歯科経営者に聴く - ひらおかデンタルクリニック 松谷英子院長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

ひらおかデンタルクリニック 松谷 英子 院長

ひらおかデンタルクリニック 松谷 英子 院長

プロフィール

  • 茨城県つくば市 出身
  • 松本歯科大学 卒業
  • 義歯で有名な歯科医院勤務を経て、東京都銀座の歯科医院にて、染矢ひとみ師に指導を仰ぐ
  • 1996年 医療法人 博英会 天川歯科 開設
  • 2014年 ひらおかデンタルクリニック 開設
  • 2015年 医療法人 英仙会 開設
  • 【学会 他】
  • 点滴療法研究会会員
  • オゾン療法研究会会員
  • キレーション療法認定医
  • 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
  • SH療法研究会会員 他
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開業に至るまで

子ども時代はどのように育てられたのですか。

子どもの頃から「節約するのではなく、いかに稼ぐかを考えなさい」といつも言われて育ちました。父は事業家ということもあり、「お金を生み出すところに投 資をしなさい」という考え方をする人で、私は幼い頃から本だけは存分に買い与えてもらいました。「節約をしても本だけは買いなさい。宝石や洋服はなくなっ てしまうけど、本によって身につけた知識はずっとなくなることはなく、自分のものになる。そういったことに投資をしなさい」と言われていたのです。父は苦 労をして事業を立ち上げ、バブル期にはかなり裕福な生活をしていました。そういう父でしたので、一緒にレストランに行っても「誰がこのレストランを切り盛 りして回しているのか、ちゃんと観察しなさい」と教えられましたね。

子どもの頃から経営を教えられていたのですね。

父からは「石の上にも3年というように、一つのことをやり遂げるには3年や10年はかかるものだ。きちんと修行をしたあとは自己責任のうえで経営をしなさ い」とずっと言われていました。だから、歯科医師になってからも私の選択肢の中に開業をしないという道はありえませんでした。また、「お金だけではなく、 人間関係や地域の関係といった大切なところにお金を使うべきだ」と言われ続けてきましたので、歯科医師になって開業して、患者さんや地域の方と繋がってい くことの大切さを知らず知らずに教え込まれていたのでしょうね。幼い頃からの父の言葉が今の自分の生き方を形成していると思います。

歯科医師を目指されたきっかけはどんなものだったのですか。

両親は医療従事者ではありません。ただ母方の実家は皆、医師や歯科医師でしたので、私が歯科医師を選んだのは特別なことではなかったと思います。「これか らの時代は男も女も関係ない。手に職をつけなさい」と常々言われていました。私自身も男性的な性格なので、違和感なく受け止めていました。

先生は歯科医師でありながら、メンタルトレーナーや心理カウンセラーという肩書きもお持ちですが、どういったきっかけからですか

実は私は20代に悩みが多く、拒食症といった経験をしています。それまでの自分は本当にダメ人間でした。アップダウンの激しい性格で、気が強くて勝ち気のくせに、すぐ落ち込む。自分で自分を上手く扱えなかったのです。 しかし、現在のパートナーに出逢い、彼は「資格は関係なく、何をしたいのか?」と聞いてくれました。「これまでの経験を活かして心理学をしたい」と言うと、あっさり承諾してくれたのです。 歯科医師だから歯科医師としてやっていかなければいけないと思っていたこれまでの生き方から フッと解き放たれたような気持ちになりました。そして、33歳で心理学を学び始めました。 まずは、自分自身に必要で始めたのが、きっかけなのです。

開業しようと決断されたいきさつを教えてください。

心理学的に言うと、価値観は40歳になっても変えることができるのですが、性格というものは7歳ぐらいのときに第三者から刷り込まれるものです。自分を取 りまく環境や近くにいた大人の言葉が8割を占めると言われています。そういった意味でも、私の育った環境や父の言葉が今の私を作り上げているので、開業は 私にとってはごく当たり前のことでした。でも普通の歯科医院を作る気は全くありませんでした。あくまでも心理学や大脳生理学を取り入れた全身医療に繋がる 歯科という考え方から開業を決意しました。

この場所で開業されたのはどうしてですか。

私にとって仕事も家庭もとても大切なものですが、やはり今は子どもが小さいので、ベースは家庭です。そのため、開業地の第一条件は子どもが立ち寄れる、自 宅近くの場所でした。子どもの生育環境は性格形成に大きく影響を与えます。親が遠くで勤務したり、遅くまで帰らないでいると、子どもがひきこもりになる可 能性も高くなります。そういった意味でも、開業地は家から10分圏内で探していました。 当初は子どもが小学生になったら開業しようと思っていたのですが、結局1年近く遅れてしまいました。そういったときにも焦ることなく、期が熟すのを待とう と意識的に思うようにしました。20代の頃は「経験」の時期なので、どんなことにも恐れないで挑戦し、経験を積むことが大切です。でも歳をとってからは、 どんなときも「迷ったときは自分に聴く」ようにしています。自分に聴いてみて、心がなぜかざわついているときなどは大事な決断はしません。そういう状況で 決断したことは大抵、失敗してしまうからです。開業は大きな決断です。まずは条件通りの立地、次に家庭環境、最後に心がざわつくことなく、「ここならいけ る」と決心できたときが開業の時期でした。

先生が言われている「口腔バランス+全身バランス=健康=健全な精神が宿る」という理念について教えてください。

私は20代の頃に歯の治療で保険のパラジウムを入れたところ、視力が悪くなり、肩こりが大変ひどくなりました。また、インプラントを入れた途端に吐き気が 止まらないといった状態になりました。もちろん全ての人に当てはまるものではありませんが、私は人一倍過敏な方だったのでしょう。そういった実体験から勉 強を重ね、口腔内と全身の繋がりの重要性を訴えるようになりました。 脳梗塞の原因はプラークだともいわれています。プラークが血管の中に入って脳梗塞や色々な病気の原因になるのです。プラークコントロールできていない人は 脳梗塞になりやすいという統計も出ています。また、今の人は咀嚼力が弱いので、歯列弓が狭いと言われています。舌はすごく大きいのに、歯列弓が狭いと舌が 収まりきれなくて落ちてしまいます。これによって、呼吸を妨げるという状態になります。歯列弓が狭い人ほど、鬱の人が多いという統計も出ています。こう いったお話をすると、患者さんは納得して矯正治療を受けられます。私たち歯科医師は患者さんに伝えていくべきですし、私がやるべき使命だと強く思っていま す。「健全な精神が宿る」のは「健康な体」です。そして、「健康な体」は歯の治療をするだけではなく、口腔内と全身のバランスをトータルで捉えたときには じめて必要な治療が分かるのです。

口腔内と全身は繋がっているということですね。こういった捉え方をされる歯科医院はまだ少ないですよね。

東京の方では増えてきていますが、関西ではまだ少ないですね。私の座右の銘の一つは「人と一緒なら間違えている」というのがあります。人が「いいね」と同 感してくれることは何か違うものです。私は人から「それは無理でしょう」とか、「それは違うでしょう」と言われると、「合っているぞ、これでいいぞ」と思 うタイプなのです(笑)。その分、人より100倍は努力するのが私の生き方です。だから、この理念は確信を持って広げています。

診療方針

診療方針を教えてください。

さっと終わるような診療はしません。一人の患者さんに30分から1時間をかけることもあります。自分だったらこうしてもらいたいと思う説明や対応をするこ とが大前提ですね。全身管理と口腔状態の関係は実はすごく密接です。たとえば、口腔と肩の僧帽筋は連動しているので、毎日の生活の中で緊張していたりする と、身体が自然にそれを治そうと歯を食いしばるようになります。そういった繋がりを理解すると、噛み合わせを治すことによって知覚過敏も治せるのですね。 主訴だけを治すのではなく、主訴に繋がる全身の不具合からお話をしていきます。生活環境や生活習慣を治すことから始めなくてはいけない部分が多々あるから です。ですから、必然的に時間がかかります。歯を長持ちさせるということを最重点にしていますので、歯ブラシ指導なども丁寧にしています。

増患対策

増患対策について、お聞かせください。

今は有り難いことにお断りしている状態です。特に宣伝や広告しているわけではありませんが、当たり前のことを当たり前にしていたら、患者さんは増えるものだと思います。もちろん、お話をするときは患者さんの目線を少し上にするなど、ちょっとした気配りを大切にしています。

スタッフ教育

どのようなスタッフ教育を行っていらっしゃいますか。

「紫の象を想像しないでください」と言うと、「紫の象」を想像してしまうように、「痛くないからね」と子どもに言い聞かせる親がいますが、「痛くない」と 言ってしまったら、まだ何もしていないのに「痛い」という言葉が脳に刷り込まれるのです。だから「~ない」という言葉は使うべきではありません。「怖くな いからね」と言うのではなく、「先生は優しいからね」という肯定の言葉を常に発するようにしなければいけません。生き方はそういった日常の習慣で大きく変 わってくるので、スタッフにしっかり習得させています。
当院では「メンタルノート」を作り、言葉の習慣などを書かせて2週間に1回提出してもらっています。人と自分を比べて勝手に落ち込むスタッフがよくいま す。そういったスタッフには「ライバルは他人ではなく、昨日の自分だ」といつも言い聞かせています。家庭があるからできないなどといった言い訳は聞きませ ん。1時間、机に座って勉強しなさいと言っているのではありません。「ながら勉強」でもいいのです。やり方は多くありますが、分からない人には私の経験し てきたことを余すことなく教えています。今は様子を見ながら、少しずつタイムマネージメントを教えています。「したい」ではなく、「する」と断言して、期 限を決めることが何をするにも大切です。成長していきたいと思わない人は当院での勤務は難しいかもしれませんね。でも、仕事をしながら生き方そのものを学 べるので、大きなメリットがあるのではないでしょうか。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

分院展開などは特に考えていません。しかし、開業したときから普通の歯科医師をする気持ちはありませんでした。普通の一般歯科をするのであれば、私は閉院 するからと常々言っています。私のやりたいことは「心理学・大脳生理学」と「歯科」の両面から診る歯科医院です。1年以内には心理学や大脳生理学のセミ ナーを医療業界の人や患者さんに向けて発信していくつもりです。日本の経済は著しく発展していますが、日本人の歯の状態やデンタルIQは本当に低いのが現 状です。それを上げていくには医療業界で働く人たちが変わっていかなくてはいけないのです。現在の日本人の平均寿命と健康寿命には10年も開きがありま す。歯を失った人は寝たきりになる確率が高くなるし、プラークが血管の中に入ると脳梗塞の原因になるなど、私たちには伝える義務があるのです。「日本の歯 科医師療を私が変えていく」ぐらいの意識で今後もやっていきます。

プライベート

ストレス解消法を教えてください。

私の趣味は仕事です。入れ歯の診療なども大好きなのですよ。だから仕事でストレスが溜まることはありませんし、息抜きが必要というわけでもありません。強 いて言うならば、「芸術療法」というものをしています。疲れてくると、箱庭やコラージュを作って、グループカウンセリングをしています。すごく楽しいし、 心の整理ができますよ。 それから、「心に聴く」こともしています。脳で考えるのではなく、本能に聴くようにするのです。これはストレス解消法として大いに役立ちます。今日は疲れ ていて寝た方がいいと感じるときは寝るようにしています。身体のメンテナンスがしっかりできていないと色々な決断をするときに正しい判断ができなくなって しまうので、身体のメンテナンスはとても大切ですね。

最後に先生の原動力について教えてください。

簡単に手に入れられる物は手に入れても大事にしないものです。苦労をして手に入れた物は本当に大事にするでしょう。だから、私は手に入れるまでの過程も楽しもうと思っています。そのため、人の100倍の努力をするのは当たり前なのです。

  • 【タイムスケジュール】
    勤務医時代は子育てをしていましたので、朝4時に起床して勉強をしていました。夜は6時30分には診療を終了し、就寝までの時間は子どもの世話など母親としての時間を過ごしていました。
  • タイムスケジュール
  • 開業した現在は朝8時には出勤しています。歯科医院を出るのは9時頃になってしまい、夜の時間が大変少なくなってしまうので、なんとか7時には歯科医院を出られるようにすることが今の課題です。

  • 【医療法人 光惠会 彩都歯科クリニック 平面図】

  • 間取り図