歯科経営者に聴く - 小林歯科医院 小林大介院長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

足立インプラントセンター 小林歯科医院 小林 大介 院長

加茂歯科クリニック 外観

東京都足立区東和は足立区の東部に位置し、環七通りに接している。最寄り駅はJR常磐線の亀有駅で、駅前は賑やかな商店街となっている。北口の商店街の先に東京都保健医療公社東部地域病院があり、病院を境に閑静な住宅街へと町並みが変わる。
足立インプラントセンター小林歯科医院はその住宅街の中に2013年5月に開業したばかりの歯科医院である。小林歯科医院では「新世代の歯科治療」との信念のもと、保険診療、インプラントなどの自費診療、訪問診療をバランスよく行っている。
今月は足立インプラントセンター小林歯科医院の小林大介院長にお話を伺った。

むこうはら歯科医院 向原 正 院長

足立インプラントセンター 小林歯科医院 小林 大介 院長

プロフィール

  • 東京都 生まれ
  • 鶴見大学 卒業
  • 鶴見大学歯学部附属病院 勤務
  • 医)高輪会 勤務
  • 小林歯科医院 開設
  • 【学会 他】
  • 日本口腔インプラント学会
  • 日本顎咬合学会
  • 日本歯科審美学会
  • 日本口腔衛生学会
  • 日本レーザー歯学会
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけはどのようなものだったのですか。

父は歯科医師で、この場所で開業していました。私は父の跡を継ごうと自然に決意していたわけではありません。10代の頃は色々な葛藤がありましたね。どう やって一生を過ごしていくべきか、悩み、苦しみました。しかし、そんな中で父の働く姿を見て、まずは歯科医師になりたいと歯学部を目指しました。

学生時代に思い出に残っていることはありますか。

私は歯学部生としては変わっていたと思います。大学に入学したときに、10年後、20年後の自分のイメージを作っていました。そして、何が必要なのか、ど んなことを学べばいいのかを考えていました。そこで、歯科の世界だけではなく、違う分野の方々と積極的に交流を図りました。彼らは私よりもずっと年上でし たが、仕事に対するエネルギー、「勝負」にこだわる強い姿勢などは、当時は少し怖かったも覚えています。
でも、このときの体験が今の私の基礎になっています。 振り返ると、彼らには本当にかわいがってもらえましたし、真剣に相談に乗ってくれました。そのときの人脈には今も助けられていますし、皆さんにはたまにお会いします。会うと「小林くん、もう一人前だろ」と言われますが、本音はどうでしょうか。厳しい人たちです。

卒業後、勤務先を選ばれた理由をお聞かせください。

私は歯科の臨床研修が必修化されたときの一期生なので、自然な流れで大学病院でのローテートを選択しました。歯科医師という資格を取得したからには患者さん相手に中途半端なことはできないですし、臨床をやろうと決意しましたね。

ローテート後は大学病院を出られたのですね。

大学病院は臨床のみならず、教育や研究の場でもあります。大学病院は1日の患者さんの数が10人から15人で、オールマイティーな診療能力を身につけにくいです。学者になるために残るのは分かりますが、臨床に真剣に取り組むのであれば、ふさわしくないと判断しました。 目的もなく大学病院に残っては、時間の無駄になります。1日に20人から30人を診て、一般歯科だけではなく、自費診療も学びたかったので、高輪会の深井理事長にお世話になることにしました。深井理事長には感謝しています。五反田駅で、私が「理事長、開業をさせてください」と申し出たところ、理事長は「小林先生は多分勝つから心配いらない。私の耳に入るくらい、大きくなりなさい」と即答してくださり、感激したのを覚えています。

勤務先で学ばれたのはどんなことですか。

臨床の基礎です。高輪会独自の勉強会もあり、そこでインプラント、訪問歯科、義歯も学びました。専門医がいて、アシストについてくださるのです。学びたい気持ちがあれば、やりたいことをさせていただける医療法人でしたね。先輩の先生方が60人近くいらっしゃり、分からないことを先送りにはできないと、ここでも先生方に質問攻めをしていました。 質問することが恥ずかしいと言う先生もいますが、それでは駄目です。何事も積極的に自分から動いていかないといけません。臨床の答えを書いたノートがどんどん溜まっていきましたよ。短期間のうちに臨床能力が飛躍的に向上していくのが自分でも分かりました。職場で悩み、酸いも甘いもかみ分ける、他人の機微に触れる、それが大事なのです。

開業しようと決断されたいきさつはどんなことだったのでしょう。

色々な方々に「早く開業し、地域社会に密着しろ」と後押しされたのです。私は勉強もしてきましたので、自信もありました。丁寧に、きちんと診療できれば、やっていけると思ったのです。高輪会の深井理事長からは「君ほど向上心のある歯科医師は珍しい。間違いなく成功するだろう」と言っていただきました。

開業地はお父様が建てられた歯科医院と同じ場所ですか。

そうです。父は1955年頃にこの地で開業しました。父は開業前に東京警察病院に勤務していたことがあり、そのときのご縁でこの場所を選んだそうです。しかし、私が開業する9年前に父が亡くなり、その後はクローズしていました。建物がかなり老朽化していましたので、壊してから新築するまでに1年ぐらいかかりましたね。

開業地を改めてご覧になったときの印象はいかがでしたか。

何とかしないといけないなと思いましたね。歯科医師には修行期間が必要ですから、すぐに継承するわけにはいきません。土地を売るとか、更地にするという選択肢もあった中で、この場所を残したのですから、頑張っていこうと決意しました。

設計、レイアウトの工夫などをお聞かせください。

「新世代の歯科医院」を目指すために、白を基調にスタイリッシュな設計にしました。24時間の換気システムを取り入れ、粉塵を外に出せるようになっています。今年の8月には弟が帰ってきますので、弟の診療スペースを作る予定です。

開業にあたってはどんな苦労がありましたか。

亀有駅から徒歩8分で、競合も多く、立地としては不利なのです。開業前は自信があった反面、患者さんが来てくださるのかという心配もありましたね。でも、それは心配いりませんでした。「患者を必ず、小林歯科のファンにする」、その迫力で毎日を大切に過ごしています。朝起きると、気合が入るのです。

開業にあたってのコンセプトとはどのようなものだったのですか。

どの地域にどれかくらいの人口がいて、どのように動くかをよく分析しました。
その結果、開業へのコンセプトとして、土日祝日年中無休、夜11時までの診療、CTやレーザーなどの最新設備、24時間対応の訪問診療システム、義歯の即日修理、CTの無料化、再生療法と歯周病の科学的なメンテナンスなどを挙げました。
そして、治療回数と料金を明確にすることです。大臼歯の根管治療などはなかなか終わらず、通院期間が2カ月くらいになってしまいますので、どのような治療を行っていくか、患者さんへの説明を丁寧に行っています。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

歯科は医療行為なのです。遠回りしてでも、患者さんの利益を追求しなくてはいけません。それがやがては自分の利益に繋がると信じています。衛生費用と材料 費用は、自費と保険は区別しないようにしているつもりです。一方で、セメントやアルジネート、石膏の量などは余剰が出ないように、細かくチェックすべきで す。

診療方針

診療方針をお聞かせください。

一般の保険診療、自費診療、訪問診療をバランスよく行っています。ブリッジは大きく歯を削るのが欠点ではありますが、インプラントよりも良い場合もあります。何でも自費診療を行うのではなく、保険診療で確実に治療できるものは保険診療でいいのです。今後は高齢社会が進み、寝たきりの高齢者の方が増えると予想されますので、そういった方々に対応できるシステムを構築していきたいです。

患者さんの層はいかがですか。

子どもさんが3割、高齢の方が3割、成人の方が4割でしょうか。子どもさんと親御さんも一緒にというご家庭が多いですね。自転車でいらっしゃる方がほとんどですよ。

自費と保険の割合について、お聞かせください。

1対1ですね。義歯の患者さんが多いので、患者さんの負担を減らすためにも、今後は保険診療の方を大きくしていきたいです。

増患対策

どのような増患対策をしていらっしゃいますか。

ホームページぐらいですね。アンケートで来院動機も伺っていますが、ほぼ口コミです。口コミに繋がるためにしていることと言えば、どうして治療をきちんと やる、基礎をおろそかにしない、それが基本です。なぜ、こういう処置をするのか、これからどんなことが起こるのかなどをきちんと話していますし、削ってほ しくないなど、患者さんがされたくないことはしません。
子どもの患者さん用にはキッズルームを完備し、「ドラえもん」の映画などを流しています。
また上手にできたお子さんには、ミニ消しゴムを渡したり、歯科医院は楽しい場所なのだというイメージを持ってもらうように心がけています。

スタッフ教育

スタッフの採用について、お聞かせください。

若手歯科医師ならば、できなくて当然です(笑)。いきなりできたら、怖すぎますよ。
一生懸命に努力する、その姿勢で合格です。あとはなぜできなかったかを考えるのです。常に思考すること、それが基本です。
大学教育のように厳しく指導するのはナンセンスです。マイナスしか残りません。クリアできたことを一緒に確認しつつ、ステップアップを目指させています。
形成、充填、診断、読影など、自分が感じたものを、話して習得していってください。
成長のスピードは十人十色なのです。ゆっくりと指導することを心掛けています。
経験こそが成長への源なのです。最後は必ず私がやります。必ず教えます。そして小林歯科医院を好きになり、長く勤めてください。まずは院長に会いに来てください。

歯科衛生士、歯科助手への教育はどのようになさっていますか。

小林歯科医院に勤務する以上は認定資格を取らせ、たとえ、ここを退職しても、ほかでも重宝される育成を行います。焦らなくていいので、自分のペースで学んでください。
歯科衛生士への教育は改善項目をリストアップして、チェックしていくことが中心ですね。日頃の業務でも、できることとできないことをはっきりさせています。まずは見学しに来てください。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

小林歯科医院の品川院を開設準備中です。実現に向けて今、動いています。
そして、今年の8月に弟が帰ってきます。弟は歯周病と歯内療法を専門にし ていますので、そのぶん、私は訪問診療に力を入れるつもりです。仕事のことを考えていると、遊んでいる時間が本当に勿体なく感じます。小林歯科医院で私の 左手になりたい、そういってくださる先生方にも出会えました。誠に嬉しい限りです。
また、クリニックとしては、日本大学松戸歯学部を中心にして臨床研修指定施設を目指して、動いています。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

厳しいことは分かっておられると思いますので、覚悟しないといけません。中途半端な気持ちで診療していたら、まず、やられるでしょう。負債を抱えて、進退動けず、潰れます。
歯学部生の頃から色々な分野の人と繋がりを作っておくといいですよ。
私見ですが、歯科学生には基本的に動かない、と言いますか勇気がなく、動けない人たちが多かったような気がします。私は同期から見たら、違和感があったでしょう。
学生のとき、私が知り合った方々は今も活躍しておられるので、心強いです。彼らの仕事に対する迫力、勝負への執着心などを見ることができたのは私への仕事に対する影響として、大きかったです。

プライベート

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

今は時間がないのです。常に歯科医師、そして経営者であることを自覚して生活しています。20代までは遊ぶことや異性にも興味がありましたが、今は興味がなくなりました。
むしろそんなことはどうでもいい、一日一日を大切に使い、少しでも前進をすることだけに興味があります。
最近、学生のときの自分の想い、二つの挫折、そして父の死をよく思い出します。20代と比較すれば今の自分は少しは進歩したかなと思います。
矛盾するかもしれませんが、まずは魂込めて仕事をすること、それこそが自分への活力なのです。

【タイムスケジュール】

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  • 【足立インプラントセンター 小林歯科医院平面図】
    間取り図
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