歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

やまもと歯科クリニック 山本 恒一 院長

加茂歯科クリニック 外観

大都市である大阪市及び京都市の中間にあり、大阪府のベッドタウンとしての性格を持つ茨木市と高槻市に2つのクリニックを展開する医療法人スマイルプラン。
現在は駅近くにマンションが多数建設され、通勤・通学や買い物に便利な文教都市として住宅購入者の人気が高い立地にあり、クリニックのコンセプトは「すべてにおいて上質な歯科医院であること」。質の高いおもてなしと医療サービス、最高レベルの治療技術を患者様に提供できる歯科医院であるために今なお日々研鑽されている。
理事長は歯科医師になって5年で開業をされ、海外での研修経験も豊富で難症例のインプラントやマイクロスコープを用いたエンド治療・審美治療などを積極的に行っている。常に患者様の「健康と美」を提供できるクリニックでありたいと、より質の高い診療を目指している。
クリニックのスタッフからも、「とても笑顔が優しく、穏やかで、典型的なO型ですよ!」と笑いながら紹介されるほどスタッフとの信頼関係が構築できている、思いやりのある山本恒一理事長にお話を伺った。

むこうはら歯科医院 向原 正 院長

やまもと歯科クリニック 山本 恒一 院長

プロフィール

  • 1999年 大阪大学歯学部卒業
  • 2004年 やまもと歯科クリニック開院
  • 2007年 Clinica Malo(ポルトガル)にてAll-on-4インプラント研修
  • 2008年 スマイルプランやまもと歯科クリニック リニューアルオープン
  • 2008年 アメリカ ニューヨーク大学インプラント科CDEコース入学
  • 2009年 ブカレスト大学(ルーマニア)にてサイナスリフト研修
  • 2010年 アメリカ ニューヨーク大学インプラント科CDEコース卒業
  • 【学会 他】
  • International Congress of Oral Inplantologists
  • ICOI国際インプラント学会(認定医)
  • 日本口腔インプラント学会
  • 日本歯科審美学会
  • 日本顎咬合学会
  • Society of Japan Clinical Dentistry
  • 東京SJCD会員
  • International Society of Osseointegration
  • 大阪口腔インプラント研究会
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開業に至るまで

歯科医師を目指したきっかけをお聞かせください。

歯科とは無縁の家庭でしたので、漠然と「人と関わる仕事」で、「手先の器用さ」を活かせる仕事はないかなと考えていました。友人との話の中で、歯科医師という職業をたまたま知り、これなら両方を活かせる仕事かもしれないなと思い、目指したのがきっかけでした。

学生時代はどのようにお過ごしでしたか。

漫然と過ごしていましたね。自分が飛び込んでいく世界がどんなところか、本当に分かっていなかったし、深く考えてもいませんでした。大学3年生のときにある講座の先生にお世話になり、そのグループ会で事務的な仕事をさせていただいたのです。それによって、色々な方にお会いできるチャンスがありました。その先生に導いていただいたのですね。

では歯科学生の方々にアドバイスをいただけますか。

今の学生さんも私の時代と同様ですね。歯学部の学生にとって歯科界といえば大学が全てなのです。歯学部に入った以上、歯科医師になることは見えていても、それがどういう世界なのかは全く未知です。進路を決めていく段階で予備知識が全くない状態なのに方向性を選択するのはとても危なっかしいですし、本人にもデメリットになります。そこで、私どもでは大阪大学や岡山大学に声をかけ、学生さん対象の見学会などを行っています。学生時代の早い時点から実際の歯科界に触れてもらえるような企画をこれからも提案していきたいですね。

先生が勤務先を決められた理由を教えてください。

腕を磨きたかったので、患者数の多い歯科医院で勤務したいとは考えていました。そこで、ある歯科医院に見学に行き、院長と話をして、フィーリングが合ったからというくらいの安易な理由で決めました。でも開業までの5年半、ずっとその歯科医院に勤務しましたよ。

また、転職を考えておられる方に何かアドバイスをいただけますか。

勤務先を決めるのはとても難しいことですね。色々なこだわりを持っていても、それにぴったりくる歯科医院を見つけられないですし、あったとしても実際勤務してみたら違うということもあります。最終的には院長と話をして、自分自身と「ぴったり」くるかどうかだと思うのですが、何もベースがない状態ではその「ぴったり」という感覚すら分からないでしょう。色々なところに見学などに行くうちに、その「ぴったり」を感じるときがあるはずです。

勤務医生活5年半で、しかも激戦区での開業でしたね。

私には少々、傲慢なところがあり、最初から5年ぐらいで開業するつもりでいました(笑)。自分のやり方でどれだけやれるのか、興味もあったのです。茨木市は大学生の頃から住んでいましたし、土地勘のある立地を選定すれば勝算があると考え、税理士さんのサポートで場所を探しました。でも、私が「ここなら」と直感して、税理士さんに調査や分析をしてもらうと、「そこは駄目です」ということが何度もありました。私には根拠もなく、感覚だけの判断でしたので、「駄目」と言われるのも仕方ありません。プロの目は違うのだと気づき、ある時期からはプロに任せました。この場所はメーカーさんからの提案です。税理士さんも「ここなら大丈夫です」と後押ししてくれたので、激戦区だということはあまり気になりませんでした。

開業を考えておられる先生方へのアドバイスもお願いします。

立地はこだわらないといけないですよ。同じ投資、同じ努力でも、立地だけで大きく差が出てきます。自分では大丈夫と思っても、やはりプロの意見を聞くのは大切なことです。歯科医院単独で人を集めるのは難しいので、何かの「マグネットポイント」が必要です。私どもで言えばスーパーマーケットですね。これがあるからこそ、人が集まってくるのです。

「開業」することは歯科医師にとって最終目標なのでしょうか。

大学に残るか、勤務医として働くならばいつかは開業しないといけないみたいな風潮があるので、皆、開業しようとしていますね。そのため、今は「一人開業」の歯科医院が一杯で、これでは歯科業界は発展しません。開業したら時間もないし、マネージメントや経営など、治療のほかにしないといけないことが多くあります。日本の歯科医師のレベルは基本的に高いと言われていますが、その中で生きていくには常に勉強していないといけません。しかし、「一人開業」だと勉強する時間が持てません。皆が個々でばらばらの状態なので、集合体で大きな力にならないと日本の歯科業界のレベルアップに繋がらないのです。技術があっても、マネージメントや経営が苦手な歯科医師は少なくなく、これによって歯科医師としての平均値が低くなっていくのはもったいないです。したがって、大きな母体を作り、その中で一生、勤務医をやっていけるような環境を提案すること、マネージメントや経営といった不得意なものをすることなく、技術のスキルアップができる環境を作ることが今後の日本の歯科業界を発展させるポイントだと思っています。

理念や治療スタイル

治療理念や診療スタイルを教えてください。

当院の治療理念は「MI治療」です。MI治療というのはMinimum Intervention、最小侵襲治療です。これまでの歯科治療は治療をすることによって歯をより悪くしていました。「見た目が悪くなったからクラウンを入れましょう」、「露髄しているから神経を取りましょう」といった治療の仕方だったのですね。歯よりも固い心棒を立てて、「はい、治りました」と言ったものの、時間とともに歯にダメージを与えすぎて歯根破折するといった悪循環に陥るような治療が当たり前のようにされていたのです。
当院の治療理念である「MI治療」はなるべく天然歯を残すべく、しっかりと診査、診断を行ったうえでの治療です。もちろん、削るという選択の方が正しい場合もありますので、機能回復、構造の再構築、生物学的恒常性の回復、審美性の全てをトータルで診て、治療方法を選択しています。
ヨーロッパではエステティック、いわゆる審美歯科が重要とされていますが、日本ではまだ「治す」という感覚が強く、審美歯科が根付いていません。日本では代官山アドレス歯科クリニックの院長であり、東京SJCDの大河雅之先生をはじめとする先生方が審美歯科への取り組みを始められています。

マイクロスコープを治療に取り入れられていますね。

パスカル・マニエ先生の「ボンデッドポーセレンレストレーション」、セラミックスを歯に接着する修復方法の技術を学び、治療に取り入れています。当院ではポーセレンラミネートべニアの症例もかなり多く、こういった治療にはマイクロスコープの有効性があります。当院では2008年から使い出したのですが、アメリカのエンドデンティストにとってマイクロの使用は当たり前なのです。裸眼で完璧に治療を行ったつもりでも、マイクロで見てみたら全然できていないのが本当に良く分かりますよ。マイクロを使用することによって、治療の仕方や精度は確実に上がっています。今後は日本でも普及していくだろうし、そうあるべきですね。確かに金額も高いですし、かといって直接的に利益を生むものでもないかもしれませんが、歯科業界のレベルを上げるためには絶対に必要なものだと思います。

スタッフ採用・育成

独自の採用スタイルを作られていますね。

当院では歯科医師の採用に「カーネル採用」と「キャリア採用」という2種類の採用方法をとっています。カーネル採用はインプラントやマイクロスコープなどの高度なスキルの確立と、マネージメントのノウハウ、クリニック運営を修得していただくためのものです。院内、院外のセミナーにも積極的に参加していただけるよう、サポートもしています。平日4日と土曜日のフルタイムで勤務するスタイルです。
キャリア採用は小さなお子さんから高齢の方まで全ての患者さんに合った治療方法を学び、自身のスキルアップに活かしていただけるようサポートするスタイルです。時短勤務の正社員ですので、女性歯科医師には人気です。
現在、当院で勤務している歯科医師はほとんどがカーネル採用ですが、女性歯科医師の数名はキャリア採用です。結婚を機にカーネル採用からキャリア採用に移って働いています。人それぞれ、人生の目標は違います。ここで働く時間が人生の目標のプラスになってほしいですね。男女の違い、年齢の違い、それによって勤務スタイルに求めるものは違っていて当たり前であり、歯科医院側が強制するものではないと考えています。

最後に一言、お願いします。

私自身、歯科医師は天職だと信じていますし、これからもその思いを持ち続けたいです。若い先生方にも天職だと感じて、情熱を持って、やり続けてほしいです。周りに同じような同志がいて、楽しく経験が積めるような環境を作っていきたいですね。良い歯科医師が増えて、歯科業界がより良くなることを願っています。今後は「開業」よりも「終身雇用」の動きが高まるでしょう。そういう意味でも、歯科医師や歯科衛生士の皆さんに、一生、働き続けたいと思ってもらえる歯科医院作りをしていくつもりです。