歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する理事長から学ぶ~

坪田歯科医院 院長 坪田 康徳

坪田歯科医院 外観

兵庫県姫路市八代東光寺町は世界遺産である姫路城の北側に広がる住宅街である。姫路市立図書館の本館である城内図書館や兵庫県立大学姫路環境人間キャンパスも近くにあり、静かな環境である。
坪田歯科医院はその八代東光寺町に位置する。1997年に坪田康徳院長がお祖父様から継承し、現在は上海にも分院を展開している歯科医院である。
今月は坪田歯科医院の坪田康徳院長にお話を伺った。

坪田歯科医院 坪田 康徳 院長

坪田歯科医院 院長 坪田 康徳

プロフィール

院長 坪田 康徳
1968年 生まれ
1993年 日本歯科大学新潟歯学部 卒業
1993年 医療法人社団船洲会 船木歯科診療所 勤務
1997年 坪田歯科医院 継承
2012年 上海で城田口腔診所 開設

  • 【学会 他】
  • 日本口腔インプラント学会専修医
  • 臨床研修指導歯科医資格取得
  • 歯学博士
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけをお聞かせください。

祖父が歯科医師だったのですが、私自身は何か人のためになる仕事がしたいと思っていたので、そういった仕事の中で歯科医師を自然に目指していました。

大学時代はどんなことが思い出に残っていますか。

当時の歯科学生は勉強がそんなに大変ではなかったので、剣道ばかりやっていました。私は運動が得意な方で、剣道のほかにも2年間ほどアメリカンフットボールの手伝いもしていました。本当に運動中心の毎日で、机の前よりも体育館やグラウンドにいた時間の方が長かったですね(笑)。
剣道部には1年下の学年の部員がおらず、私は2年間、主将を務めていましたが、人の管理や皆に気持ちをどう持たせるかなどは非常に勉強になりました。練習はもちろん、上下関係やマナーも厳しかったです。でも、礼儀や体力だけでなく、自分でやったことに対して、責任を持つことなど、部活動で学んだことは全て現在の仕事に役に立っています。
大学の場所が新潟でしたので、皆が大学の周りに住んでいました。東京の大学に通うよりは濃い付き合いができたと思いますし、今も大学時代の先輩、同級生、後輩と長く、仲良く付き合っていますし、大切な友人関係ですね。同じ大学に入ってくる人は割と二代目が多く、都会の歯科医院の子どももいれば、田舎の歯科医院の子どももいて、色々な出身地やタイプの人がいました。そこで様々な歯科医院の情報も入ってきましたので、ある意味では人脈づくりができました。

卒業後に勤務先として、船木歯科診療所を選ばれたのはどうしてですか。

私は開業医になると決めていたので、その前にできるだけ大きな医療法人に勤めたいと思っていました。当時、船木歯科診療所は神奈川県で最大級規模に近い歯科医院だったのです。船木毅理事長が大学の先輩であることもあって、選びました。その頃の船木歯科診療所にはスタッフが100人以上、歯科医師だけでも20人近くいました。厳しかったこともありましたが、勉強になることも多く、かなり成長できました。今の私の基本となっていることは船木歯科診療所で研修したことですね。

船木歯科診療所での勤務でどんなことが勉強になりましたか。

一般歯科はもちろんですが、当時はまだ珍しかったインプラント手術などについても見学させていただき、非常に勉強になりました。技術だけではなく、患者さんに対する医療の提供の仕方、医療サービスについても勉強させていただきましたね。そこで4年ほど勤務させていただきました。開設者である船木理事長は既に引退されていますが、引退後も年に何回もお会いしています。私の人生の師匠として、今でも色々なアドバイスをいただいており、非常に有り難く思っています。

開業しようと決断されたいきさつをお聞かせください。

開業のきっかけは祖父の体調が悪くなったことです。そのときは大学にも残りたい、もう少し研修したいという思いもありましたが、実家の状況を考えれば、何としても早く帰る必要がありました。坪田歯科医院は祖父が開業していたものの、当時は患者さんがあまりおらず、継承というよりも、開業のし直しに近い感じでしたね。開業医になったとは言え、まだ研修していない部分もあったので、神戸大学で学んだり、ほかの歯科医院の見学をしたり、講習会などにもよく行っていました。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

一口腔単位として、できるだけトータルで治療することを心がけています。もちろん、最初は主訴である、患者さんの困っていることやお悩みの解決をしますが、次に患者さんが気づいていないところを提示してさしあげることで、一口腔単位全体が良くなっていただければということを常に念頭に置いて仕事をしています。

診療方針

どのような診療方針なのですか。

インプラントや審美を含めて、様々な治療のプランを提示し、患者さんがそのプランの中から選んでいただいたうえで、治療を進めていきます。保険や自費にこだわらず、色々な内容を提示し、その中で患者さんが選んで治療をしていく形を目指しています。

上海に開業されたきっかけを教えていただけますか。

たまたまご縁があったのです。私の妹二人も歯科医師で、一人はフランスに住んでいるのですが、育児が中心の生活で、歯科医師を休んでいます。もう一人はアメリカに住んでいて、10年以上かけてアメリカの大学に行き直して、歯科医師免許を取得しました。今年ようやくペンシルベニア州にて開業したのですが、かなり苦労したのです。そのような環境でしたので、私も早いうちから海外に目を向けていました。多くの国で日本の歯科医療のニーズがあることは分かっていましたが、日本の歯科医師免許が使える上海を選びました。色々な関係業務も整い、スムーズに開業することができました。ただし、やるのは簡単ですが、継続して、しっかりしたものを作り上げるのは非常に難しいですね。

上海の歯科医院で日本人の歯科医師を雇用するにあたって、どのような配慮をなさっていますか。

海外での治療は日本と違い、1日に何十人もの患者さんを診ることはまずありません。上海の私どもでは歯科医師1人あたり、1日5人から8人の患者さんを診療しています。インプラントや矯正治療が多いですね。 海外での勤務にあたっては色々な不安があるでしょうから、歯科医師が安心して働ける環境を整えることが最も大事だと思っています。例えば、私どもではビザの取得のサポート、子どもさんの教育補助や就学相談などを行い、家族と一緒に海外の生活が気楽にできるようにしています。
院内で使っている材料も日本製です。一番の不安は言葉でしょうが、スタッフや歯科衛生士、看護師が日本語を話せますので、診療時の通訳対応をしてもらっています。

上海で開業したとき、どんなことに苦労されましたか。

日本とは考え方が全く違う中で、準備をしたことです。開業するにあたっても、中国では開業申請をする前に全部の設備、材料、人員を揃えないといけません。先に準備をしたうえで許可をもらうということが日本との大きな違いでしょう。場所を借りて、スタッフを雇って、ものを揃えてから申請しても、却下されるとなるとまた振出しに戻ってしまいます。

上海での開業で、良かったことはどんなことですか。

自費診療メインで仕事ができるのは歯科医師として幸せなことです。自分が持っている技術を磨いて、今後も患者さんに良い治療を提供していきたいと思っています。中国の歯科治療評価は日本と違います。中国では保険点数が決まっていないので、技術に対する評価も高いですね。したがって、自分の技術を高めていかないと、それに見合う患者さんの満足度を得られません。また、歯科部は医学部の中の専門分野の一つというカテゴリーに入り、アシスタントも看護師が行います。日本とは大学教育の出発点から違います。これは私は大切にすべきことと思っています。
中国で歯科衛生士をという方がいますが、現状の看護師のみがアシスタントを行うシステムを私は大切に考えています。

中国で成功するために、必要なことをお聞かせください。

やはり歯科医師の治療技術を磨くことではないでしょうか。国によって、歯科の事情は異なります。日本は保険をベースにしたうえで、そこから自費になっていきますが、中国は100%自費なので、患者さん一人に少なくとも1時間の予定を取って、治療しています。治療計画を立て、治療に結びつけるため、どう頑張っても1日に10人しか診られません。時間の取り方、間の取り方も日本とは違いますので、日本のやり方で海外展開すると100%失敗します。

上海のみならず、本院でもどのようなスタッフ教育を行っていますか。

勤務医やスタッフとの関係を大事にしています。お互い尊重し合って、チームとして仕事をしていく大切な仲間ですから、強制したり、ルールで縛ることはあまりありません。勤務医やスタッフの自主性を尊重することで、皆が伸びてきました。ですから、私がスタッフにこうしろ、ああしろとは言わないですね。一人一人が考え、チームとしての方向性を持って行動したり、頑張ってほしいといつも考えて実践しています。

スタッフ教育

歯科医師教育についても、お聞かせください。

既卒の歯科医師に対してはそれまでの経験を尊重したうえで、新しいものを学んでほしいと思っています。新卒の歯科医師の場合はそれまで勉強して得たものと臨床が始まってから得たものをうまく合わせていくことが大事だと思っています。「勉強は勉強、臨床は臨床」ではなく、勉強と臨床の2つを合わせ持った、いい歯科医師になるように、しっかり面倒を見ていきたいですね。また、中国の歯科医師は医師と同じというプライドを持って教育も臨床もしています。日本でも胸を張っていただきたいです。

女性の歯科医師に人気の勤務先ですが、人気の秘訣はどんなところにあるのでしょうか。

女性の歯科医師は生活のスタイルが多様ですから、持っている時間を有効活用してもらいたいです。私どもでは空いている時間や希望の時間帯に仕事をすることが可能ですので、気軽に相談していただいています。この地域で長く開業している歯科医院ですし、ホームドクターとして活躍できる環境であると自負しています。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

日本だけではなく、機会があれば、またさらに海外にも分院を出したいと考えています。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

初心や自分のやりたいことを忘れないようにしてください。今は大変な時代ですが、自分のやりたいことをしっかりやることによって、必ず成功に繋がります。

プライベート

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

最近はロングドライブですね。中国やアメリカの免許も持っていますから、今年はカナダからアメリカ縦断と中国雲南省からラオス国境近くまでの長距離ドライブに行きました。 秋は台湾でもドライブデビューします。歯科医院の仕事が忙しいだけに、非常に楽しみな時間ですね。