■歯科医師を目指されたきっかけをお聞かせください。

実家は靴屋で、父親は職人でした。小さい頃は貧しかったのですが、夜遅くまで靴を作る父親の横に寝そべって、その作業をじっと見ていた記憶がありますね。その頃から「自分も手に職を持ちたい、父親のような職人になりたい」と漠然と思っていました。

■大学時代のエピソードをお願いします。

大学時代は苦学生で、ずっと家庭教師のアルバイトをしていました。子どもと触れ合う機会も多く、歯学部生として、楽しい小児歯科のイメージをなんとなく持っていたかもしれません。家庭教師先の親御さんにも可愛がられて、よく食事にも呼ばれていました。目上の方に対する感謝の気持ちは、この頃から培われていましたね。

■勤務先を選ばれた理由はどうしてですか。

最初勤めていた歯科医院を退職した後、鹿児島市の団地で開業されているご高齢の先生からお誘いを受けたのです。その医院は先生の他に勤務医もおられず、困っておられたので、即日返答したところ、その翌日には別の歯科医師が面接に来る予定だったとあとから聞きました。今、振り返ってみますと、運が良かったですね。チェア2台の小さな歯科医院でしたが、勉強したいと思って買った書籍のお金を全てその先生が出してくれたことが、当時はとても有難かったです。

■開業しようと決断されたいきさつはどんないことだったのでしょうか。

その先生が、私を雇ってくださった約半年後に急逝されたのです。また職を失ってしまいそうになったのですが、先生の奥様から「歯科医院を継いでくれないか」と頼まれたのです。まだ経験も浅く、とても悩みましたが、医院の承継を決意しました。こうして「よしどめ歯科　大明丘」が誕生したのです。
前医院の退職、再就職、医院承継、開業まで、たった半年の出来事です。このときの年齢は30歳、まさに激動の年でした。
30歳の1年間で学んだことから、私が、今、未来を変えようと考えている人に言えることは「物事が動くときはあっという間にまとめて全てのことが動き、そこで少しでも決断が遅れれば、また、あっという間に機会は失われてしまう」ということです。

■開業にあたってのコンセプトやこだわりなどをお聞かせください。

歯科医院のあった大明丘団地は鹿児島でも古くからある団地で、患者さんもご高齢の方が多く、入れ歯の修理や歯周病の処置がとても多かったです。多くの患者さんから感謝もされましたが、歯を失った悩みもたくさん聞いてきました。この開業初期の経験がインプラントの有効性や予防の大切さなど、今の私のコンセプトのベースになっている気がします。また、私は子どもさんが好きだったのですが、多くの子どもさんが歯科医院を怖がったり、嫌うのがとても残念でした。そこで、小さい頃から楽しく通える歯科医院を作れないのだろうかという思いが強くなり、鹿児島で初めて保育士、キッズルームを導入したり、季節ごとの夏祭りやクリスマス会などのイベントを行うようになっていったのです。
現在では患者さんの意見や要望を十分に聞き取り、安心して治療を受けられるためのトリートメントコーディネーターの導入、保育士に加えて、歯の健康と食事との関連から栄養士も導入しています。

■経営理念をお願いします。

「もし自分自身の歯を治すなら、もし自分の家族の歯を治してもらうなら」、常にそう考えて、患者さんにとってベストな選択は何かということを考えながら診療を行っています。

■診療方針をお聞かせください。

私どもの特徴としては、トリートメントコーディネーター、保育士とキッズルーム、栄養士、オペレーションセンターが挙げられます。
まず、トリートメントコーディネーターですが、患者さんと密接なコミュニケーションを図り、安心できる治療計画を立てるための専任のスタッフです。初診から治療、完治後の予防まで、一貫してケアするシステムを確立しています。
次に、子どもの患者さんが歯科医院を怖がらないように、また子育て中のお母さんが安心して治療に通えるように、親子で通える歯科医院を目指して、専任の保育士とキッズルームを導入しました。
また、家庭でのブラッシング指導に終わることなく、日頃の食生活、食事の習慣、栄養の摂取という内科的視点で歯の健康を捉え、患者さんに理解していただくために、栄養士、管理栄養士を導入しています。
オペレーションセンターには専任のスタッフを配置して、予約の受付はもとより、治療計画の調整、一般の方々からの電話やメールでの相談受付の窓口を一元化しています。3つの歯科医院の予約状況や患者さんのデータも専用ネットワークで連携しています。
そのほか、患者さんにより満足していただくために、歯科医療としてのサービスの質を維持向上する品質マネジメントシステムを設計、実践し、ISO9001：2008を取得しました。

■増患対策について、お聞かせください。

「口腔歯援隊」を組織しています。地域のサークルや幼稚園、保育園、子育て支援センターと連携して、小さなお子さんを持つ保護者の方々に虫歯予防の大切さの啓蒙、家庭でのデンタルケア指導、食育の相談などを定期的に行っています。また、院内への中学生職場体験プログラムも積極的に受け入れています。

■スタッフ教育について、お聞かせください。

300ページに及ぶ、よしどめ歯科オリジナルの教育マニュアルを準備し、新人さんはもちろん、産休や育児でしばらく現場を離れていた女性スタッフも復帰にすぐ対応できるようなシステムを確立しています。ミーティングを重視し、診療時間を切ってでも、各歯科医院で、毎日、午後2時間ほど行っています。
また、外部から専門の講師を招聘し、最新の歯科医療技術のみでなく、接遇やマナー講義も開催して、医療人としての向上のみでなく、ホスピタリティの充実も図っています。

■今後の展開について、お願いします。

2012年12月には鹿児島市の中心部である天文館に、4院目となる「よしどめウエルネス歯科・矯正歯科　ザビエル公園通り」を開院します。今回のコンセプトは「働く社会人のための歯医者さん」です。虫歯や歯周病といった歯の治療を行なうだけでなく、口臭での悩み、入れ歯の不具合など、職場で働く方々の精神的、社会的な歯に対する不安や苦痛を緩和する「ウエルネス」を目指します。

■開業に向けてのアドバイスをお願いします。

自分がどういう形の開業をしたいのかというヴィジョンを明確にしましょう。そうすれば、オフィス街か住宅街かという選択肢ができ、場所選びに繋がっていきます。私は歯周病治療をベースにしたい、そのためには医科の各科と連携を密にしなくてはいけないと考えていたので、住宅街の医療モールを探しました。そういったヴィジョンを定めたら、次は場所ですが、やはり立地は重要なポイントとなります。それから患者さんへの対応です。 私の場合は勤務医時代よりは開業後に強く意識するようになりましたが、勤務医時代から接遇などに気を配っておくべきだと思います。

■プライベートはどのように過ごしていらっしゃいますか。

大学の頃はビリヤードの大会で学生チャンピオンになったこともあります。ゴルフはハンデ３で、クラブチャンピオンも2回獲得しました。趣味も思い切り本気でやらないと気が済まないのです（笑）。

■メッセージをお願いします。

よしどめ歯科　大明丘は厚生労働省指定の歯科医療臨床研修施設です。勤務医の先生方が4年で開業するための支援プログラムも充実しています。インプラントや矯正治療、審美治療など、自費診療について学びたい方も大歓迎です。