今回はベトナムの歯科についてお伝えしたいと思います。
ベトナムの歯科医院で働いているのは、一般的に歯科医師・歯科専門ナース・ナースです。
歯科技工士は歯科医院で働いてる人はほとんどおらず、だいたいが技工所で働いています。
ベトナムで歯科医師になるには大学で6年間学んだ後、試験に合格して、2年間のインターンを経験し、再度試験を受けて合格する必要があります。こうしてやっと歯科医師として働くことができ、その後専門技術を習得していきます。
ナースは学校で2年間勉強をすればなれるのですが、歯科専門ナースになるにはその後1年間病院で専門知識を学びます。歯科専門ナースになると日本の歯科衛生士の業務の他に、根管治療やう蝕処置ができるようになります。
歯科技工士は学校に行く人もいるようですが必須ではなく、技工所に就職してそこで技術を磨く人が多いそうです。
ベトナムでは、歯科に関わらず全てにおいて、何を勉強したかよりも経験が重要視されるので、みんな少しでも多くの事ができるようになりたいと一生懸命です。
NHA KHOAはベトナム語で歯科医院という意味です。
ハノイにもたくさんの歯科医院がありますが、多くはチェアが3台位の小さなクリニックです。(チェアの台数は奇数の方が縁起がよいと言われているそうです。)
正面が全面ガラス張りの所が多いので、外から見てもすぐに歯科医院だということが分かります。
「矯正歯科」など診療項目を掲げているところはあまりなく、歯科全般の治療を行うところがほとんどです。
日本と同様、難しい症例や大きな外科処置は、病院の歯科に行くことになります。
アポ帳。なんと午前か午後かという約束だけだそうです。
とても親切なフン先生、ありがとうございました。
ベトナム語が全くできない私にとってローカルの歯科医院に行くのはとてもハードルが高すぎるのですが、たまたま今回、うちのベトナム人スタッフが知り合いの先生のところを手伝いに行くというので一緒に連れて行ってもらいました。
光がたくさん入るので、とても明るい診療室です。
診療風景です。
今回訪問させていただいたクリニックは、矯正専門の先生が1年ほど前にオープンした新しいクリニックです。
自宅の1階が診療所となっており、チェアは2台と広くはありませんが、整頓された院内は明るくて清潔感があります。エプロンは布製で、患者ごとに滅菌されたセットとグローブが用意され、テキパキとリガチャーの交換をしている姿は日本の診療風景とさほど違いはありませんでした。
ただ、このようなクリニックはまだ少なく、ほとんどのクリニックは衛生的に不十分なところが多いようです。
ここではきちんと感染予防をした医院にするためオートクレーブを導入されていますが、先生自身もオートクレーブがある歯科医院で働くのは初めてだそうです。
ベトナムでは肝炎やHIV感染者が日本より多いため感染予防は必須ですが、総合病院レベルでも完全には行われていないのが現実です。
真っ白な陶器と同じ色のクラウン!人気があるそうです。
今、ベトナムの歯科では審美治療が大人気のようです。1970年台にテトラサイクリン系の抗生物質しか無かった時代があり、その影響を受けている人は特に真っ白なクラウン修復を希望されるようですが、若い年代は自然な美しさを希望する人が多いそうです。また若い人たちは矯正治療にも興味をもっているそうです。
ベトナムでは水道水にフッ素が含まれているため、特に北部の方では「う蝕率」は低くなっています。しかしその反面、「歯周病率」はかなり高いのが現状です。う蝕があまりないので歯科医院に行く機会が少ないせいか、ベトナム人の歯周病の知識は大変低く、気が付いた頃にはすでに重度の歯周病に進行している状態です。
まだ歯周病治療という概念もベトナムの歯科界には浸透しておらず、逆にインプラントなど先進医療だけが先走りしてしまっている感があり、近い将来トラブルが出てくるのは予想ができます。
実際、デンタルショーに行ってもスケーラーはほとんどありませんし、SRPができる人もいません。そんな中、私が行っている治療を見て、歯周病治療の必要性を感じ、教えて欲しいと言ってくるスタッフがいることを私は嬉しく思います。
ベトナムは今ものすごいスピードで発展しています。生活が豊かになる一方で嗜好品も代わり、今後は子供のう蝕や肥満、生活習慣病が問題になってくるでしょう。
私にはまだまだ大きな事はできませんが、それに対応できるような歯科スタッフが私の周りから育ってくれるといいなと思って日々仕事をしています。
第8回 『外国人スタッフと働く』5月15日公開予定 COMING SOON !
新規会員登録はこちら