歯科経営者に聴く - 岡田歯科医院 岡田哲也院長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

岡田歯科医院 岡田 哲也 院長

岡田歯科医院

今月は岡田歯科医院の岡田哲也院長をご紹介する。岡田歯科医院は、神戸の中心地である三宮への通勤圏内であることから1980年代に開発された、須磨区内のニュータウンに本院を構える。岡田院長は「咬合は身体の歪みを整えることから」を提唱し、「単に口腔診療をするだけではなく、身体のバランスを整えて、人を良くする診療」を心がけている。大阪市西区の分院の開院日に、お話を伺ってきた。

岡田歯科医院 岡田 哲也 院長

岡田歯科医院 岡田 哲也 院長

プロフィール

  • 1963年・兵庫県尼崎市 生まれ
  • 1988年 大阪歯科大学 卒業
  • 1988年 村井歯科医院 勤務
  • 1989年 岡田歯科医院 開設
  • 2012年 Js Okada Dental Clinic 開設
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけをお聞かせください。

私は子どもの頃から手先が器用な方でしたし、父が開業医だったので、小さい頃から父の仕事を見てきた影響からか、入れ歯や歯の模型を見ても動き出しそうで怖いとか(笑)、気持ち悪いと思うことはなく、むしろ面白そうで、楽しそうなことをしているなと感じていたことがきっかけになっています。

大学時代はどのような学生でしたか。

大学時代はラグビー部に所属し、先輩後輩との上下関係、助け合いや競争を学びました。そこには小さな社会がありましたね。チーム、組織での個々の役割や、責任、影響力など、現在の医療人としての基礎はこのころに培われたのだと思います。しかし、私は子供のころから人と同じことをするのが好きではなかったので、協調性がなかったんです(笑)。反面、独創性が強かったため、大学で教えられたひとつひとつのマニュアルを忠実にやるのではなく、常に全体の「流れ」を考えながら自分で工夫して、どうすれば上手く技術を活かせるのか、どうすればより効率良くできるのかということをいつも考えていました。

勤務先を選ばれた理由はどんなことだったのでしょうか。

いち早く臨床の現場で活動するために、開業を早くするか、あるいは海外に行って学ぶかという選択肢が私の中にありました。どちらの道に行くのか悩みましたが、少しでも早く開業する道を選択したことが勤務先を選んだ理由の一つです。もう一つは早く患者さんを診て、早く開業するための勉強ができそうだという理由で、当時の歯科医師会会長の歯科医院を勤務先に選びました。
しかし、中に入ってみると思っていたのとはまるで違っていて、現実は厳しいものでした。最初の1年間は見学ばかりでした。その間、給料はゼロです。昼食代として月1万5千円の支給だけでした。当時結婚間近だったので、マンションを探しに行った時にアンケートの年収欄に18万円と書いたのですが、「いえ、年収をお書きください。」と言われたことを覚えています。
見学していた1年間は、先輩歯科医師のやり方を見て、見習うべきこと、してはいけないことなどを自分なりに判断し、冷静に見ていました。基本的な治療を大切にする歯科医院でしたが、院長が歯科医師会会長ということもあり、医療機器メーカーからモニターがわりに新しい機器がどんどん持ち込まれる環境でした。しかし、新しい機器の多くは数ヵ月後には、診療室の隅で埃をかぶっていました(笑)。結局はベーシックな治療が一番大切なんだなと感じていました。今から考えると、この最初の1年間で患者さんを早く診たいという気持ちがとても募っていましたので、院長から患者さんを診てもいいと言われたときから半年間はとにかくがむしゃらに患者さんを診て、経験を積むことに繋がったと思います。

開業しようと決断されたいきさつをお聞かせください。

勤務医生活1年半で夜間のみ開業しましたが、当時、そんな短期間で開業する人はいませんでした。これも人と同じことをしたくない性格の表れかもしれません(笑)。父の歯科医院を継承するという選択肢もありましたが、診療のやり方が私のスタイルとは違い過ぎていたこともあって、父とは別に開業しようと決めました。

開業の場所はどのようにして選ばれたのですか。

岡田歯科医院 当時、神戸市の医療機関指定区域としての募集があり、今の本院がある神戸市須磨区で開業しました。元々の実家は尼崎でしたが、両親が今の本院に住まいを移し、その1階で開業したのです。開業資金として2500万円を金融機関から借り入れしました。
開業当時は今から24、5年前のニュータウンでしたので、開発が進み、人口は増える一方でしたね。最初は18時から夜だけの診療でしたが、多くの患者さんに来ていただけて、経営はそれなりにうまくいっていました。

分院も展開されましたね。

岡田歯科医院 ニュータウンの開発から既に25年が経った現在は高齢化が進み、人口が減少し、患者さんの数も減ってきました。そこで、出せる力があるうちに行動しようと思ったことが分院を展開した理由です。また「体全体にアプローチする歯科医療」を広めるためにも、都心での活動が必要では?と感じていたのも大きな理由です。
もう一つは、私は自分の歯科医師人生を25歳から75歳までと考えているのですが、ちょうど半分の節目にあたる25年ということもあって、大阪市西区にJs Okada Dental Clinicを展開しました。分院では患者さんの歯を診るというよりは人を診るというコンセプトで、リラクゼーションのためのチェアも1台、導入しています。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

歯だけを診るというより、「人を診て、人を良くする」ことが私の理念です。このことはスタッフにも浸透させています。

診療方針

どのような診療方針をお持ちですか。

岡田歯科医院 ストレスは一瞬で心と体のバランスを崩してしまいます。当然、噛み合わせも悪くなり、その結果痛みなどの症状がでます。そこで身体の根本を整えてから、歯の治療を施していこうという考えです。根本を整えずにいきなり口腔治療を始めるから、やらなくてもいい治療まで行うようになるのです。身体の歪みを整えることを一度、体感してもらうとすぐに理解してもらえると思います。患者さんに必ず行うことは体の歪みを体感していただき、その場でその歪みを調整します。こんな感じです・・・「両方のこぶしを握って、左右の肘を張って、拳と拳を合わせてもらえますか。片方ずつ腕を上から下に抑えますから、踏ん張ってくださいね」と言って、左右を押さえて比べてみます。このときほとんどの人たちに左右の筋力の差があります。利き腕だから、とか関係なく、です。不思議なことに、筋肉が張っていたり凝っていたり、痛みなどの症状のある側の腕には力が入り、逆に特に何も感じていない側の腕には力が入らず、いとも簡単に腕を下に抑えられます。これは症状のある側が頑張っていて、逆側がさぼっているのが原因なのです。ほとんどの人が頑張っている側の肩を揉んだり、回したりしますが、実は逆の半身はさぼっているのですね。それを解消するには首や腕、足首、股関節、膝などの関節を回すことです。しかし、単に関節を回すだけでは駄目です。大切なのは意識することなのです。意識をすることではじめて、さぼっている側が目覚め、活動を始めることでバランスが取れるわけです。簡単に言いますと、凝っていない側、すなわちさぼっている側の半身を意識して目覚めさせることで、頑張り過ぎていた側の半身がリラックスできるのです。これを噛み合わせに活用すると、歯を削らなくても噛み合わせを安定させることができます。まずはそのような体の変化を体感してもらいます。

体感すると、どうなるのですか。

岡田歯科医院 みなさんビックリします(笑)。すっきりして、目の前が明るく、視野が広くなる感覚があります。そして何より体がラクになります。左右の力の入り具合や、足、腕のバランスが取れることで、余分な力が抜けて、噛み合わせまでが良くなるわけです。そのうえでまだ異常があれば、そこからが本来医療の力が発揮されるところなのです。こうしてバランスを整えてから治療を行えば、本当に必要な治療のみで済みます。この方法を身につけるまで、今までの経験はもちろんですが、書物で調べたり、学びに行ったりもしました。中には宗教っぽいものもありましたよ(笑)。いろいろなことを参考に、と言いたいのですが、ほとんどが反面教師的なものばかり。結局は自分自身で構築していきました。このことをより多くの人に伝えて、多くの人を良くしたいと思っています。実際に今まで治らずに悩んでいたことが解消されたという症例も多く出ています。このことを書いた本を2冊出版していますから、一度アマゾンの書き込みをご覧いただければ幸いです。

増患対策

増患対策について、お聞かせください。

岡田歯科医院 歯科業界でよく言われている増患対策には違和感があります。それは病気の患者さんを増やしていくことに繋がりかねません。患者さん自身が求めて、自然と足を運んでいただけるようになれば最高です。患者さんが治っていくこと、治った患者さんが口コミで次の困っている人に伝えてくれて、その人が足を運んでくれるようになることが本当の増患対策ではないでしょうか。

スタッフ教育

どのようなスタッフ教育をなさっていますか。

スタッフ教育はマニュアル化しないことです。ひとりひとりに適した対応をするように、言い聞かせています。そして、患者さんの歯だけを良くするのではなく、身体と心のバランスを含めた人として良くすることを心がけるように伝えています。今まで話してきたことをスタッフにも話すことで、患者さんに「先生がこう言っております」と話すだけではなく、自分で理解して、自分の言葉で説明や話ができるようにと教育しています。

今後の展開

今後の展開をお聞かせください。

今後は月に1回、待合室で患者さんを集めて、セミナーを開くなど、啓蒙活動もしていく考えです。この考え方がどれだけ受け入れられるかは未知数ですが、歯科医療のみならず、医療全体に広がっていけば、最小限の治療しか必要なくなり、医療費の抑制にも繋がるのではないでしょうか。
大阪市西区の分院はオフィス街にありますから、身体のバランスが崩れているのに、日頃から重い鞄を持って頑張って仕事をしている会社員の方にも伝えてあげたいし、自分の身体に鞭打って頑張っている方の身体からの悲鳴を聞いてあげて、症状が出たときには足首、膝、関節を朝と晩に5分間、回してあげることも指導していきたいと思っています。ただ、こればかりやっていたら経営が成り立たないので、バランスが難しいのが現実です(笑)。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

岡田歯科医院 若い先生方にはなかなか理解してもらいにくいのですが、虫歯の治療が終了したにもかかわらず、この患者さんはなぜ歯が痛いと言うのか、デンチャーを入れた患者さんが昨日はすごくいいと言っていたのに、今日になったら痛いというのはどこに原因があるのだろうかと、常に自問自答してもらいたいと思います。私が唱える話は歯科医師として一通りの経験をしてきて初めて気がつくところです。現在は情報が氾濫しているために、CTを入れるとか、インプラントやデンチャーなどの自費に目が行きがちですが、若い先生方には人を良くできる歯科医師になってもらいたいですね。

プライベート

プライベートの過ごし方などをお聞かせください。

ここ何年間の休日は本の原稿を書いていたり、東京でセミナー開催をしてきました。これは仕事というよりは趣味の領域ですが、プライベートな時間も人を良くするために費やしています。今、お話ししてきたことを医療人として心の底から広めていきたいと思っています。

【タイムスケジュール】

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