歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

大山歯科医院 大山 和次 理事長

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院

千葉県鎌ケ谷市は東武野田線、新京成電鉄新京成線、北総鉄道北総線が走り、市の中心部にある新鎌ヶ谷駅で3線が交差している。都心方面へ直通運転を行っているため、日本橋まで30分で結ぶ。2010年には都心と成田空港を結ぶ成田スカイアクセスが開業し、新鎌ヶ谷駅にはアクセス特急が停車するなど、交通の便の良い街である。
医療法人社団和晃会は鎌ヶ谷市内の大山歯科医院を中心に、千葉県に本院を含む6医院、茨城県に3医院、東京都に1医院を有するデンタルネットワークグループである。患者さんの満足を徹底的に追求する医療態勢を目指し、拡大を続けてきた。今月は和晃会の大山和次理事長にお話を伺った。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院  大山 和次 理事長

大山歯科医院 大山 和次 理事長

プロフィール

  • 1955年 茨城県 生まれ
  • 1980年 日本大学松戸歯学部 卒業
  • 1980年 埼玉県草加市の歯科医院 勤務
  • 1981年 大山歯科医院 開設
  • 1984年 松飛台歯科医院 開設
  • 1994年 ゆみ~る歯科 開設
  • 1995年 医療法人社団 和晃会 設立
  • 1999年 ボックスヒル歯科医院 開設
  • 1999年 さくら歯科医院 開設
  • 2002年 クローバー歯科医院 開設
  • 2004年 松戸ボックスヒル歯科 開設
  • 2005年 キュート歯科クリニック 開設
  • 2008年 クリーン歯科 開設
  • 2008年 TX歯科 開設

【学会 他】

  • 日本口腔診断学会、国際歯周内科学研究会
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【開業に至るまで】

■歯科医師を目指されたきっかけをお聞かせください。

実家は茨城県東茨城郡大洗町で漬物店を経営していますので、両親は医療関係者ではないのですが、伯父が福島県で歯科医師会長を務めていたのです。伯父は50年前に、歯科医師を10人ほど雇う大規模歯科医院を経営しており、その伯父に刺激を受けましたね。高校の頃に歯学部を受けようと決心しました。小さい頃は政治家や俳優に憧れていましたよ(笑)。

■大学時代のエピソードをご紹介くださいますか。

バスケットボールに打ち込んでいました。楽しかったですね。何より、バスケットボールの楽しさを練習の中だけでなく、プライベートでも教わり、大学での6年間は今の自分にとっての財産です。日本大学の松戸歯学部は「松戸体育学部」と揶揄されるぐらいスポーツが盛んだったのです(笑)。スポーツがうまくないと駄目だという風潮が学内にありましたね。スポーツが得意な人は開業後も活躍している人が多い印象もあります。先輩、後輩とは今も交流がありますが、上下関係は厳しいですよ。先日、30年ぶりにある先輩とお会いしたのですが、この年になっても、背筋が伸びる思いをしました(笑)。私どもには40人の歯科医師が在籍していますが、運動部出身の先生は少なくありません。もちろん、勉強をずっと頑張ってきた先生も多く、それぞれの特性を尊重しながら、良い人間関係を築いています。

■勤務先を選ばれた理由はどんなことだったのでしょう。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院埼玉県草加市の歯科医院にお世話になりました。当時は5月に国家試験の合格発表があったので、6月に入職し、翌年の4月に開業しましたので、実質10カ月の勤務でした。私は複数の歯科医院を経営していきたいと当時から考えていたので、複数の歯科医院を経営されていたところを選びました。
「歯科経営者に聴く」のバックナンバーで、山口県でゆめシティオレンジ歯科を経営している八丁裕次先生の記事を読みましたが、八丁先生は私どもに勤務していた先生です。私どもではショッピングモールにいくつかの分院がありますが、八丁先生も私どもでの経験からショッピングモールでの開業に踏み切れたのではないでしょうか。
勤務先の歯科医院のスタイルはその後の開業に大きな影響を与えると思います。

■開業しようと決断されたいきさつはどういったことだったのでしょうか。

今は臨床研修制度がありますので、卒後2年目での開業は考えられませんが、当時としても早い方でしたね。開業地は新京成電鉄のくぬぎ山駅前です。今なら躊躇してしまう立地ですが、保証金がリーズナブルだったこともあって、開業に踏み切りました。

■順調に滑り出したのですか。

開業した頃の来院患者数は1日に40人から50人でしたので、まずまずでしたね。しかし、次の年に分院を出したら、70人から80人の患者さんがいらっしゃいました。それで、積極的に分院を展開し、3年で5つぐらいに増やしたのです。しかし、私もまだ20代で若すぎたのですね。一旦、縮小することにして、2つに減らしました。
その頃、松戸市の青年会議所に入所し、活動に没頭することになりました。異業種交流を活発に行って、よく飲みにも行きました(笑)。そこで、経営者としての心構えや経営手法といったものを学ばせていただきましたね。1994年に関東地区の監事を最後に卒業しましたが、青年会議所での繋がりは今も大事にしています。

■2011年12月に、本院を現在地に移転なさったのですね。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院 くぬぎ山駅から徒歩4分の場所に移転しました。以前は建物の2階だったので、高齢の患者さんに不自由をおかけしていました。1人乗りの昇降機も導入していたのですが、それでも大変だったようです。車で入りにくいという問題もありました。あるとき、分院の松飛台歯科医院に行ったとき、本院の患者さんがいらしていて、「本院に行かなくなって、すみません。ここも先生のところだと聞いたものですから」と謝られるのです。松飛台歯科医院は1階に開業していますので、高齢の患者さんのためには本院も1階での開業をしなければいけないと考えるようになりました。
そこで、土地を探し始めましたが、3年ぐらいかかりましたね。お蔭様で、医療施設であれば建設できるという調整地が見つかり、駐車スペースを確保した300坪の土地を借用できました。ただ、駐車スペースの半分はスタッフの車などを停めていますので、患者さん用は8台分ぐらいです。

■ゆとりのある建物ですね。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院 建坪は100坪で、チェアは5台ですので、かなりゆとりがありますね。会議室や事務部門のための部屋、倉庫も設置しています。高齢の患者さんに配慮して、全てバリアフリーにしています。CTやマイクロスコープなど、最新の機器も揃えました。

【経営理念】

■経営理念をお聞かせください。

患者さんの満足を徹底的に追求する医療態勢を築くことです。患者さんと私どもを結ぶものは信頼にほかなりません。最高水準の医療技術、医療施設をもって患者さんをお迎えし、患者さんと一体となったキュアとケアをしていく考え方こそが両者を結ぶ信頼になると確信しています。そして、信頼の輪を広げることによって、歯科医療を通じた、明るい豊かな社会づくりの一翼を担いたいと願っています。
また、従業員が物心両面で満足するような職場環境を整備することも心がけています。私どもは一つの学校です。私どもで一緒に診療し、多くの経験を共有した歯科医師が開業して成功しているのを見るのは私の喜びでもあります。九州や山口からも「勉強したい」という先生方が集まってきてくれますし、開業後も連絡があると嬉しいものです。開業場所の相談にも乗りますし、材料メーカーを紹介したり、開業地が近くであれば見学に行き、アドバイスを送っていますよ。私自身、20近くの歯科医院を開業させてきましたから、普通のコンサルタントより熟知していますし、無料ですので喜ばれています(笑)。

■最近はどのぐらいのキャリアで開業される先生方が多いですか。

40歳前後が境目のようですね。私どものシステムとしては卒後4、5年で副院長、6、7年で院長、10年で開業というようなサイクルだったのですが、金融機関の貸し渋りなどがあり、しばらく固定した状態でした。彼らは開業しないのかなと思っていたので、新規の募集もしていなかったのです。しかし、最近は金融機関の融資も容易になってきたので、開業も増えているところです。

【診療方針】

■診療方針をお聞かせください。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院 一番は患者満足を掲げており、CSには力を入れています。外部の講師をお招きし、ビデオ撮影をして、フィードバックを行っています。カメラを受付に設置しているのはモンスターペーシェント対策でもあります。
接客業ですし、患者さんが満足しているかどうかが大切です。歯科医師をはじめ、従業員には医療はサービス業だと言い続けています。患者さんが期待している以上にこちらが先取りして与えていこうと伝えています。

■インプラントなど、自費診療についてはいかがですか。

私が開業した頃、インプラントはまだなく、その後、登場してからは私も必死になって勉強してきました。しかし、全体としては多くはないですね。インプラント、矯正歯科合わせて2割といったところでしょうか。保険診療が8割程度です。私どもの立地の基準は「郊外の便利なところ」ですので、妥当なラインでしょう。来院患者数は多い歯科医院で1日120人ぐらいです。

■どういう増患対策をしていらっしゃいますか。

和晃会全体で患者さんにアンケートを実施しています。患者さんの本音をより深く知るために、その場での回収ではなく、郵送で収集しており、私は全てに目を通しています。来院動機を見ますと、以前は電話帳の広告でしたが、最近はホームページが多いですね。したがって、ホームページの充実に努めているところです。
ただ、来院動機には地域差がありますので、地域の特性に合わせていくことが肝要です。この頃は本院でもホームページからの来院が増えましたが、依然として口コミも少なくありません。しかし、つくば市や松戸市の駅ビルの分院ではほとんどがホームページからですので、ネット予約のシステムを完備しています。

【スタッフ教育】

■スタッフ教育について、お聞かせください。

患者さんにお願いするアンケート用紙には各歯科医院の歯科医師、歯科衛生士、利便性、待ち時間などの項目があり、その項目ごとに本部で集計、比較し、患者さんの意見をフィードバックしたり、職員に徹底的に指導しています。

■歯科医師への教育で気を付けていらっしゃるのはどんなことですか。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院 年に2回の講演会では変わることはできないので、普段、話す中で指導するようにしています。いわゆる「飲みニケーション」もしますね。患者さんの「痛くしないでほしい」、「優しくしてほしい」といった様々なニーズを察知し、患者さんの気持ちの理解に努めてほしいと願っています。察知は難しいのですが、これまで受けてきた教育や生活してきた環境の中で感じてきたことがベースになります。経験しないと、分からないことも多いです。私も何度もマニュアルを作ろうと思っては挫折してきたのですよ(笑)。マニュアル化や一般化できないことが医療の仕事の難しさですね。

■歯科衛生士への教育はいかがですか。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院 私どもには歯科衛生士は30人ほど在籍し、CSトレーニングのほか、技術的なトレーニングを年に2回、行っています。理想は毎月、行うことで、そのためにミーティングルームも作ったのです。技術指導は外部講師をお招きしたり、私どものベテラン歯科衛生士が担当したりしています。

■受付スタッフへの教育はどのようになさっていますか。

医療法人社団 和晃会 大山歯科医院 歯科医師、歯科衛生士との合同のCSトレーニングのほかはチーフミーティングで問題点を出し、解決するようにしています。私どもの受付スタッフは学歴不問です。前職がサービス業だった人はともかく、過去は関係ないですね。どれだけ意欲的かどうかを面接で見ています。

【今後の展開】

■今後の展開について、お聞かせください。

開業して30年が経ち、私も56歳になりましたので、世代交代を考えています。若い歯科医師に権限を委譲し、彼らが核となった組織を作って、変化を図りたいですね。経営面も経営幹部が4人いますので、誰かがやっていけるようにしていきます。
私どもは卒業していく歯科医師と残ってくれる歯科医師の二本柱で構成されています。残る先生方の中に今後の中心となる先生がいるかもしれませんので、残っていただけるためのシステムを整えています。

【開業に向けてのアドバイス】

■開業に向けてのアドバイスをお願いします。

私どもで学べば、成功間違いなしですよ(笑)。これまで私どもを巣立っていった何十人もの先生方が成功していますからね。開業は「天地人」が大切です。天は時期、地は場所、人はパートナーや従業員です。「人」に関しては本当に難しいので、勤務医をしている間に経験を積みましょう。分院長を経験すれば、人間関係の問題が出てきます。従業員の意見をしっかり聞いて、解決に導くという繰り返しは良いトレーニングになりますよ。こういうことは本には書いてありませんし、書いてあったとしても、読んだからといって解決に結び付くわけではありません。材料コストの削減など、本部からの指示を聞いていれば、開業後もコストを把握できていますから、うまくいきますし、私どもは将来、開業医としての実践を行うための道場なのです。

【プライベート】

ゴルフや読書が趣味です。好きな本のジャンルは以前は経営に関するものも読んでいましたが、今は歴史物ですね。最近、読んで面白かったのは加藤廣さんの『信長の棺』です。でも、一番、面白いのは仕事ですよ。歯科医師になった頃は本を読んだり、先輩の話を聞いたりしながら、仕事を好きになるのだと思い込むようにしていましたが、そのうちに本当に好きになりました。しかしながら当時は「仕事が好き」と言うのが恥ずかしかったところがありました。最近は平気ですね。診療をしている時間は本当に楽しいですし、幸せに感じています。

【タイムスケジュール】

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