フリーランス歯科衛生士 丸橋理沙さん インタビュー第5回 「欧米の歯科衛生士と日本の歯科衛生士」

フリーランス歯科衛生士インタビュー

丸橋理沙さん 第5回 「欧米の歯科衛生士と日本の歯科衛生士」

プロフィール

  • 1984年に大阪市で生まれる。
  • 2006年に新大阪歯科衛生士専門学校を卒業後、伊藤歯科医院に入職する。
  • 2010年にアメリカで研修後、フリーランスの歯科衛生士となる。

海外で学んだこと

欧米と日本では歯科衛生士の業務は違うのですか。

私はアメリカとヨーロッパで歯科衛生士の仕事を見てきました。欧米と日本では全く違いますね。
欧米では歯科衛生士はほとんどがフリーランスで働き、アシストも雑用もしません。ステータスがあるからこそ、「歯科衛生士」としての仕事を続けられるんです。
日本では資格職である歯科衛生士がアシストや雑用をしないといけないから、退職する歯科衛生士が多いのではないでしょうか。
もちろん、最初の1年間は勉強のためにアシストをして、治療内容を見るのはとても大切です。しかし、ベテランになってもアシストや雑用するのは歯科衛生士という資格を持っていることの価値を下げますし、もったいないです。
私は欧米の歯科衛生士を見たことで、あんな働き方をしたいと改めて思いました。

海外で学んだことの中で、印象に残っていることを教えてください。

海外で学んだこと

海外に行くと、新しい製品や情報、技術などを持ち帰るようにしています。
その中でも印象的だったのはアントネラ・ボッティチェリさんとの出会いです。彼女には歯周病治療の学問と技術の両方を教えてもらいました。
なぜ、この方に会いに行ったかと言いますと、世界的に有名なラム教授という方が彼女のことを「世界で一番上手な歯科衛生士」と言われていたのを聞いたからです。それなら、私も世界一の人に習いたいと思い、コンタクトを取りました。

当初は「20人の歯科衛生士を連れてきたら、1人1500ユーロで講習をしてあげる」と言われたんですが、1500ユーロは約20万円です。それに交通費まで払ってでも行きたいという歯科衛生士を20人も集まるのは無理ですよね。
「では1人で全員分を払うとしたら、いくらですか」と交渉したら、100万円と言われました。最終的には85万円と交通費で落ち着きました。
イタリアの片田舎のリミニという町まで行き、3日間、朝9時から夕方6時までマンツーマンで教えてもらいました。85万円かかりましたが、結果的には価値のあるものになりましたね。

どのようなことを教わったのですか。

特に勉強になったのが、利き手でない左手でキュレットを使うSRPの方法です。
これを行っている歯科衛生士は日本にはまずいないと思います。彼女はもともと左利きでしたが、右手に矯正されたので、両手使いができるんです。
私も両手使いになろうと、左手でのSRPを練習しました。それで、SRPだけは両手使いができるようになりましたよ。通常は1日に8人の患者さんのSRPをしますが、さすがに疲れます。
でも左手も使えれば、その疲れも軽減されるんです。それに、左手の方がやりやすい場所もあります。両手使いができれば、それだけSRPのスキルが上がることに繋がります。
歯科衛生士の学校では左利きを右利きに矯正しますが、セミナー受講生の中には左利きの人もいます。そういう人たちにこそ、この技術を教えていきたいですね。
彼女からは器具の手入れやシャープニングの斬新な方法も学んできました。

セミナーで伝えていること

セミナーで伝えていることはどんなことですか。

セミナーで伝えていること

皆が私のように海外に行けるわけではないので、海外から持ち帰った技術などが中心です。
でも、その前に自分の患者さんでやってみて、日本に合った方法に変えてから、皆さんに提供しています。
そのためにも臨床の場が絶対に必要なんです。患者さんを診たことがない人に教えてもらっても、何も分かりません。模型はいつも同じ歯の形をしていますので、模型でやるだけではできたことにはならないんです。
実際の患者さんには個体差があり、全身疾患をお持ちの方もいるし、色々な癖のある方もいますので、やはり人を診ることが大事です。

セミナーで出される質問にはどのようなものがありますか。

セミナーでの質問

技術的なこと、患者さんや症例についての質問が多いです。
私はセミナー終了後、グループラインを作って、皆と繋がるようにしています。皆がそこに質問やもう一度、聞きたいことなどを入れてくれるので、そこでも答えています。
また、私が開設しているホームページもよく見られていますね。

スポンサー探し

セミナーを開催するにあたり、スポンサーをどのようにして見つけているんですか。

私の場合は株式会社モリタが最初でした。
最初に組む企業は慎重に選ぶべきですね。なぜなら、自分のイメージが最初にできあがるところだからです。
私はモリタと組むにあたり、私のしたいことができる企業なのかを考え抜きました。企業によって、カラーが違います・若手社員が頑張って、何かを作っている企業もあれば、お役所的なところや社長のトップダウンで全て決まるところもありますので、よく見ておきましょう。
モリタは当時、名もない私を「担ぐ」と最初に言ってくださった企業です。地方にもよく行きましたし、小さい仕事もたくさんくださって、バックアップしていただきました。
今は色々な企業で講演などをしていますが、これらの企業は私がフリーランス歯科衛生士として有名になってから依頼をくださるようになったところばかりです。
だから、私が有名になったのはモリタのお蔭ですね。

企業とはどのような契約なんですか。

私はモリタとも、ほかの企業とも契約をしているわけではありません。
セミナーや講演の費用を1回ずついただいています。
モリタは寛大で、ほかの企業と仕事をすることの規制はないんです。
ただ、年間での講演数ははじめに決まっています。
デンタルショーで商品の説明をする仕事もありますが、同じデンタルショーで3社の商品説明に走り回ることもあります。でも私は1企業1商品が鉄則ですので、ほかの企業の同じアイテムを「この商品はいいですよ」とは絶対に言わないですね。