歯科経営者に聴く - 医療法人光惠会 島田光理事長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人 光惠会 島田 光 理事長

加茂歯科クリニック 外観

大阪府茨木市山手台は茨木サニータウンの一角である。茨木サニータウンは1970年台前半から整地され、1978年にまちびらきを行ったニュータウンで、戸建住宅や公団住宅、テラスハウスなどが立ち並んでいる。
ひかり歯科クリニックは山手台3丁目のスーパーマーケットツジトミの中に2008年に開院した歯科医院である。開院以来、地域密着の姿勢を打ち出し、患者さん一人一人の訴えに丁寧に応えている。
今月は医療法人光惠会ひかり歯科クリニックの島田光理事長にお話を伺った。

むこうはら歯科医院 向原 正 院長

医療法人 光惠会 島田 光 理事長

プロフィール

  • 1978年 愛知県 生まれ
  • 2001年 同志社大学商学部 卒業
  • 2006年 福岡歯科大学 卒業
  • 2006年 京丹後市立久美浜病院 勤務
  • 2008年 ひかり歯科クリニック 開設
  • 2010年 医療法人光惠会 設立
  • 2011年 ひかり歯科クリニック(摂津院) 開設
  • 2011年 彩都歯科クリニック(彩都院) 開設
  • 2013年 ひかり歯科クリニック(枚方院) 開設
  • 2014年 ひまわりこども歯科クリニック 開院
  • 【学会他】
  • 臨床研修指導医
  • 日本歯周病学会会員
  • 日本審美歯科学会会員
  • 日本口腔インプラント学会会員
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開業に至るまで

歯科医師になりたいと思ったきっかけはどんなことでしたか。

私は数学が苦手で、文系の大学に進学しました。当時は税理士か会計士など、とにかく有望な資格を取得したいと考えていましたが、大学4年生の夏頃に医学系 大学へ編入制度があることを知り、試しに歯学部の編入試験を受験したところ、合格してしまったのです。そして、そのままの流れで歯学部に編入しました。両 親は医師ですし、どこかで医療従事者を身近に感じていたのだと思います。また、若かった頃の私は社会人になるのだという自覚が乏しく、もう少し学生をして いたいという気持ちがモラトリアム期間の延長を望んでいたのかもしれません。当時の未熟な私の心情が歯学部への編入を後押ししたのだと今となっては考えら れますね。

大学時代はどういう学生生活でしたか。

人生で一度もアルバイトや部活動を経験したことはありません。集団で行動したり、誰かの命令に従って動くということに積極的になれなかったのです。このよ うに言うと、社会性が欠落した人間だと思われるかもしれませんが、実際そうだったのかもしれませんね。だから、歯科医師になったら必ず開業医になるのだと 自分に言い聞かせていましたし、決意も固かったです。
大学時代に夢中になったのは車の運転と旅行でした。特に歯学部に編入してからは実家のある滋賀県と福岡県を毎週末のように車で往復していましたので、とに かく運転ばかりしていた記憶があります。当時はお金がなかったので、片道800キロぐらいの道のりを高速道路を使わずに往復していました。自ずと集中力と 忍耐力が鍛えられましたね。

最初の勤務先を選ばれた理由をお聞かせください。

勤務先の京丹後市立久美浜病院を選んだ理由は立地と環境でした。当時の私は地方での生活に憧れがあり、勤務医としてのスタートを切るうえでは生活環境がと ても大切だと考えていたのです。また、地方であれば高齢の患者さんがおそらく多いでしょうから、補綴治療と外科処置を学びたかった私の希望に適していると も思いました。

勤務先を選ばれた理由はどんなことでしたか。

最初に見学をさせていただいた歯科医院にお世話になりたいと、その場で決定しました。その理由は、院長と相性が良さそうだと感じたこと、多くの代診の先生がいらっしゃったこと、非常に雰囲気が明るくて自分に合っていると思ったことの3点です。

勤務先で学ばれたことはどんなことですか。

患者さんの層はやはり高齢の方が多く、私は研修医でしたので、その大半は見学していたのですが、今日の治療の基礎となることを見ている間に学ぶことができました。この病院での経験は今もとても参考になっています。

開業にあたってのコンセプトやこだわりなどをお聞かせください。

私のこだわりは開業立地の選定とコンパクトな開業です。これからの歯科医院開業で何より重要なのは立地だと思うのですが、とりわけ重要なことは開業する歯 科医院が地域の人々にしっかり認知されるかという点です。せっかく開業しても、認知されなければ、いかに腕が良かろうとも患者さんは来てくれません。そこ で、私は人々が日常生活で頻繁に利用する施設、例えばスーパーマーケット内や駅前に歯科医院を作るようにしてきました。そのため、即座に地域に認知され、 初月から多くの患者さんに来院してもらうことができたのだと考えています。

診療圏調査についてはどのようにお考えですか。

開業する歯科医師はよく診療圏調査を参考にしますが、私はほとんど意に介さないようになりました。今では日本全国、歯科医院のないところはよほどの僻地を 除けばありませんから、芳しい数値が出ないことが一般的です。時として驚くほど患者さんが集まるかのような良い数値が出ることもありますが、実際に現地を 見てみますと、そのテナントに患者さんが足を運んでくれるイメージを持てないような物件も数多くありました。私が開業している歯科医院の多くは診療圏調査 の結果が良くない物件なのですが、開院初月からレセプト100枚を割り込んだことはありません。地域の中でいかに歯科医院が認知されるかがポイントなので す。

資金面についてはいかがでしょうか。

私にはコンパクトな開業を行うべきだという確固たる考えがあります。借金の額が大きく膨らむと、何かにつけてそれがストレスを形成し、診療にも影響を与 え、私生活にまで大きく影響してきます。このご時世、歯科医院間の競争は熾烈ですし、何かの事故などでどうしても歯科医院を閉院せざるを得ないことがない とも限りません。切り詰められるところは切り詰めて、無駄のない開業を心がけています。しっかりとした事業計画書を自ら作成したうえで、元利均等で金融機 関から借り入れを行い、できるだけ短い期間で返済してしまうことが大切でしょう。

わずか6年で5つの歯科医院を持つ医療法人になりましたね。その成功のコツをお聞かせください

まず、開業場所の選定が大事ですね。開業してから徐々に患者さんに来てもらおうとするのではなく、最初から多くの患者さんが来ないと難しいです。それから 贅沢をしないことですね。自分に多くのお金を遣ってしまいますと、歯科医院に投資する余裕がなくなりますので、自分の生活を最小限にしています。できれば 最新の医療設備の導入などに資金を充てたいですからね。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

「自分自身が受けたい治療を心がける」、「患者さんの主訴に真摯に向き合う」、「歯科医療はサービス業ではなく、医業である」ですね。

診療方針

診療方針をお聞かせください。

患者さんの主訴を把握し、それを治すこと、あるいは改善することが一番大切です。そのためには患者さんとのコミュニケーションを重視しないといけません。 当院では担当医制を導入しており、一人の歯科医師が最初から最後まで一連の治療をしっかり行うことを基本的な方針にしています。

増患対策

どのような増患対策をしていらっしゃいますか。

特にこれという増患対策はしていません。しっかり治療に向き合って、主訴を解決していけば、患者さんの紹介で自ずと新しい患者さんとの出会いに繋がってい くものです。当院には最近までホームページすらありませんでした。大きな看板も出していませんが、どの歯科医院も多くの新患さんで賑わっています。

スタッフ教育

スタッフ教育はどのように行っていらっしゃいますか。

当院では朝礼、終礼は行っていません。ましてや大きな声での挨拶運動や気合い入れなどは開院以来、全く行ったことがありません。職員にそのような無意味な 教育を課すよりも、各自の持つ優しさや知性を患者さんに向けてもらうようにしています。強いて言えば、月に一度の院内ミーティングと不定期の歯科医師ミー ティングで診療方針や新しい材料、医療技術、保険の制度などの勉強を行っています。また、大森塾への出席費用などを当院が負担しています。勉強会への参加 支援も充実しています。
歯科医師のキャリアによりますが、当院では臨床研修修了後の教育には特に力を入れています。インプラントなどの華やかな治 療は注目を集めがちですが、将来の開業を見据えて、開業医として本気で成功したい若手医師に私が伝えたいことは何よりもしっかり患者さんとコミュニケー ションが取れて、保険診療の基礎的な治療がある程度、全般的に行えることです。それには限られた時間の中で確実に患者さんの主訴を聞き出し、必要な検査を 行い、その結果から正確な診断を行い、その診断に沿った治療計画を立てられるかが重要です。私も完璧にこれらを行うことは難しいのですが、一緒に考えるこ とで、キャリアアップのお手伝いができたらと思っています。多くの患者さんを診る環境を整えています。

卒後、数年の臨床経験のある歯科医師への教育に関してはいかがですか。卒後、数年の臨床経験のある歯科医師への教育に関してはいかがですか。

将来のビジョンに沿ったアドバイスをしています。特に開業を念頭に置いている歯科医師には当院のような自然体でも患者さんが集まる医院づくりと力みすぎない歯科医院経営について話すことが多いですね。

新卒の歯科医師の教育はどのように行っていますか。

新卒の研修プログラムも作っています。入職したら、自分で患者さんを診ることができるのか、4人の先輩歯科医師のアシスタントとして勉強したいのかをまず選んでもらいます。先輩歯科医師のアシスタントを選んだ人にはその後のキャリアアップのコースも準備しています。そのコースを終えたら、患者さんを担当していただきます。新卒の場合は歯科医師としての基礎を習得するのが進むべき道です。その後、インプラントや矯正を勉強したいのであれば、専門医も在籍していますので、そういった自費診療も学べます。新卒の方に是非、お越しいただきたいですね。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

今は未定です。分院を任せることができる方がいましたら、その方に合わせる形で分院を出すことも考えています。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

やはり地域の選定ですね。そのほかのポイントに関しては「このように開業したらいいですよ」というつもりでアドバイスをさせていただいた「新規開業分院展開における黄金の法則」というDVDを出版しましたので、是非、ご覧いただければと思います。

プライベート

プライベートの時間はどのようにお過ごしでいらっしゃいますか。

休みの日にはバイクや車に乗って旅行することが多いです。海外旅行も好きですね。様々なものや風景を見ていると、いいアイディアが自然に湧いてきます。旅 をしているときには色々なことを考えています。私は考える癖がついた人間ですが、考える力を身につけることが大切ですね。プライベートの時間はセミナーに 多く参加するよりも自分が好きなことをした方がいいでしょう。当院の魅力は、旅行のためでしたら最大で2週間の休みが取れることです。旅好きな方に是非、 おいでいただきたいと思います。




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