歯科経営者に聴く - 安岡デンタルオフィス 安岡大志理事長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人 翼翔会 安岡デンタルオフィス 安岡 大志 理事長

安岡デンタルオフィス 外観

大阪府吹田市は「太陽の塔」でも知られるように、大阪万博の開催地である。現在は大阪市のベッドタウンであり、37万人以上の人口を有する。
安岡デンタルオフィスは吹田市豊津町に2007年に開業した歯科医院である。最寄り駅は大阪市営地下鉄御堂筋線、北大阪急行の江坂駅で、徒歩2分の立地である。安岡デンタルオフィスでは「2つの笑顔作り」を診療方針とし、保険診療のみならず、インプラントなどの高度先進医療まで幅広く提供している。
今月は安岡デンタルオフィスの安岡大志理事長にお話を伺った。

医療法人 翼翔会 安岡デンタルオフィス 理事長 安岡 大志 先生

医療法人 翼翔会 安岡デンタルオフィス 安岡 大志 理事長

プロフィール

  • 2001年 大阪歯科大学 卒業
  • 2007年 安岡デンタルオフィス 開設
  • 2010年 医療法人 翼翔会 安岡デンタルオフィス 開設
  • 2015年 医療法人 翼翔会 ヨクシオファミリー歯科住道 開設
  • 【学会 他】
  • 大阪SJCD(日本口腔インプラント学会)
  • ICOI (国際口腔インプラント学会)
  • AAID (アメリカインプラント学会)
  • JAID (Japanese Academy For international Dentistry)
  • OJ (Osseointergration studyclub of Japan )
  • 大阪SJCD (Osseoinergration studyclub of Japan)
  • 大阪歯科大学細菌学歯学博士
  • ICOI(国際口腔インプラント学会)指導医・認定医
  • AAID (アメリカインプラント学会) 認定医
  • 厚生労働省指定臨床研究施設指導医
  • 一般財団法人 野口英世医学研究所 歯科部会 役職 理事
  • JAID 理事
  • カムログ公認インストラクター
  • 南カリフォルニア大学歯学部客員研究員
  • 日本口腔インプラント学会
  • OJ 正会員
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開業に至るまで

歯科医師を目指したきっかけをお聞かせください。

きっかけは両親から「手先が器用だから、歯医者さんになってみたら」と言われたことでした。父親は商売をやっており、姉は医学部へ、兄は工学部に進学していたのですが、私は歯学部に進学することにしました。また、仕事としても「ありがとう」の言葉をいただけるやりがいのある職業は医療職しかないのではと思ったことも理由です。

歯科医師になって、やり甲斐を感じたことを教えてください。

自分が腕を振るうことにより、患者さんからいただく「ありがとう」の言葉です。今の私であれば、習ってきたことを具現化することができます。患者さんから「ありがとう」の言葉をいただけると、今までやってきたことの全てが肯定される気がしますね。モチベーションも上がりますし、やっていてよかったなと思います。

大学時代はどんなことが思い出に残っていますか。

私が入っていた体育会のボート部には規律と上下関係がありました。そこで鍛えられたことは歯科医師の仕事に役に立っていますね。患者さんはほとんどが目上の方ですし、大学時代に目上の方に対する話し方などの対応はとても勉強になりました。また、関西一円での大きなサークルの代表を務めていました。そこで人脈作りができました。放送局やタレント関係の人脈はそのときからのものですね。

勤務先を選ばれた理由を教えていただけますか。

私は「患者さんに対しての思いを共有できる院長」、「技術的なうまさ」、「その院長と一緒に仕事をしたいかどうか」という観点を大切にして、仕事を探していました。
最初の職場は先輩からの紹介です。尊敬している先輩の紹介だったので、私にとって良いところかと思いましたが、結局はすぐに辞めることになりました。理由は診療内容が私の求めていることとマッチしなかったからです。その経験から、自分で探さないといけないのだと分かりました。「人から言われたから行ってみよう」ではいけないのですね。紹介であっても、まずは足を運び、理念、診療方針、人への思いを確認しないといけません。
そこで、「触らせてくれる」、「触らせてくれない」という観点で探しましたが、やはり患者層の良い歯科医院、良い治療を提供している歯科医院、歯に対して本気で考えている院長を軸に探すようになりました。そうしたら、次の勤務先に出会ったのです。

次の勤務先で学ばれたのはどんなことですか。

保険診療はもちろんですが、インプラントなどの治療も学びました。色々な勉強会に行かせていただいたのです。勉強会で「あの先生の弟子」と言われたりすると、面映ゆいものです。その積み重ねで遣り甲斐も出てきましたし、尊敬できる先生方との出会いによって、今の私自身を形成できた気がしています。
しかし、私たちが若かった頃は給料が安く、初任給は手取り16万円ぐらいでした。週休1日で、勤務時間は朝9時から夜9時まででしたから、今では考えられないですね。今の研修医はお金をもらいながら習うのが普通ですし、歯科医院のシステム化は必要でしょう。

グローバルに歯科治療を学んでこられたのですね。

大学5年生のときから先輩との繋がりで海外の勉強会に行っていましたので、海外で世界的な治療を目指すことを決心していました。その頃も面白かったですが、それを具現化できるようになったのはその勤務先で働いていたときです。
海外には保険診療がないので、患者さんが良い治療だと認めてくださるなら、お金を惜しみません。したがって、最善の治療ができますね。
当院も患者さんを第一に考えた、より良い治療を提供しています。保険診療にとらわれず、自由診療も柔軟に取り入れているのはそのためです。CTやインプラントなどの最新機器を導入し、世界トップレベルの自由診療を行っています。もちろん、保険診療もきちんと行っていますが、できる範囲がありますので、その範囲で全力を尽くしています。
現在も海外の先進治療を吸収するために、海外の学会にもよく参加しています。海外で学んだ知識を月に1回、当院の歯科医師のみならず、外部の歯科医師も含めて勉強会をしています。

勤務医時代はインプラントに打ち込まれてきたのですね。

2年目のときからインプラントをさせていただくようになりました。勉強会に行きながら、「こんな治療を習ってきたので、治療させてもらえませんか」と患者さんに直接、提案して、治療させていただいたのです。最初のインプラント治療は朝の4時からでした。院長に「インプラントをできるようにしたいのですが、どうしたらいいですか」と尋ねたら、「ここまで勉強したのだから、やってみなさい」とおっしゃり、院長がアシスタントについてくださったのです。もちろん、患者さんには初めてのインプラント治療だと伝えましたよ。
当院もそうですが、患者さんで練習するわけにはいきませんから、合格点レベルの治療を提供する必要があります。そのために練習して努力すれば、誰でもできるようになります。私はそうやって経験させていただいたので、当院でも積極的に取り組ませています。まずは勉強会のコースを受講させ、知識がついた段階で豚模型を使った練習をさせます。そして、比較的、簡単な症例を選んで、一緒に手術に入ります。

開業しようと決断されたいきさつをお聞かせください。

私は勤務医として5年間、勤務しました。当時は歯科医師が開業するのは当たり前でしたし、開業しないと話にならない時代でした。開業していないと、勉強会でも「お前は話に乗ってくるな」という風潮がありましたね(笑)。
私は高知県出身なので、地元に戻るつもりでしたし、それに合わせて開業準備をしていたのです。しかし、勤務医時代にインプラントなどの自費診療を多く経験しましたので、何人もの患者さんが「高知県に帰らないで、私たちの治療を続けてほしい」と話し合いの場まで設けてくださったのです。そこで、江坂駅の近くで開業することにしました。

開業地をどのように探したのですか。

最初は立地で探しました。見つけた場所は最高の立地でしたが、家賃がとても高かったのです。歯科医師会に挨拶に行ったときは「1年後はそこにいないでしょう」と言われましたが、既に10年います(笑)。自分が思い描く成功のコンセプトに則って開業しないといけないですね。

開業当初に力を入れたのはどんなことですか。

患者さん一人一人への対応ですね。ただ、「うまくいく」という概念もそれぞれの考え方によって違います。患者さんが多いとか、患者さんが少数でも思いの丈での治療ができるのかということですね。治療は医療なので、お金ではありません。医療で考えたときに何が成功なのかを考えるべきだと思います。

診療理念をお聞かせください。

「2つの笑顔作り」ですね。私たちは「一生、歯があり、美味しく食事ができ、最高の笑顔ができることが幸せな人生の一部であると信じて、治療を通じて2つの笑顔作りを患者さんにご提供したいのです。
1つ目の笑顔は「私たちが治療させていただき、それによりできあがる、外見的な美しさを伴った笑顔」です。2つ目の笑顔は「患者さんに治療してよかったと思っていただき、心から笑っていただく、内面から湧き上がる美しさを伴った笑顔」です。
患者さん一人一人が異なった価値観をお持ちですし、年齢や口腔内の状態も様々です。患者さんご自身に最高の状態を目指していただきたいと考えています。

自費と保険の割合はいかがですか。

6:4ですが、保険点数は一般的な歯科医院の約2倍ありますから、若手歯科医師がやってみたい治療は目の前に多くあるはずです。教科書や歯科の雑誌に載っている治療など、ほぼ全ての症例を目の前で診ることができるのです。そして、分からないことがあれば、すぐに教えを受けられる環境になっています。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

私と私の妻、そしてスタッフ、患者さん、当院の法人に関わる全ての方々を幸せに導くのが当院の経営理念です。皆を幸せに導くことが我々の目的であり、目標です。スタッフが幸せを感じていないところに患者さんの幸せはないし、患者さんが幸せを感じていないところに経営者の幸せはないし、私が幸せでないところにスタッフの幸せもないと考えています。家族を幸せにしたくて仕事をしているわけですから、家族を幸せにすることができなかったら、歯科医師として何が成功なのかということです。
目的のために、どういうふうに目標を立てるのかも最初から決まってきます。人生の目的があり、こうなりたいというビジョンを皆と共有したうえで、そのビジョンに対して、どのような目標を立てれば、自分がなりたい人になれるのかを計画するのです。計画すれば、必ず日々の実践に落とし込みます。皆を幸せにするのはなかなか難しいことですが、難しいと言っても仕方ないので、粛々と努力することが私の存在する意味だと思っています。

■ 「第4回歯科甲子園」の「患者満足度部門」で優秀賞を受賞されました。患者さんの満足のために力を入れていることはありますか。

患者さんに満足していただくためには従業員が満足していないといけません。患者さんだけ満足して、従業員が疲弊していると何も与えることができないでしょう。従業員が仕事を全うできて、患者さんに何を提供できるかということです。ESとCSの両方を上げていくことを強化しています。

どのような歯科医師教育を行っていますか。

毎朝の症例検討会のほか、毎週金曜日は「悩み相談室」のように、難しい治療の相談を受けています。1カ月に1回、私が経験した全ての全顎治療を教える勉強会もあります。
新卒の歯科医師は3年計画で、インプラントを含めた外科、一般の歯科治療、補綴治療などを全てマニュアル化した院内のコースで教育します。4年目になりますと、SJCD、JIADSなどの学会にも参加してもらいます。費用は当院が半額を負担しています。私はほとんどの勉強会に繋がっていますので、勉強会に行く意味があるかどうかを伝え、そのうえで希望する歯科医師に行ってもらっています。ただ「勉強しに行こう」ではなく、「この症例を勉強したい」という希望に対し、「であれば、この勉強会に行ってください」という感じですね。
院内教育は屋根瓦式で、スタッフ全員に対し、外部の講師による能力開発を行っています。また、当院は歯科医師と歯科衛生士の診療を完全に分離しており、完全担当医制をとっています。

スタッフ教育

スタッフ教育について、お聞かせください。

人材教育や能力開発の勉強会を行っています。皆で泣いたり、笑ったり、色々な勉強を受けてもらっています。私は全員と毎日、一人ずつ面談をしています。面談することで、スタッフの悩みも聞けますね。私はアドバイスするよりも、話を引き出すことにしているので、スタッフの思考が綺麗に整理されていくのですね。自分でどうするかを決められますし、自分で決めたことだから自分でするようになります。それが個人の幸せへと繋がっていくのです。こういった教育のあり方も当院の強みの一つかもしれないですね。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

私が師匠に教わった治療の世界をどこまで広げていくのかということです。歯科のみならず、患者さんの中にも広げていきたいです。海外からの患者さんもいらしていますし、日本という枠の中だけにとどまりません。同じ思いを持っている仲間を集め、同じ思いで歯科治療を向上させていきたいですね。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

何のために開業するのか、治療するのかをしっかり考えることが大事だと思います。方向性を決めて目標を持ち、そこから逆算して、自分がするべき行動をすることによって、どうなりたいのかが見えてくるのではないでしょうか。