歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

ともデンタルルーム 小川 知子 院長

名古屋市名東区は名前が示すとおり、名古屋市の東部に位置する。区の東西を名古屋市営地下鉄東山線が通り、東名高速道路、東名阪自動車道のインターチェンジがあるなど、名古屋市の東玄関としてのアクセスの良さを持っている。  
ともデンタルルームは東山線の一社駅1番出口の階段を上った、すぐ横のビルの4階に入居している。小川知子院長は「通うのが嫌ではない歯科」をコンセプトに、歯科医院というイメージを出さないような医院づくりを目指している。チェアでアニメや映画のDVDを見せたり、プレイルームを設置する歯科医院は増えてきたが、ともデンタルルームではそういった工夫に加えて、患者さん一人一人に専用のバーの提供も行っている。そのため「歯科関係者が通う歯科医院」としても注目を集めている。

ともデンタルルーム 小川 知子 院長

ともデンタルルーム 小川 知子 院長

プロフィール

  • 1966年に名古屋市で生まれる。
  • 1991年に愛知学院大学歯学部を卒業する。数軒の歯科医院に勤務の後、1997年に三重県伊賀市のおかむら歯科に副院長として勤務する。
  • 2004年に名古屋市名東区にともデンタルルームを開業する。
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開業に至るまで

歯科医を目指された経緯をお聞かせくださいますか?

ともデンタルルーム歯科医になりたいという強い思いを抱いていたということはありません(笑)。中学から大学まで、いわゆるエスカレーター式の学校に通っていたんですが、高校のときの担任の先生から「このまま上の大学に行くよりは、手に職をつける道を選んだらどうか」と言われたんですね。先生が背中を押してくださったという感じです。そこで最初は医学部を目指そうかと思ったのですが、知り合いの先生方が多かった歯科の方を選びました。

卒業後はどういう勤務をなさっていたのですか?

数軒の歯科医院に勤務しながら、技術を学んでいきました。そして1997年に夫が伊賀市で開業しましたので、私も副院長として勤務しました。夫は補綴を専門にしており、インプラントの症例数も多いので、勉強になりましたね。

開業はどのように決められたのですか?

開業の時期に関しては、前々から「いつ開業する」と決めていたわけではなく、「そろそろかな?」というタイミングで決めました(笑)。ただ開業する場所は生まれ育った名古屋でと思っていました。

この場所の第一印象をお聞かせください。

ともデンタルルームたまたま通りがかって、「ここがいい」と思いました(笑)。即決でしたね。守山区に住んでいますので、私自身も通いやすいところがよかったんです。ここは駅の横ですし、「一社のミニストップ」と言えば、この辺りではお馴染みの場所です。以前はミニストップだけの建物だったのですが、ビルになったんです。1階にミニストップが入り、私どもは4階に入りました。開業してしばらくして、隣りにビルが建ったのですが、一社メディカルステーションという内科や整形外科、眼科が入居するクリニックビルになったので、それも幸運でしたね。

個室が2室もあって、贅沢な作りですね。

ともデンタルルームホワイトニングやクリーニングには時間がかかりますので、個室の方が気分的にいいみたいですね。患者さんも他の人に聞かれたくない話などがあるでしょうし、治療の後で歯科衛生士とゆっくり話せるスペースになっているようです。患者さん一人一人が生活のパターンが違いますので、歯磨き指導も違うんです。出張が多い人などはよく相談されているようですね。ただ、個室にご案内するのは大人の患者さんだけです。子どもさんは締めきった空間だと怖いようですので、「半個室」のようなパーテーションのある空間で治療しています。半個室はチェアが3台です。

最初からチェアは個室2台、半個室に3台だったのですか?

半個室の方は最初は2台だったんですが、途中で1台増やす予定にしていました。スタッフも個室をうまく活用していて、定期健診のご案内などを話していますよ。定期健診は一応はがきを出していますが、「そろそろはがきが来る時期だから」と自ら日にちを決められる患者さんもいらっしゃいます。「給料日だったから」といらっしゃる方もいますね(笑)。 汚れるタイミングをみて、「3カ月に1回でいいですよ」と言っているのに、1カ月に1回きちんといらっしゃる方もいて、個室でのクリーニングや指導が根付いてきたのかなと思っています。

患者さんの層について、教えてください。

ともデンタルルーム午前中は女性がメインですね。中でもお母さんと小さな子どもさんという患者さんが多いです。歯科に通院するために、子どもさんをよそに預けなくてはいけないという話も聞きますが、私どもでは個室ですから授乳もできます。妊婦さんの産前の健診をしていますが、やはり産後が大切なんですね。産後すぐから、クーファンに赤ちゃんを載せて、来院される方も多くなってきました。お子さんのためのプレイルームでもスタッフが必ずついて、一緒に遊ぶようにしています。

代診の先生は何人いらっしゃるのですか?

2人です。医院の中に女ばかりがいると、威圧されてしまうようなので、代診の先生はなるべく男性をお願いしています(笑)。1人は愛知学院大学の大学病院で顎関節の研究をしてきた先生で、様々な知識を交換しあっています。夫も時々来ています。

審美歯科にも力を入れていらっしゃいますね。

「ホワイトニング専門かと思われることもあるようですが、そんなことはありません。ホワイトニングや普段の汚れ落としはなるべくやっていきたいと思ってはいますが、あくまでも虫歯や歯周病の治療の方を優先させています

インプラントはいかがですか。

こちらでは「症例があれば」という感じでしょうか。夫のおかむら歯科では積極的にやっています。私も勉強会や講習会などに参加して、勉強はずっと続けています。

経営理念

経営理念について、お聞かせください。

ともデンタルルーム全ての分野を広く浅く学んでいくのは難しいので、「基本的なことをしっかりと」ということにつきますね。そのうえでコンセプトである「歯科医院らしからぬような診療所」でありたいと思っています。1人の意見に固執することなく、歯科医師3人が意見を出し合いながら、診療に取り組んでいます。同じ大学で学んだからこそ、共有できる部分も多いですね。そして専門的な内容は専門のドクターに尋ねて、質の高い連携が行えるようにしています。

若い歯科医師の教育に関してはいかがでしょうか。

基本を覚えなくてはいけないので、最初が肝心ですね。4、5年目になってきますと、カルテのとり方などに悪い癖もつき始め、それを治すのも大変です。せっかく蓄積した良いところも生かされなくなってしまいますからね。将来、開業したいという先生であれば、なおさら技術習得が大事ですから、きちんとした就職先を選ばなければいけません。その点、私どもでは私や他の先生方が体験してきたことを教育しています。全ては患者さんのための教育です。

若いときには頭で分かっていても、手が動かないということもありますよね。

ともデンタルルーム「今から~する」と言われれば、「こんな失敗があるよ」とか「~なことはしてはいけない」といった具体的な事例を挙げて、指示しています。それから経験はまだでも、知っておいた方がいい症例などのときは積極的に声をかけています。それから衛生士など、他のスタッフとのコミュニケーションについても丁寧に指導しています。

スタッフ教育については、いかがですか。

衛生士が非常勤を含めて4人、歯科助手は学生アルバイトを含めて4人いますが、スタッフとのコミュニケーションは歯科経営にあたって大切にしていることの一つです。スタッフには「家より長い時間をここで過ごすんだから、とにかく仲良くやってください。皆さんの仲が悪いと、患者さんへの対応にそういった雰囲気が出てしまいます」といつも話しています。新しいスタッフや若いスタッフが入ったときにはチーフが中心になって、指導しています。注意されるのが苦手なスタッフもいますし、どのタイミングで、どういうことを言うかなど、チーフとはよく話し合います。私も育児と両立させて仕事してきたので、スタッフが学校行事など子どもさんのことで休みたいときには融通させるようにしています。女同士ですので、お弁当に入れるおかずのことなど、話題は広がりますね(笑)。

増患対策

増患対策について、お聞かせください。

ともデンタルルームホームページにバーをキープ制にしていることを載せているので、そのページをご覧になって来院される方が多いんです。他の歯科医院にお勤めの方も多く来院されています。大人から子どもまで一人一人の分を保管しています。それからコップ、トレー、エプロンも使い捨てにして、ミラーなどのセットはそれぞれパックして滅菌するなど、衛生面に力を入れていることが増患対策になっているのかもしれません。子どもさんの治療に満足したら、お母さんが患者さんになるというケースも多いですし、女性の患者さんにはそういったアピールは大事ですね。

専用バーを始めたくても、コスト面から諦めてしまう歯科医院も多いようです。

確かにコストもかかりますし、スタッフの仕事も増えます。でもスタッフが「私たちが患者なら、専用のバーがいいですから」と言ってくれるんです。経営方針がスタッフに浸透していることも嬉しいですね。

治療後は待合室でおしぼりも出るんですね。

女性目線でのサービスを心がけています。待合室の横のメイクアップコーナーやブラッシングルームも好評をいただいています。それから徹底した掃除ですね。主婦の方はご家庭で掃除をされているわけですから、診療所の中のほこりなども目についてしまうと思うんです。私どもでは土足のままですし、雨の日などは汚れやすいです。スタッフが雑巾を持って走り回っていますね(笑)。代診の先生方にも掃除の大切さは折に触れてお話ししています。

今後の展開

早い時期に開業したわけではないので、専用バーにしろ、化粧コーナーにしろ、以前から構想していたことを開業と同時に実現させることができました。ですから、今すぐに新しいことを始めたいという具体的なビジョンはないですね。ただ、スタッフ皆が働きやすく、患者さんが通いやすい歯科医院であり続けたいという願いを持っています。

開業に向けてのアドバイス

自分に余裕がないと、自己中心的になってしまいます。余裕を持てるように、まずは基本を学んでほしいですね。焦っているときでも、患者さんの口の中だけではなく、患者さん自身を診なければいけません。最近の大学ではコミュニケーションについても、指導されているようですが、そういった訓練の成果がドクターの椅子に座ったときにも発揮できるのでしょうか。時々、患者さんの質問とかみ合わない返事をしている若い先生もいます。歯科は「行きにくい」場所の一つであるからこそ、帰るときに「来てよかった」と気分よくなっていただきたいものです。技術だけでなく、そういうことを学べる歯科医院に勤務し、患者さんの話をきちんと聞き、読み取る力をつけるということを勤務医のうちにしっかり体得してほしいですね。

プライベート

温泉に出かけることが好きですね。伊豆に気に入っているホテルがあるんです。ゴルフは高校から始めたので、キャリアは長いのですが、スコアは「普通に回れる程度」です。高校1年の息子の方が飛ばしますね。それが悔しくて、あまり行かなくなりました(笑)。

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