歯科経営者に聴く - 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック 長谷川亮理事長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック 長谷川 亮 理事長

医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック

東京都八王子市は人口58万人のうち約11万人が学生であるという、全国でも有数の学園都市として知られているが、多摩ニュータウンの一角を占める街でもある。
今回、ご紹介する京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニックは多摩ニュータウンの玄関口の一つである、京王相模原線の京王堀之内駅から徒歩1分の場所に位置する。フォーユーデンタルクリニックが入居する京王堀之内クリニックモールは各テナントに共通する受付や診察券のシステムを構築した、全国でも珍しいクリニックモールとなっている。
今月はフォーユーデンタルクリニックを率いる歯愛会の長谷川亮理事長にお話を伺った。

医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック 染川 慎吾 院長

医療法人社団歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック 長谷川 亮 理事長

プロフィール

  • 1968年 東京都生まれ
  • 1995年 鶴見大学 卒業
  • 1995年 東京医科歯科大学歯学部附属病院 勤務
  • 1998年 杏林大学医学部付属病院 勤務
  • 1999年 あきら歯科医院 開設
  • 2009年 マーレあきら歯科クリニック 開設
  • 2011年 フォーユーデンタルクリニック 開設

【開業に至るまで】

■歯科医師を目指されたきっかけをお聞かせください。

父は耳鼻咽喉科の医師で、睡眠時無呼吸症候群の第一人者であり、東京医科歯科大学や杏林大学に勤め、最終的には東京医科歯科大学の教授になりました。父としては私を医師にしたかったみたいなのですが、私は手先が器用だったこともあり、早くから歯科医師を目指していました。私は子どもの頃、歯が悪く、入れ歯をしていた時期もあったのです。それで、東京医科歯科大学の歯科医師に治していただいたこともきっかけとしては大きかったですね。歯科は怖いところだという思いがその先生のお蔭で消えていきました。歯科は内科領域も外科領域も診られることが魅力ですし、医科と違って、開業までの時間が短いことも、自分で組織を動かしていきたいという独立心旺盛だった私が惹かれた点でした。幼い頃の入れ歯の辛い体験は後にインプラントを学ぶことに繋がっていきましたね。

■大学時代のエピソードをお願いします。

長期の休みには様々なアルバイトに精を出していました。飲食店ではバーテンもしましたし、コンビニエンスストアの店員、塾講師、家庭教師、ワイパー工場の従業員、警備員、土建業まで、幅広かったです。夏休みには鴨川や下田の民宿で、ふとんの上げ下ろしなどのアルバイトをしたこともあります。色々な人と知り合いになりましたし、空いた時間にはサーフィンをしたりして、楽しかったですね。 ただ、日頃は大学が優先でした。大学の帰りや週末に塾の講師をするぐらいでしたね。ヨットの同好会にも入っていたのですが、学業優先のため、2年生のときに辞めてしまいました。

■勤務先に東京医科歯科大学歯学部附属病院を選ばれた理由をお聞かせください。

父が医科歯科にいたこともあり、以前から馴染みがあった病院ではありますが、一番の理由は高齢者歯科を学び、義歯の専門知識を身につけたかったからです。大学病院と並行して、田無の渡辺歯科医院や久喜のよしば歯科医院でアルバイトをさせていただいていました。この2つの医院での経験は私のキャリアを作ってくれたと感謝しています。渡辺歯科医院では宮沢正純先生との出会いがありました。宮沢先生が杏林大学の教授になられたので、私も杏林へと移り、顎関節症の研究を行って、インプラントも学びました。宮沢先生にはずっと教わっていましたね。
一方で、母校の鶴見大学の解剖学教室の研究生になるなど、常に勉強していました。学生のときから常に動き回っていたので、歯科医師になってからもそういう姿勢で頑張っていました。

■あきら歯科医院を開業しようと決断されたいきさつはどんなことだったのでしょうか。

もともと独立心が強く、自分でやりたいという強いビジョンを持っていました。勤めていると自分のカラーが出せませんから、なるべく早く開業しようと考えていたのですね。私は誰かに言われて学ぶのではなく、自分で考えて実践していきたいタイプなのです。しかも、一番でないと嫌なのですよ(笑)。ほかの人が遊んでいる日曜日でも、私はずっと勉強してきましたし、アルバイトをしてお金も貯めてきました。

■開業地の第一印象はいかがでしたか。

東京都府中市は大國魂神社で有名で、緑が多くて、人が温かい街なのです。昔の風情が残っていて、住民同士の触れ合いも密接ですね。何よりも市の福祉政策が充実していることに惹かれました。

■どういう理念のもとで開業されたのですか。

医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニックあきら歯科医院の開業にあたっては歯の健康を通じて幸せになっていただくことが理念でした。歯だけでなく、患者さんのコンプレックス全般にアプローチして、患者さんに明るい人生を送っていただきたかったのです。悩みを解消できたあとの患者さんを見たいと考えていました。

■そして、2011年にフォーユーデンタルクリニックを開業されましたが、こちらの開業にあたってのコンセプトなどをお聞かせください。

八王子市に医療モールができると聞き、そのオーナーの考えに共鳴したのです。父の影響があったのかもしれませんが、私は以前から医科と歯科の分業はおかしいと思っていました。歯科学生も大学で6年間もの期間、歯科および医学を学ぶのに、ほとんどの歯科医師が特に開業後は医科と離れ、歯科の範囲だけで考えようとします。
医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック医療モールであっても、クリニックの単なる集合体であるところが多いですよね。しかし、この京王堀之内クリニックモールは待合室はそれぞれのクリニックにありますが、受付は一つで、診察券も一枚しかないのです。そのため、歯科だけの観点ではなく、ほかのクリニックの医師との交流を持てることが魅力でした。通常は医科の先生方とは紹介状や手紙のやりとりで終わることがほとんどですが、この医療モールでは直接、話ができるのです。医科歯科で学んだことは医科と歯科をボーダーレスに繋ぐ視点でしたし、患者さんにとってもワンストップで、オールインワンの治療の方が利益があります。

■ほかに、どういうクリニックが入居しているのですか。

私どものほかは内科・循環器内科、小児科・小児外科、耳鼻咽喉科、調剤薬局です。また、保育所や病児保育所も入居しています。ほかのクリニックの先生方とも交流が盛んですよ。

■立地に関しては、いかがですか。

「京王電鉄相模原線の堀之内駅から徒歩1分の場所にあります。ビルではありますが、12台分の無料駐車場スペースを確保できました。堀之内は多摩ニュータウンの一角で、最近はマンションが続々と建設され、人口の増加も見込めるエリアです。

■設計にはどのようなこだわりがありますか。

医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック京王堀之内クリニックモールの総合受付を経て、私どもへの入口となります。入口や待合室はリラックスしていただくために、ゆったりとした設計になっています。
また、患者さんとのコミュニケーションを重視していますので、カウンセリングルームを完備しました。

【経営理念】

■経営理念をお聞かせください。

「歯の健康を通じて皆様の幸せに貢献したい」というのがコンセプトです。さらに、「最新の医療を提供できるよう、私たちは努力します」、「患者様の満足度向上を最優先とします」、「患者様が笑顔で『来てよかった』と感じられるよう、努力します」、「いつも笑顔で患者様を『おもてなし』できるよう、努めます」ということですね。
医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック 経営に関して言えば、院長は黒衣に徹するべきだという考えを持っています。院長がクリニックの中心で、その周囲にスタッフがいる状態よりも、院長が一番、頑張るのは当然のこととして、歯科衛生士も歯科助手も院長の手足ではなく、円の中心に患者さんがいる状態を作るようにしています。患者さんの周囲にいるのがスタッフであり、彼らが自分の役割を認識し、いきいきと働けるように、私は三次元的に上から見ています。これを私どもでは「チームアプローチ」と呼んでいます。スタッフ全員が同じ志を持ち、それぞれが責任を持って一緒に仕事する、そんなクリニックにしたいのです。

【診療方針】

■診療方針をお願いします。

医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック私たちにとってベストな治療と患者さんにとってベストな治療は違いますので、患者さんとは初診以外にも頻繁にカウンセリングを行い、情報提供に努めています。歯が痛いのか、入れ歯が合わないのか、入れ歯を綺麗にしたいのかなど、患者さんが何を望んでいるのかを把握しないといけません。コンプレックスがあると、なかなか口に出せないものですが、医療者と患者さんは常に対等だという基本に立ち返り、「上から目線」ではなく、「必要ですから教えてください」というスタンスでカウンセリングを行います。そのうえで、インプラントであったり、入れ歯であったり、チームとして何ができるのかを大事にしています。怖がる患者さんに無理にインプラントをするのは間違っていますし、個別で、最良の対応を心がけています。

■病診連携について、教えてください。

府中恵仁会病院、東京都立多摩総合医療センター、多摩南部地域病院などが中心です。特に、府中恵仁会病院は地域連携室としっかりした連携を持っており、退院患者さんが在宅医療に変わるときなどにご紹介いただいています。歯科医師は歯科医師とだけ交流することが多いですが、私は病院関係者との交流が多く、忘年会などにも出席させていただいていますし、採血の会社の方に検査について質問したり、多彩な分野の方々への人脈を構築しています。その結果、私どもが患者さんに提供できる医療も多彩になるはずだと確信しています。

【増患対策】

■どういう増患対策をしていらっしゃいますか。

看板も出していないですし、ホームページが来院のきっかけとなっている患者さんは2割程度でしかなく、残りの8割は口コミや紹介です。クリニックモール内のほかのクリニックからのご紹介も多いですね。
通りがかりにいらっしゃる患者さんもいます。口コミの患者さんを増やすためには患者さんに対してベストの診療をすることに尽きます。歯科医師の自己満足ではなく、患者さんが本当に満足されているのか、アンケート調査で実際のお声を伺っています。患者さんが本当に満足してくださったら、紹介に繋がるのだという方向性を大事にしています。

【スタッフ教育】

■スタッフ教育について、教えてください。

スタッフとは折にふれて個人面談を行い、レベルを知るだけではなく、将来、どうしたいのか、どんな60歳、70歳になっていたいのか、どういう歯科医師でどういう生活をしていきたいのかなどを尋ねています。医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック最初はなかなかうまく答えられず、「普通の生活でいいです」としか返ってきません。そこで、私は「普通って、どんな生活か」など、掘り下げていきます。そうすると、スタッフが何を望んでいるのか理解できていきます。私どもにはマイクロスコープや手術室などが揃っているので、教育環境は充実しています。そのうえで、治療のみならず、魚の釣り方的な考え方を教えるようにしています。そうすると、スタッフの伸びが違いますね。
初心者に関してはすぐに治療を行うことは無理ですので、マンツーマンで教え、模型実習なども行っています。かつては金曜日に大学に連れていって、1年ぐらい解剖学を学んでもらったこともありました。それぞれの出身大学に戻って勉強する機会を与えるなど、自ら学ぶ方法を教えます。私どもから巣立っていったあとも自分で動いていける歯科医師を育てることが目標です。

■歯科衛生士教育については、いかがでしょうか。

歯科衛生士と歯科医師は対等です。歯科衛生士は歯科医師の手足ではなく、重要なパートナーなのです。したがって、歯科医師と同じレベルの知識が必要ですし、一緒に成長していかなくてはいけません。そこで、週に1回のミーティングで情報の共有に努めています。
誕生会の前ですとか、ミーティングは頻繁に行っていますね。少しでも時間があったらミーティングです(笑)。レベルを把握したうえで、個別面談を行い、そのスタッフにふさわしい講習会を勧めたりもします。
私どもの教育では下に合わせず、上を伸ばすことが特徴です。上のレベルにあるスタッフがつまらなくなって辞めてしまうことがないように、下のレベルのスタッフは個別に教育してレベルアップさせています。

【今後の展開】

■今後の展開について、お聞かせください。

医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック 44歳になり、70歳になるまで30年を切ってしまいました。治療技術の向上はもちろんですが、経営で苦しんでいる歯科医師を助け、歯科業界全体に漂っている閉塞感を打破していきたいです。開業にあたり、競合を恐れる人は多いですが、勝ち残れる歯科医院はあります。大学で6年間の勉強をしたうえで、患者さんとどのように接していくかを考えていかなくてはいけません。歯科業界はコミュニティが小さく、新人は一つの歯科医院で修業しただけで開業するわけですから、修業先としての責任があります。私どもで修業させたからには絶対に成功させないといけません。患者さんの取り合いではなく、共存共栄を図っていきたいですね。それは結局、患者さんの利益になり、社会に還元できるということではないでしょうか。
今、2、3人の若手が勤務していますが、まだ教えたいことがあります。教育こそ、私を教えてくださった先生方への恩返しだと思っています。若手歯科医師の頭の中の8割を歯科医療のことにさせて、考え方一つで成功するのだということを教えていきたいですね。その意味で、分院の展開を考えています。候補地は現在、選定中です。多摩地区でもいいですし、離れているところでもいいです。お金がなくても、私どもの法人内で開業できるような開業支援も視野に入れています。

【開業に向けてのアドバイス】

■開業に向けてのアドバイスをお聞かせください。

医療法人社団 歯愛会 京王堀之内クリニックモール歯科フォーユーデンタルクリニック「開業したい」という気持ちを持たなくてはいけません。抜歯ができるようになったから、インプラントができるようになったからなどというのは開業の理由としては弱いですね。患者さんへの思いが大切なのです。何かができるのは当たり前のことであって、できないのであれば開業する資格はありません。将来、何がしたいのかというライフプランの中で、今の時点での10年後、20年後をイメージしましょう。
開業に向いている人は独立心が強く、わき目もふらずに没頭できる人です。寝食を忘れても12時間連続で仕事ができる人、歯科の仕事が本当に好きで、ライフワークにしている人も向いています。逆に、勤務医に向いている人もいます。リスクを取りたくない人、自ら発想するよりも、言われたことを確実に行える人ですね(笑)。

【プライベート】

■プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

金曜日の午前中はテニスのスクールに通い、80分間のクラスを受講しています。日曜日にはスクールの仲間とプレーすることもあります。金曜日の午後は大学に研究に行っています。子どもが小学生になって、ピアノや英語のほか、長男は格闘技、長女はバレエを習っており、放っておかれることも多くなりました(笑)。そういうときは私も勉強会や講習会に積極的に出かけています。

【タイムスケジュール】

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