歯科経営者に聴く - 平沼歯科クリニック 平沼一良院長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニック 平沼 一良 院長

川崎市宮前区の住宅地にある平沼歯科クリニック。
ここでは「成人総合歯科」と銘打ち、成人を対象とした幅広くハイレベルな診療を提供している。この医院のユニークさはホームページによく表れており、平沼院長の「哲学」とも言える治療姿勢を打ち出している。
歯科の診療分野から幅広い趣味まで「様々な分野を極めるのが好き」とおっしゃる平沼院長にお話を伺った。

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニック 平沼一良 院長

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニック 平沼 一良 院長

プロフィール

  • 神奈川県横須賀市出身
  • 1979年3月、日本歯科大学卒業
  • 1983年、日本歯科大学大学院(博士課程)生理学修了
  • 1983年、平沼歯科クリニック開業

【学会 他】

  • 社団法人日本歯科先端技術研究所理事、指導医
  • 日本歯科東洋医学会理事
  • 日本全身咬合学会指導医
▼クリックして展開▲クリックで閉じる

開業まで

学生時代のエピソードをお聞かせください。

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニック学生時代のエピソードをお聞かせください。
大学1~2年の頃は美術部に所属したり、仲間と登山をして楽しみましたが、3年生からは勉強意欲に燃え、特に解剖に関心を持って取り組みました。3年生の夏には自分の大学の解剖学教室に通い詰めたのですが、4~5年生の時には、うちの大学にも教えに来てくださっていた慶應義塾大学の病理解剖学の教室に通いました。その際、非常に貴重な体験をする事になりました。その日、亡くなったばかりの方の身体を午後に解剖して癌など悪い組織を切り取りホルマリン漬けにして病理検査に回します。それを随分やりました。主に癌で亡くなった数多くの患者さんを見る中で「西洋医学では癌は治しきれない」という考えを持つようになります。慶應大学という日本の一流大学で手術・入院していた患者さんが治らずに数多く亡くなっていった訳ですから。もちろん治った人は病理解剖にまわされない訳ですが。その頃から「自分も癌年齢の60~70歳になった時の為に西洋医学的なものとは違う癌に対する方法論を模索しておかないと」という考えがムクムクと芽生えてきた訳ですよ。この体験は後の「ニュートリション」というサプリメントへの傾倒へとつながってきます。

また、大学院時代には、二夏に渡り沖縄にある知り合いの先生の診療所で治療するという体験をしました。沖縄は暖かいから化膿疾患が多いんですよ。かなり大勢の人数を経験できましたね。当時はアメリカから復帰して数年しか経っていなかったから健康保険を持っている人ばかりではなく、アメリカの自由診療の癖がついていたので自由診療の事も随分分かりました。そういう意味ではかなり色々な治療を経験できましたね。
ちょうど車が右側通行から左側通行に切り換るタイミングだった事もあり、交通は大混乱してバスで15分の通勤距離を自分の足で走ったりもしました。「沖縄時間」というのんびりした雰囲気もあり印象深い思い出になっています。

大学院を修了してすぐに開業された訳ですか?

そうです。ただ大学院が当時は大体夕方5時頃までやれば夜は自由にさせてもらってましたので、夜はずっと診療していました。土曜日は大学院が休みなので一日診療していました。自分の休みは日曜日だけでした。という訳で4年間診療していましたからそれなりに力はつけていました。

成人総合歯科

「成人総合歯科」を志されたのが開業されて数年後ですか?

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニックそうですね。5年目位から徐々に芽生えてきて、7~8年目位ですね。ホームページにも書いているように、成人向けの難しい治療を本格的にやっていこうと思うと、子どもがスリッパでパタパタ走り回っているような環境では無理だと判断しました。そして専門職というか自分にしかできないような仕事を極めていくという形で行こうと。歯周病に関しても癌と同じで西洋医学的なものだけでは本質的には治らないんじゃないか、と考えているんですよ。
だから今主流の治療法とは少し距離を置いている。それを否定する訳じゃないんだけど、少し距離を置いた自分独自のやり方を構築しようとしているんですね。もちろん従来の治療法は必要なんですよ。当院でも行い、それは好評を得ているし。

ホームページを拝見していて、手掛けられている一つ一つの分野が、かなりハイレベルに見えますが?

そうです。特に非抜歯矯正なんていうのは、矯正を習得するのは10年位がかかるんですよ。相応に習得するまで「これでもか! これでもか!」って言う位努力しないといけない。矯正というのは実力がはっきり表れるんですよ。動くか動かないかなんです。いくら偉そうな事を言ってもワイヤーテクニックで動かないものはダメなんです。いいものはスーっと動いていきますから。歯周病の場合は「診療できる」といってもどのレベルまで?というのがありますが、矯正の場合ははっきりしているから。できないのに「できる」とは言えないはず。特に成人矯正は難しいですから。

先日「30代位まではほとんど休みもなく働いて腕を上げた」というお話を伺いましたが?

今も休みは無いですよ(笑)。

そこまでご自分を駆り立てていく原動力となっているものは何でしょう?

いい質問ですね(笑)。基本的には勉強好きではないけど、立ちはだかる山があった場合、それをツルハシやスコップで綺麗にどかしていきたいんですよね。自分が前に進んでいく上で。一つの山をどかすのに3年位かかるんですよ。山がどくと、しばらくまた進んでいくんですよ。するとまた新たな山が立ちはだかるんですね。矯正だとか。
それをまたどかしてね。基本的には自分は遊びたい訳です。山をどかしてどかして。するとまた平穏になってくるんですよ。だけどいくつも山は出てくるんで、結局いつも勉強しているような状況になってしまうんですよ。特にインプラントは、私が手掛けた頃はまだまだ発展途上だったんで。
今ではよっぽど難症例でなければ、うちに来てもらえば8~9割解決してしまう。患者さんにとっても便利なわけですよ。全て1軒で完結するから。その代わり勉強量もすごい訳ですよ。

それは若いドクターには簡単には身に付かないと思いますよ。矯正にしても何にしても。
だからそれを学びたいと思う人であれば、若いドクターでも当院はWelcomeなんだけど、どうしても今の若いドクターというのは「そんなのできない、できない」と引いてしまうんですよね。決してそんな難しい事をやらせてる訳ではなくて、簡単な所から教えてるのですけどね。ゴルフで例えると「下手を固める(=悪い癖を付ける)」前にどうぞ、って事なんですよ。

ニュートリション

本もお書きになっている「ニュートリション」に関してお聞かせください。

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニック最初に話したように、学生時代から西洋医学に対する限界を感じた部分があって、大学を卒業して「歯科東洋医学会」にほぼ創設当初から入ったのです。気功をやったり、鍼をやったり、漢方薬をやったり。漢方にかなり凝ったんですよ。歯科医として合法的に漢方は使えますから。歯周病というのは現在でいう生活習慣病、当時でいう「慢性の食源病」みたいなものだったんですよ。
食源病だと言う前提の下に、食事で治していこうとする一方、「食事だけでは難しい。食事を変えるのは難しい」という事で漢方と出会う訳ですよ。実際、漢方は効くんです。

ところが、専門家じゃないとなかなか漢方というのは難しいんです。よく「鍵が鍵穴に合わないといけない」と言われますが、非常に難しい。ある内科の漢方の大家の先生が「20年経ってやっと鍵と鍵穴が合うようになった」とおっしゃっているんですよ。
それで「鍵と鍵穴に合う」よりも、もう少し広い使えるものはないかと探していて出会ったのが、この「ニュートリション」というサプリメントだったんですよ。
格子戸をガラガラと開けるように少しずつ治っていくし、好転反応も少しずつ出るのでこれはやっぱり漢方の専門家でなくても扱い易いという事で、サプリメントに傾倒していったのです。

その原点は「癌の恐ろしさ」から来ているんですよ。学生時代に目の当たりにしてきた訳ですから。そこが出発点にあるから。著書のサブタイトルにある「歯周病から癌まで予防する」という言葉は奇異に聞こえるかもしれませんが、私が今までやってきた経験からすると決して奇異ではないんですよ。癌を予防する、というのは私の最大の使命だと思っていますからね。
癌も歯周病も同じ「生活習慣病」だ、というのは私が本を書いた3年後位に厚生省も生活習慣病として認めた概念なんですね。

プライベート

プライベートはどのようにお過ごしですか?

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニック >山に関しては軽登山ですね。高尾山とか三峰とか。後はスキーやスキューバ・ダイビング。スキューバは最近はしていませんが、ガイドの資格まで持っています。
写真や水中ビデオで賞を取った事もあります。水中ビデオは最高のグランプリでした。色々多趣味で活動していると、少しは面白おかしく本も書けるんですね(笑)。

様々な事を極められるタイプなのですね?

そうです。何事も極めるのが好きです。家でも医学の勉強していて飽きたら時代劇見たりとか、また違うゴルフの本読んだり。その都度適当に。
北海道にスキーに行ったら午前中から午後にかけて滑って、帰ってきたらシャワー浴びて着替えたら今度本の執筆を5時間位掛けてするとかね。そんな風にやるんですよ。

切り換えがお上手なんですね?

編集者にもよく言われるんだけど、右脳と左脳の切り換えがよくサッとできますねって言われるんですけど。そういう人間ですからね。

メッセージ

医療法人社団聡良会 平沼歯科クリニック若い先生は患者さんを診る機会が非常に減ってしまった。にも関わらず患者さんの要求が難しくなってきているので、若いドクターが育ちにくくなっている。
でもそれに負けず我々ぐらいできるようになって欲しい。変に治療を怖がって予防だけに走ったりしないでやって欲しいというのが若い先生への要望ですね。