歯科医院 開業
1995年 百閒歯科医院(分院) 開業
1996年 医療法人化
2001年 渡辺歯科医院 移転開業
開業に至るまで
歯科医師を目指されたきっかけについて教えてください。
親が私が小学生の頃から将来は自分の手に職がつく仕事に就くようにと考えていたのです。それで中学校から進学校に進み、そこで選んだのが歯科医師だったということですね。
卒業後の勤務先を選ばれたポイントを教えてください。
大学にしばらく残って勉強したかったので、大学病院に勤務することは決めていました。しかし、収入も必要ですから、大学病院と並行して、日中と夜の非常勤勤務ができる歯科医院を選んだのです。馬車馬のように仕事をすることで、経験値を上げていこうと思っていました。
勤務先ではどういったことを学ばれましたか。
昼間の歯科医院は大手町に今でもある、多くの歯科医師が勤務しているところです。そこは自費がメインでした。会社員相手の歯科医院ですから、夕方5時には閉まります。その後、夜7時から11時までは自宅の近くの歯科医院で働き、そちらでは保険診療や患者さんを回していくマネジメントを学びました。昼間と夜にタイプの違う歯科医院に勤務したことで、自費診療と保険診療の両方を勉強させていただきました。
開業しようと決断した時期、いきさつはどんなことでしょうか。
卒後5年目でした。私はまだ開業する気はなかったのですが、長男でしたし、実家の近くに帰ってこいという声があり、親が勝手に物件から何から見つけてきたのです(笑)。私としては時期不相応でしたが、用意されたところでまずは開業しようと考え、地元に帰ってきました。
開院にあたってこだわった点などはありますか。

最初の歯科医院は親がデザインも全て設計士さんと考えていた場所だったのですが、10年ほど経ったときに、この建物になりました。ここは知り合いの建築会社や設計士さんにお願いし、私の動きやすい導線などを取り入れて設計してもらいました。現在はユニット3台で行っています。
理念・経営スタイル
経営理念を教えてください。
皆がハッピーにということです。院長だけが儲かったりするのではなく、皆に還元して、皆で笑顔にいられるようにしようというのが私どものモットーです。
診療方針でのこだわりはありますか。
「今日の自分には診療させるけれども、昨日の自分には診療させない」ことです。今日は昨日よりも一つでも多くのことを勉強して、知識や技術を向上させているはずなので、昨日の自分よりも今日の自分の方が絶対的に患者さんのためになる存在でいるのが開業時からの目標です。今年で開業29年になりました。
ほかの歯科医院との差別化について、お聞かせください。
私どもは他院とは診療内容が全く違うと思っています。インプラントを含めて、再生療法などを行っていますから、そうした他院でできないことを求めていらっしゃる患者さんが非常に多いですね。
開業やその後の運営するうえで苦労したことはありますか。
ここは私が育った場所ではないため、知り合いもいない中での開業でしたから、いかに患者さんに来ていただくかということに苦労しました。1989年に開業し、その後、バブルが弾けたときには少し落ち込みましたが、そこを通り越したあとは順調に増患できています。
具体的な増患対策をお聞かせください。
歯科医師主導にならないようにしています。歯科医師がメインとなって、患者さんと話をすると、「先生に言われたから」、「先生に勧められたから」と「先生に」が先行して、どうしても上から目線で話が進んでしまいます。私は「先生に言われたから」というのが嫌いなのです(笑)。そこで、私どもでは難しいインプラントの説明のようなものでなければ、スタッフが患者さんと同じ目線に立って説明しています。スタッフも「院長に言われたから」とは言いません。患者さんも「やりたくない」といった、院長に言いづらい意見をスタッフには伝えられます。そうした会話のあり方や患者さんが相談しやすい環境作りが増患対策に繋がっているように思いますね。
患者さんからはどのような問い合わせが多いですか。
ほかの歯科医院で治らなかったというようなセカンドオピニオンがやはり多いです。また、「友達からここは他院で行っていないインプラントや再生療法をしていると聞いた。私もしたい」という患者さんも少なくありません。
スタッフ教育
スタッフ教育について、お聞かせください。

歯科医師も歯科衛生士もほぼ同じで、とにかくセミナーに出席させたり、院内でミーティングをしています。歯科医師だけがセミナーを受講し、レベルが上がったけれども、スタッフがついてこられないというのでは意味がありません。歯科医師とそのほかのスタッフが同じ状況で、同じ階段を上がっていけるように、スタッフが引き離されることがないようにと考えて、指導しています。セミナーについては全て歯科医院で負担していますので、私が行かせることもありますし、行きたいというものに行かせることもあります。
歯科衛生士のレベルは向上しましたか。
はっきり言わせてもらうと、私どもの歯科衛生士はほかの歯科医院の歯科医師並みの知識と技術を持っています。私どもに勤務したあとでほかの歯科医院に行く一目置かれる状況になっているという話を聞くので、今後も教育には力を入れていきたいです。
スタッフが働きやすい環境づくりのために注意されていることはありますか。
私自身も勤め人だった経験がありますので、スタッフが仕事をしやすい環境整備はもちろんですし、給料面も配慮しています。あまりにも多忙なのに見合わない給料だという状況にならないよう、固定給に加えて、歩合給も出しています。この条件は歯科医師もそのほかのスタッフも同じです。ほかの歯科医院よりも忙しい分、忙しいなりにと考慮しています。
今後の展開
今後の経営の展開について、お聞かせください。
これまでは最新の歯科医療と患者さんのニーズの高い診療を頑張ってきましたが、これからの課題は高齢化です。今まで診ていた患者さんの高齢化が進み、ニーズが変わってきたことも踏まえ、訪問歯科などにも傾注したいです。若い頃だけ診て、年を取ってからは診ないということがないように、高齢の患者さんへのリカバリーをいかにしていくかを考えていきたいですね。
転職や開業を考えておられる先生方へアドバイスをお願いします。
私どもの方針でもありますが、「何事でも分からないことを分からないままにしないように」ということです。知らないことは恥ずかしいことではありません。学会などで自分より若い歯科医師から自分の知らない話を聞いても、その場できちんと処理して分かるようになりましょう。一瞬の恥は一瞬ですが、知らないままでいると一生の恥になってしまいます。偉い歯科医師であろうと、若い歯科医師であろうと、知らないことを聞いたら、一つ一つきちんと尋ねて潰していくことが大事です。
趣味や余暇の過ごし方を教えてください。
最近はグルメに走っています(笑)。余暇は美味しいものを食べて回るぐらいですね。遠出をしたときはお土産を買い、スタッフと一緒に楽しんでいます。「これは美味しかった。また買ってくるね」や「これは今ひとつだったから、今度は違うのを買ってみよう」など、会話も弾みますね。