歯科コラム ユニークな試み

ユニークの試み



歯科のイメージが変わる ~ ライバルはディズニー ~

「ホワイト企業」という言葉をご存じでしょうか? おそらく「ブラック企業」というのは耳にしたことがあると思いますが「ホワイト企業」というのは初めて耳にされる方も多いことでしょう。
「ホワイト企業=社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業」と定義づけされています。
色々な接客業・サービス業などの会社の中でこれまで接客・サービスとは全く無関係だと思っていた医療関係から今回大賞に選ばれました。東大阪市にある「医療法人ゆめはんな会 ヨリタ歯科クリニック」です。
業界を大きく変える何かがこの歯科にはあるのかもしれない・・・私たちはヨリタ歯科クリニックの寄田幸司理事長に取材を申し込みました。

近鉄奈良線「河内花園駅」。東大阪市は大阪府下3番目の都市で、人口約51万人。花園はラグビーのメッカとして、全国的に有名です。難波から普通電車で約20分というアクセスのよい場所で、駅前にはスーパーマーケットがあり、平日の昼間の割には人通りの多い場所です。バスターミナルの前に何の飾り気もない決して入りやすいとは言えない4階建てのビル、この3階に歯科はありました。

扉をあけたら、まるでホテルのロビーかと思わせるような世界が。
確かに最近、歯科でもゴージャス感あふれるフロントやお洒落な外観のクリニックなど良く見かけるようになりました。
しかし、このヨリタ歯科クリニックは一瞬足がすくんでしまうような静けさ、重厚さが全体に漂うような雰囲気とは違い、「うわっ!」と思わず顔が晴れやかになるような空気感がありました。
約40人は待合が可能な広さ、白を基調とした清潔感あふれるロビー、たくさん吊り下げられた大きく丸いライティングはなぜか心がウキウキするような楽しさ、明るすぎず、暗すぎず心がしっとり落ち着くような照明はいつまでも待たされていたくなるような空間です。

託児ルームもあり、お母さまが子供の事を気にせずに治療を受けて頂けるよう、保育士も常勤されているそうです。

また、院内はすべてバリアフリーになっており、トイレなども車いすで使用可能となっています。また小さなお子様も多いため小さな子供専用トイレもしっかり用意されています。
もう一つ驚くことは、ロッカーが設置されていること。買い物帰りの主婦の方や、プール帰りのお子さんたちが来ても、荷物をロッカーに預けられるようにとの配慮だそうです。

診療室は、窓側に一列にチェアーが並べられており、患者様の目線は外が広く見えるような開放的な雰囲気で隣との仕切りは圧迫感がなく、半個室になっています。完全個室もあり、治療が長期にわたる方やインプラントの方など、プライバシーを気にされる方など患者様の都合や状態に合わせて一番良い場所で受けて頂くように気を配られているそうです。

また、子供用の小さなチェアーがある個室もあり、お母さまだけでなく小さな兄弟も一緒に待てるような場所も用意されています。

受付からこの小さなブースに指示がきて、ここでカルテが準備されます。手作りのイラストが描かれたマークなどを利用して、担当のドクターや注意事項などがカルテに添付され順番に並べられ、手際よく治療に回せるよう工夫が凝らされています。

3年前にここに移転する前は同じ駅の反対側で医院を展開されていました。そこではフロアーが2階と3階に分かれていたこともあり、今回の移転ではすべてをワンフロアーに集約したいという気持ちも強かったそうです。イベントを考えたり、パンフレットを作成したりする「感動クリエーター」のお部屋も院内にあります。すべてのスタッフが患者様と通じる場所で働いているという連帯感が感じられます。

ここは週4日オープンする「寄田亭」
歯科ではめったに見かけない社員食堂です。もちろん院内勉強会などにもこの部屋は使われます。この日もとても美味しそうなお料理が出来上がっていました。低カロリーで、健康に良いヨリタ定食。一人200円の負担で食券を購入し、その日の食券分だけシェフが作って下さるそうです。

寄田 幸司 理事長 インタビュー

①「ホワイト企業」大賞受賞おめでとうございます。これはどういう選考で選ばれるのですか?

理事長:まずはエントリーをします。書面で、「私たちはこういった取り組みをしています」といったPRをします。第2審査は全スタッフに無記名でアンケートをされます。50項目位あり、実際のところはどうなのか、スタッフはどう思っているのかといった聞き取り調査をされるわけです。無記名なので正直な気持ちを全員書くでしょうから、正直これが一番怖かったです。口では色々言えますが実際のところスタッフはどう思っているのか、これまでにこのようなアンケートを私自身も取ったことはないですから、思いの他、アンケートが良かったので、ホッとしました。最終第3審査は実際に調査の方が医院に来られて実際に院内をみられます。この3段階で決定します。

②こういった選抜は基本的にサービス業や接客業が対象だと思っている人が多いと思います。医療はサービス業でも接客業でもないんだからとこれまでは思われていたと思うのですが、そのあたりはどのようにお考えですか?

理事長:気持ちよく患者様に来てもらうためには「笑顔と楽しい会話」が一番大切だと思います。それはサービス業だから必要であって医療だから必要でないわけではないでしょう。医療だからと言って偉そうにするのもおかしいですし、すべてトータルで必要だと思います。

③「スマイルサポーター」や「感動クリエーター」といったネーミングは理事長がつけられたそうですが、これはどういったところからつけられたのですか?またこういった考え方をもたれたきっかけを教えて下さい。

理事長:セルフイメージがとても大切だと思います。 これからの歯科業界は厳しいと学生の頃から言われていましたし、自分自身でもそれは感じていました。学生の頃、普通はみんなバイト代も高いので家庭教師とか塾の講師のアルバイトをする人が多いのですが、私は接客業を学びたくて、ホテルでフロントマンのバイトをしていました。授業が終わってバイトに入り、朝までホテルのフロントにいて学校に行くというようなことを週2回2年ほど続けていました。

④なるほど、ホテルマンのアルバイトが今のきっかけになっているのですね。社員食堂とかもその時の経験があるのでしょうか?

理事長:そうですね。前の医院の時にはなかったのですが、私たちの医院には一人暮らしをしているスタッフもたくさんいます。彼女たちはお昼にお菓子やカップ麺を食べたりしていました。私たちは食育や体の健康のことを患者様に伝えているのに、伝えている自分たちがこれではいけないと思ったのがきっかけでした。そのため新しい場所では社員食堂を作ろうと思いました。

⑤この辺りは子供さんの多い地域だから小児歯科に力をいれているのですか?

理事長:いいえ、高齢化に伴いこのあたりも高齢者が増えています。近くの小学校も将来的には高齢者施設になることが決まっています。地域的に子供が多いから小児歯科をやろうと思ったわけではありません。今は少子化に伴い小児歯科をやろうというドクターも減少傾向にあります。もちろん僕自身、小児歯科専門医でもないですし。逆に子供の多い地域には小児歯科専門医も集まるでしょうし、そういった場所で私がやっていたとしたら失敗していたかもしれません。子供の少ない場所だから小児歯科専門医も集まらなかったし、だからこそ私がここでやれた。すべて逆の発想です。小児歯科が少ないから口コミも広がりやすいのです。

⑥毎日160~180名位の患者様が来院されるそうですが、そのうち60名前後は治療ではなくケアだけに来られるそうですね。

理事長:ターゲットは12歳までの子供さんと40歳代の女性です。子供さんを対象としたカムカムクラブはたくさんの子供たちが喜んで来ています。3ヶ月に1回フッ素を塗布したり歯を白くしたり、虫歯がなかったらご褒美ももらえます。子供はそういうことが楽しかったり、歯を大切にする動機になります。
40歳代の女性というのは、子育ても少し手が離れて、予防に意識がいく年齢だからです。将来的に歯周病とか気になり予防しておこうかなと思いだす年齢ですよね。

⑦ところで先生は最初から予防歯科をメインにやっていこうと思われていたのですか?

理事長:私は岡山大学を出て、小室歯科に入りました。ご存じのとおり、小室歯科は駅のターミナルにありましたのでほとんど子供さんは来ません、自費診療が多かったです。卒業したての頃は本当に何もわからなかったです。何もできなかったし、だからしっかり勉強出来るところで、手を動かして、技術を身につけたいと思っていました。
ドクター数も多いですし、確かに厳しかったです。歩合制でしたし、成績がみんなの前で貼り出されて発表されます。でも本当に刺激を受けたし勉強させてもらいました。入職した時から3年半は勤務して下さいと言われたこともあって、最初から3年半はここで学び、出来るだけの売り上げもあげていい人だったと思ってもらえる形で辞めようと自分の中で決めていました。3年半しっかり学んだ後開業ということは最初から自分の中で決めていました。
私は比較的計画を立てて動く方だと思います。ホテルマンのバイトをして接客業を学ぼうとか、3年半ここで技術の習得をしてその後は開業しようとわりと先を見据えて動くところがあると思います。
このビルに移転した時も、長い間家賃交渉をしていました。自分の中で決めた家賃があって、ここまで下がれば決めよう、下がらなかったら止めようとしっかり自分の中でもっている方だと思います。
予防歯科に関しては、この3年半の間に考えたことです。これからは予防が主流になるだろうと。

⑧将来的な展望を教えて下さい。

理事長:今は分院とか大きくするとかは考えていません。この場所に移転して3年なのでまだまだ始まったところです。今、分院や大きくするなんて考えたら足元をすくわれます。まだまだ「ホワイト企業」大賞なんて頂いても全然完璧ではありません。出来てない部分は一杯ある。今は本当の意味で「ホワイト企業」と呼ばれるよう精進していきたいと思っています。

取材後記

終始ニコニコしながら話して下さる理事長が印象的でした。もっとガツガツと夢を語られる方なのかなと勝手に想像していたのですが、穏やかで優しくて、足元をしっかり固めながら進んでいかれる方なのだと実感しました。本当に歯科が患者様にとって楽しい場所になればいいと心から思っておられ、自分自身楽しいことをいつも探しておられるような目をされていました。
スタッフの方の対応も丁寧で、優しい話し方など、大人も子供もまた来たくなる歯科医院だと思いました。
大人の立場からすると歯科医院も変わってきたなと思うかもしれませんが、初めて歯科を経験してこれから歯科とともに成長していく子供たちからすると、意識を変えるのではなく、これが歯科なのだと思って育つのだなと思いました。
取材をして、歯科が今後変わっていくと確信しました。

寄田 幸司 理事長のプロフィール

1987年 岡山大学歯学部卒業
4年間の勤務医の後、
1991年 ヨリタ歯科クリニック 開業
東大阪市 医療法人ゆめはんな会 ヨリタ歯科クリニック 理事長

■活動内容
・大手企業や各種団体等からの依頼により”ワクワク楽しい歯科医院実践術”講演を多く行う。
・患者が決めた!いい病院 近畿・東海地区2万件の中から歯科(虫歯)部門でNo.1の評価を得る。
・ビジネス書ベストセラー「不機嫌な職場」でグーグル、サイバーエージェントに並び、ヨリタ歯科クリニックが、社員が輝くご機嫌な企業として掲載。
・ハイ・サービス 日本300選 人材育成部門受賞 先進的な取り組みを行っている企業・団体として、歯科業界で初の受賞。
・おもてなし経営企業選受賞 経済産業省が主催するおもてなし企業選で、地域で耀くニッポンのおもてなし企業として選出。
・ホワイト企業大賞受賞 社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業として大賞受賞。風土・文化づくり、継承していく取組みが授賞理由。


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