歯科経営者に聴く - 氷川台歯科クリニック 小嶋剛理事長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団 創仁会 氷川台歯科クリニック 小嶋 剛 理事長

医療法人社団 創仁会 氷川台歯科クリニック 外観

東京都練馬区桜台は練馬区の南東部に広がる住宅街であるが、東京メトロ有楽町線、副都心線の氷川台駅周辺は商業地となっている。副都心線は2013年に東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転を開始し、埼玉県から神奈川県までのアクセスを容易にしている。
氷川台歯科クリニックは氷川台駅から徒歩3分の場所に2015年11月に開業した歯科医院である。開業以来、家族で通える「ファミリー歯科」を目指す一方で、審美歯科、ホワイトニング、矯正歯科などの幅広いニーズに対応している。
今月は氷川台歯科クリニックの小嶋剛院長にお話を伺った。

医療法人社団 創仁会 氷川台歯科クリニック 理事長 小嶋 剛 先生

医療法人社団 創仁会 氷川台歯科クリニック 小嶋 剛 理事長

プロフィール

  • 1965年 東京都 生まれ
  • 1989年 鶴見大学 卒業
  • 1989年 医療法人 三愛会歯科 勤務
  • 1992年 小嶋歯科クリニック 開設
  • 2004年 医療法人社団 創仁会 設立
  • 2015年 氷川台歯科クリニック 開設
  • 【学会 他】
  • 歯科医師会会員
  • 学校歯科医師会会員
  • 東京医科歯科大学歯学部顎顔面補綴学インプラント科専攻生
  • ACOC(Academy of Cosumetic Oral Care)
  • CDRG友の会
  • LSTR友の会
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけはどのようなものだったのですか。

父は企業の経営者ですが、かつては医師を目指したこともあったそうです。父は私に自分の夢を託したかったのか、私に医師になることを勧めていました。私としては父への反発もあり、小さい頃は本気で考えていなかったのですが、高校時代に変わりましたね。通っていた高校が医療系の学部を希望する人が多かったことや資格を持って働けることへの憧れもあり、医療の仕事に就きたいと思うようになりました。

学生時代に思い出に残っていることはありますか。

アメリカンフットボール部に所属し、6年間、活動していました。ポジションはディフェンスのコーナーバックです。体育会系の部活動は大変なことは承知のうえで入部しました。私は中学校ではバスケットボール部に入り、キャプテンまで務めていたのですが、高校では遊びに忙しかったのです(笑)。それで大学では若いうちに何かをやったという思い出を残そうと思い、あえてきつい部活動を選びました。アメリカンフットボール部の仲間とは今もいい関係が続いていますし、私どもの法人にも3人の後輩が勤めてくれています。やはり分かり合える仲間ですね。
また、妻と出会ったことも学生時代の思い出の一つです。

卒業後、勤務先を選ばれた理由をお聞かせください。

臨床を鍛えたいと思い、先輩に相談したのです。そうしたら、先輩が勤めている三愛会歯科に「お前も来い」と誘われたのがきっかけです。院長先生も10年上の先輩でしたし、ほかの歯科医院は検討することもありませんでした。

勤務先で学ばれたのはどんなことですか。

組織づくり、教育の方法、患者さんとのコミュニケーションなど、今の創仁会の基礎となっているものの全てを学びました。三愛会に入職した段階で、大学の実習の復習があります。模型を削る練習ですが、大学のように2時間かけて行うのでは外で通用しません。一般の歯科医院の臨床に即した削り方になるようにトレーニングを積みましたね。そして、先輩が見て、「良し」と言われれば、次のステップに進むことができたり、次の治療を任されるのです。これは三愛会が作り上げたシステムというよりは伝統だったのでしょうね。

開業しようと決断されたいきさつはどんなことだったのでしょう。

開業自体は自分の意志ではなかったのです。父が倒れたので、父に独立して頑張っているところを見せてほしいと、母に頼まれたのがきっかけです。それで、実家に近い足立区五反野で小嶋歯科クリニックを開業しました。父は喜んでくれたと思います。経営者ですから、実績を残していない息子を認めようとはしなかったのですが、この開業で父からようやく認められたような気がしましたね。小嶋歯科クリニックは2015年に再開発に伴って閉院しました。

開業にあたってはどんな苦労がありましたか。

ほとんどのことで苦労しましたよ。スタッフの募集や物品の購入も大変でしたし、まだ27歳でしたので、3,000万円を借り入れたことが最大のプレッシャーでした。

それから分院を展開されてきたのですね。

開業し、借金を早く返済したいとの思いで頑張ったのですが、お蔭様で予想よりも早く返済し終わったので、何かやってみたいと考えたのです。2001年に江東区に北砂小嶋歯科クリニック、2008年にさいたま市に西浦和クリニックプラザ歯科、2013年に埼玉県越谷市にまくり歯科を開設しました。

氷川台歯科クリニックの開設のきっかけはどんなことでしたか。

小島歯科クリニックが閉院となったことと、2015年にもう一つ分院を出したいと思っていたことが重なったのです。場所に関しては、西浦和からのアクセスを考慮しました。分院を出す場合は既存の歯科医院からの距離感が大切です。ある程度の距離感ですと、歯科医師やスタッフが行き来しやすいですから、練馬区や板橋区、埼玉県内であればJR武蔵野線か東武東上線の沿線で探していました。50件の候補の中から、この場所を選んだのですよ。また、西浦和クリニックプラザ歯科とまくり歯科はメディカルモールやメディカルビルの中にありますので、一般テナントとしての開業は北砂小島歯科クリニック以来なのです。ほかの要素に依存しない開業にも興味がありましたので、こちらに決めました。

こちらの第一印象はいかがでしたか。

この物件のように、駅近くの物件は少なくありませんが、この物件の良いところは氷川台駅からの途中で橋を渡ることだと思いました。背後商圏が全て橋の向こうになりますので、印象は良かったですね。のどかな住宅街の中で少しカラーが違う私どもがやっていくことに面白さを感じました。

氷川台歯科クリニックの開業にあたってのコンセプトとはどのようなものだったのですか。

子どもさんから高齢者まで、ご家族で通っていただける歯科医院です。対話による問題の把握、綿密な治療計画と説明、診療内容の開示をコンセプトとしました。

設計、レイアウトの工夫などをお聞かせください。

構造設計は設計士に任せましたが、ほかは全て私が設計しました。私は設計が好きで、これまで建てた2軒の自宅も私が設計したのです。氷川台歯科クリニックでは既存の歯科医院にないものを目指しました。ガラス張りであること、中を開放的にすること、コンサルティングスペースやキッズスペースを設けることなどですね。最新の機械の導入にもこだわりました。チェアは4台配管ですが、3台スタートとしました。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

創仁会の理念でもありますが、住宅街にある、子どもさんから高齢者の方までのホームクリニックであることです。高額な治療や自費診療を決して勧めることなく、患者さんにマッチした治療を提供し、顧客満足こそを目指しています。

診療方針

診療方針をお聞かせください。

口腔内の疾患を治療するのは当然ですが、診療によって、患者さんの心理や気持ちが良好になるように心がけています。歯科医師は専門職ですし、技術やテクニックの習得に偏る歯科医師が少なからずいますが、私には違和感があります。技術やテクニックを持つことで、できた気になってしまうのはおかしいです。いい歯科医師なのかどうかは患者さんが決めることです。歯科医師は仁術を持たないといけません。創仁会の「仁」は仁術から取りました。仁術とは昔ながらの考え方ではありますが、それを現代のステージでどう表現するかだと思っています。

患者さんの層はいかがですか。

コンセプト通り、子どもさんから高齢者の方まで幅広く来ていただいていますが、特に多いのが女性の患者さんですね。近隣の主婦の方のみならず、練馬区内でも電車に乗って来てくださったり、一度、私どもで話を聞かれたあとで改めて選んでくださった方もいます。

自費と保険の割合について、お聞かせください。

開業して1年足らずですので、あえて自費を抑えています。今はいらしてくださった患者さんが安心されることが大事です。そのため、自費2割、保健8割といったところでしょうか。私どもからエステティックなイメージをお持ちになる女性の患者さんもいらっしゃいます。患者さんの方から「ホワイトニングをされていますか」などと、ニーズをおっしゃることもありますね。

増患対策

どのような増患対策を行っていらっしゃいますか。

ホームページぐらいです。駅や電柱の看板は時代錯誤のような気がしています(笑)。私どもの場合、まだ開業して間もないですから、通りすがりにいらっしゃる方も多いですね。そんな方々からの口コミもあります。
ホームページではリクルートサイトも作っています。求人サイトから私どものサイトに来て、さらにリクルートサイトへという流れができつつありますね。ホームページ自体もこれからコンテンツを充実させていきたいです。

スタッフ教育

スタッフ教育について、お聞かせください。

現在は全くの新卒歯科医師はおらず、一番下の歯科医師で卒後4年目です。研修医というレベルではありませんし、先輩歯科医師と同じように、主治医として患者さんの診療を行っています。ただし、難しい症例や手術などは見学からさせています。若手歯科医師への教育では端的な説明とコミュニケーションが必要です。彼らといい関係を築くことが前提ですし、院長への信頼感や親近感があれば、患者さんへの治療にも効果をもたらすはずです。

歯科衛生士、歯科助手への教育はいかがですか。

歯科衛生士は患者さんに合ったクリーニングを行わないといけません。どの患者さんにも一律のサービスでは、痛がりの患者さんは困惑するでしょうし、自費であっても高いレベルを求める患者さんの満足度も向上しません。技術も必要ですが、患者さんが良好な気持ちになることが求められます。歯科医師同様、歯科衛生士も外部の研修会に参加させています。
ミーティングはそれぞれの分院で週に1回、行っています。私どもでは「申し送り」と呼んでいますが、前日や午前の診療の振り返りや伝達事項の確認などをしています。私は前に出ず、歯科衛生士の主任が進行役を務めています。そちらの方がスタッフも盛り上がりますね。私は後ろで聞きながら、何かあれば修正意見などを話しています。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

4つの分院を健康的に成長させることが目標です。経営コンサルタントとも契約していますし、教育システムも構築できればと考えています。最新の分院を出して1年未満ですから、今は分院の数を増やすことよりも、歯科医師やスタッフが安心して働けるように、足元を固めていきたいですね。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

どういう歯科医師生活を送りたいのか、自分なりのヴィジョンを持ちましょう。そうすれば立地の選定が決まってきます。私自身は子どもさんから高齢者の方までが集う世界観が好きで、住宅街での開業にこだわってきました。矯正歯科や審美歯科などよりもどんな症例でもカバーでき、難しい症例なら専門医に適切な紹介ができるGP、一般歯科医でいたかったのです。
歯科医師の仕事では技術だけではなく、人の身体を扱う以上、人の心を重んじることが大切です。コミュニケーションが苦手なら、コミュニケーションをスキルだと捉えたら、いかがでしょうか。センスだとすれば、センスがゼロなら成長しないことになってしまいます。しかし、スキルであれば、技術論の一つとして学び、練習することができるのです。口腔内カメラを使っての説明をどのようにうまくするのか、どうしたら患者さんが心を開いてくださるのかを教えてくれる歯科医師のもとで研鑽を積んでください。

プライベート

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

子どもと遊んでいます。以前は夜9時までの診療時間でしたので、家族と過ごす時間がなかなか持てなかったのですが、氷川台の分院は7時までですから、余暇の時間が増えました。子どもとは自宅近くの代々木公園に行ったり、スイミングスクールの送り迎えをしたりしています。子どもの学校の春休みに合わせて、ハワイにも行きました。ハワイは以前から好きで、院内にもハワイアンミュージックを流しています。

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